IaaSの概要や企業向けIaaSに求められる6つの要件、無料試用版のある「Windows Azure仮想マシン」の環境を構築する手順、PowerShellを使った日本語化、RDBについて解説する。
クラウドコンピューティング自体は、2013年度現在、市場規模も1000億円超えの予想となっており、企業での利用も加速している(参考:ITR Market View:クラウド・コンピューティング市場2013)。
本特集では、現在検討中もしくは、まだ十二分に活用できていないという企業向けユーザーのために「無料で始める企業向けIaaSクラウド入門」と題して、「Windows Azure」のIaaS機能を例に解説していく。エンタープライズ視点で「自動化」「管理」に重きを置いて紹介していきたい。
IaaS(Infrastructure as a Service)とは、情報システムの稼働に必要なサーバー、ストレージ、回線などの基盤(インフラ)を、インターネット経由で利用可能にしたものである。
IaaS事業者側は仮想化されたサーバーやストレージを提供し、IaaSを利用する顧客はIaaS環境上に必要なOSやミドルウェアなどを自前インストールするか、既にあるサーバーイメージの中から選択して利用し、その上にアプリケーションを構築する。
PaaS(Platform as a Service)やSaaS(Software as a Service)がアプリケーション実行環境やソフトウェア環境であるのに対し、IaaSとは、サーバーやネットワークなどの層からコントロール可能な環境である。
企業は、こうしたインフラを全て自前で用意する場合に比べ、システムの利用規模などに応じて、柔軟に処理性能を向上させることができ、必要なリソースを追加することも可能になった。また、ハードウェアのメンテナンスや障害対応なども全て任せることができる。課金も利用実績に応じて行われるため、柔軟な使い方が可能だ。
企業向けのクラウドで求められる、主だった要件を紹介するとともに、2014年前半に日本リージョン稼働が予定されている「Windows Azure」での対応具合を紹介する。
企業内では、さまざまなOSとミドルウェアが動いているケースが多い。これらに対応する種類の豊富な仮想マシンが求められる。
またメモリを多く必要とするようなハイパフォーマンスマシン、Hadoopなどの並列処理を行うコンピューティングも求められる。
Windows AzureのIaaS機能では、Windows Server(2008 R2、2012、2012 R2)やLinux(Ubuntu、CentOS、SUSE Linux)のOSを扱うことができ、Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)やOracle DataBase、Microsoft SharePoint、Microsoft Biztalk Server、Oracle WeblogicのミドルウェアがあらかじめインストールされたOSイメージもそろっている。
ハイパフォーマンスマシンについてはA6(4コア メモリ28GB)、A7(8コア メモリ56GB)のマシンがある。また、Hadoopをサービス化した「Windows Azure HDInsight」が提供されている。
企業に限ったことではないが、データには万全の堅牢性が求められる。
Windows Azureでは、IaaSのOSイメージ、データはvhdファイルとして、「Blob」と呼ばれるストレージ領域に保存される。このデータは、3重化されてDC内に保持されている。
また、1つのDC内のみで保存するのではなく、ペアとなる別のリージョンのDC内にも同じものが保存されている。
つまり日本リージョンの話でいうと、東日本リージョンと西日本リージョンで6多重になって保存されている。
データの種類によっては企業の外に持ち出せないケースや、既に自社データセンターがありクラウド側とデータを連携したいケースがある。自社内のサーバーとクラウドをネットワークで柔軟につなげ、ハイブリッド的な使い方ができることが求められる。
Windows Azureでは、仮想ネットワーク機能を備えており、オンプレミスとVPNで接続できる。「Service Bus」という機能を使って、セキュアなエンドポイントを通じてデータのやりとりを行うことも可能だ。
企業向け用途では、サーバーの監視管理を統合することが求められる。
Windows Azureでは、アラート機能やエンドポイントの監視などの機能がポータルから設定可能だ。ただ、台数が多かったり、複雑な監視が必要だったりする場合は、Microsoft System CenterやZabbixのような監視ツールを使う必要がある。
企業で管理しているActiveDirectoryなどのアカウントとシングルサインオンすることも求められるシナリオだ。
その他、細かい要件については昨今マイクロソフトのサイトなどを中心に情報が充実してきているが、サポート体制やコミュニティがあることもエンタープライズには求められることだろう。
Windows Azureについて疑問がある方はマイクロソフト公式のMSDNフォーラムや「Japan Windows Azure User Group」コミュニティのFacebookページなどで相談してみてはいかがだろうか。
ここからは、Windows Azure無料評価版をセットアップして、実際に使ってみよう。
Windows Azure無料評価版のセットアップについては本稿では割愛するが、記事「英語管理画面でムリしてる人が知らないと損する:無料で始めるクラウドLAMP構築超入門」の「Windows Azureのサインアップ」の章を参考にしてほしい。
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