カスタム注釈オブジェクト「PhotoAnnotation」とカスタム注釈ビュー「PhotoAnnotationView」の実装が完了しました。これらのオブジェクトを使用して注釈を地図上に表示するためにViewControllerを修正していきます。
ViewControllerの修正のメインの作業は、「mapView:viewForAnnotation:メソッドを追加し、注釈ビューのセットアップと更新処理を記述する」ことですが、そのためにはViewControllerがMapViewの「デリゲートオブジェクト」になる必要があります。
「デリゲート(移譲)」について、アップル公式のドキュメント「Objective-C プログラミングの概念」では以下のように説明されています。
デリゲート(delegate、委譲)とは、あるオブジェクトがプログラム中でイベントに遭遇したとき、それに代わって、または連携して処理するオブジェクトのことです。
ViewControllerがMapViewのデリゲートオブジェクトとなることで、「注釈ビューのセットアップ/更新」などの処理をViewControllerに任せることができます。
必要な作業は二つあります。
一つ目はMKMapViewDelegateプロトコルを採用することです。PhotoAnnotationの実装したときと同様にクラス名の後に採用したいプロトコル名を追加します。
... class ViewController: UIViewController, MKMapViewDelegate { // MKMapViewDelegateを追加 ... }
二つ目に必要なことはMKMapViewの「delegate」プロパティに「self」(ViewController自身)をセットすることです。selfをセットする1行をprepareMapViewメソッドに追加します(下記コードの4行目)。
private func prepareMapView() { self.mapView.rotateEnabled = false self.mapView.pitchEnabled = false self.mapView.delegate = self // 追加 let centerCoordinate = CLLocationCoordinate2D(latitude: 35.681382, longitude: 139.766084) let initialSpan = MKCoordinateSpan(latitudeDelta: 0.4, longitudeDelta: 0.4) let initialRegion = MKCoordinateRegion(center: centerCoordinate, span: initialSpan) self.mapView.setRegion(initialRegion, animated: true) }
prepareAnnotationsメソッドを以下のように修正します。PhotoAnnotationを作成してMapViewに追加するように修正しています。
private func prepareAnnotations() { let fetchResult = PHAsset.fetchAssetsWithMediaType(PHAssetMediaType.Image, options: nil) fetchResult?.enumerateObjectsUsingBlock ({result, index, stop in if let asset = result as? PHAsset { if asset.location != nil { let annotation = PhotoAnnotation(asset: asset) self.mapView.addAnnotation(annotation) } } }) }
さて、いよいよ先の「今回の大まかな流れ」の2.と3.にあった「mapView:viewForAnnotation:」メソッドの追加です。mapView:viewForAnnotation:メソッドは注釈ビューが必要になったタイミングで呼ばれます。このメソッド内で行う主要な処理は以下の通りです。
func mapView(mapView: MKMapView!, viewForAnnotation annotation: MKAnnotation!) -> MKAnnotationView! { let photoAnnotation = annotation as? PhotoAnnotation let photoAnnotationViewID = "photoAnnotationView" var photoAnnotationView = mapView.dequeueReusableAnnotationViewWithIdentifier(photoAnnotationViewID) as? PhotoAnnotationView if photoAnnotationView == nil { photoAnnotationView = PhotoAnnotationView(annotation: photoAnnotation, reuseIdentifier: photoAnnotationViewID) } if let image = photoAnnotation?.image { photoAnnotationView?.image = image } else { let screenScale = UIScreen.mainScreen().scale let targetSize = CGSize( width: PhotoAnnotationView.size.width * screenScale, height: PhotoAnnotationView.size.height * screenScale) PHImageManager().requestImageForAsset( photoAnnotation?.asset, targetSize: targetSize, contentMode: .AspectFill, options: nil, resultHandler: {(image, info) -> Void in photoAnnotation?.image = image; photoAnnotationView?.thumbnailImage = image; } ) } return photoAnnotationView }
4行目でMapViewのdequeueReusableAnnotationViewWithIdentifierメソッドを使用して未使用の注釈ビューの取得を試みています。
未使用の注釈ビューがなかった場合の処理は6〜8行目です。PhotoAnnotationViewに実装したイニシャライザーを使用して初期化を行っています。
photoAnnotationオブジェクトのimageプロパティがnilでなければphotoAnnotationViewのimageプロパティにセットします。
nilであれば、PHImageManagerのrequestImageForAssetメソッドを使用して写真の実データをリクエストし、引数のクロージャ内で、得られた画像データをphotoAnnotationとphotoAnnotationViewのプロパティにセットしています。
13〜16行目では、リクエストする画像データのサイズを作成しています。ポイント単位の大きさでそのままリクエストすると十分な大きさの画像が得られなかったので、PhotoAnnotationViewのsizeプロパティの値(44×44)に物理的なスクリーンのscaleを掛けたサイズ(iPhone 6やiPhone 5sなどであれば88×88、iPhone 6 Plusであれば132×132)のCGSizeを作成しています。
[Run]ボタンをクリックしてiOSシミュレーターで動かしてみましょう。カスタムの注釈ビューが表示されます。
注釈ビューをタップすると、吹き出しが表示されます。
今回はカスタムの注釈オブジェクトと注釈ビューを新規作成し、地図上に写真のサムネイルが表示されるように修正しました。
次回は、注釈ビューが選択状態の場合に表示される吹き出しをタップした際の動きと、その時に表示される画面を作成します。次回でPhotoMapアプリが完成する予定です。
クラスメソッド株式会社 iPhoneアプリサービス事業部所属のプログラマーです。iOSアプリの開発がメインですが、デザインやAWSなども勉強中です。
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