最後にちょっと毛色の違う「転職2.0」を紹介します。今までお話ししてきたのは「転職」を生業(なりわい)とする企業が提供してきたサービスです。それ以外に、エンジニアを採用したい企業がカンファレンスなどで採用につながるアピールをする事例を「カンファレンス型」と名付けて、傾向と事例を見ていきましょう。
カンファレンスでの求人
「RubyKaigi」「ScalaMatsuri」「YAPC::Asia」など言語に特化したカンファレンスや、「LLイベント」「エンジニアサポート CROSS」などのエンジニア全体を対象としたカンファレンスでは、企業スポンサーを募るケースが多くあります。
企業は金銭・インフラ・飲食などを提供する代わりに、公式サイトや会場にロゴやリンクなどを掲出したり、来場するエンジニアにノベルティを配布したり、カンファレンス中にスポンサーセッション枠で企業や求人のアピールをしたりできます。
この仕組み自体は特に目新しいものではないのですが、採用につながるような工夫を凝らした企業があったり、実際の成功事例が出てきていたりします。そういった事例はとても「転職2.0的」ですので、事例を見ていくことにしましょう。
2013年「RubyKaigi」(任天堂)
ちょっと前のことですが、「RubyKaigi 2013」で任天堂が配布していた「Code Puzzle」というフライヤーが、とても面白いものでした。掲載されたパズルを解いていくと次々と問題が現れ、最終的には採用ページへ誘導されるという仕掛けです。
菌類はこれを現場でもらい、セッションそっちのけで熱中してしまいました。任天堂がWebエンジニアを募集しているという意外な事実や、受け取ったエンジニアを楽しませながら企業や求人のアピールをするなど、大変面白い取り組みでした。こういうのが今後も出てくると、カンファレンスに参加することがもっと楽しみになりそうです。
2014年「ScalaMatsuri」(ドワンゴ)
こちらはもっと直接的に、「カンファレンスのスポンサーをしていた企業を、エンジニアが転職先として選んだ」という事例です。
ありそうでなかった「カンファレンスをきっかけに転職した事例」を、企業名・個人名とも出して紹介しているブログはなかなか貴重です。そして、エンジニアにも企業にもカンファレンスの意義や価値を可視化してくれたこの出来事が、これからもっと増えてほしいと思います。
今回は少し長くなりましたが、「転職2.0」なサービスや事例について紹介しました。こうして並べてみると、「転職1.0」より数こそ劣りますが、各サービスとも特色を打ち出しており、エンジニアと企業のマッチングという点において成果が出つつあるようです。
前回の連載では「エージェントは複数使うとよい」とアドバイスしました。
知名度の高い大手を1〜2社、「IT業界に強い」とうたっている中堅どころを1〜2社、合計で2〜3社に登録するぐらいがちょうどよいでしょう
当時はこのように書きましたが、現在は「中堅どころ」の代替として、これら「転職2.0サービス」を選択してもいいのではないでしょうか。
「転職2.0サービス」を利用すると、エンジニアの将来にとっても副次的なメリットがあります。「ポートフォリオ型」はアウトプットやスキルを登録するので、エンジニアとしての過去の実績や現在のスキルを棚卸しするきっかけになります。「コーディング型」は仕事と関係ないコードを書くので、単純にコーディング力を鍛える効果を期待できます。
先日、エンジニアライフのコラム「101回死んだエンジニア:業務時間外で勉強をしなければいけない理由」がちょっとした話題になっていました。「業務時間外に勉強するのは当然? 最悪?」と意見が割れていたようです。菌類は「当然」の立場であることを表明しておきます。
ということで次回は、「エンジニアは転職2.0に対応しているのか?」というお題で、転職2.0時代にエンジニアが採るべき行動指針についてお話しします。変化の激しいソフトウエア開発の世界ですから、酒飲んで「ウェーィ!」とばかりしていると、あっという間に取り残されてしまいます。
過ごしやすい秋の夜長、エンジニアとしての生存戦略を考えていきましょう。それまでに101回死んだりしないよう、カラダニキヲツケテネ!
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