それでは、菌類が観測した「転職2.0」を提供するサービスを紹介します。それぞれのサービスには幾つかの共通する特徴がありますので、特徴ごとに分類します。
まずは、企業がオフィス環境や所属しているエンジニアなどを公開する「会社見学」を実施し、エンジニアにアプローチしていくサービスです。このタイプを「会社訪問型」と分類します。
Wantedly
代表的なサービスは、前回も紹介した「Wantedly」。企業が事業内容やエンジニアが働く環境、求める人材などを明らかにした上で「会社訪問」の参加者を公募し、転職潜在層のエンジニアとのマッチングを行うサービスです。
前回書いた通り、実際のオフィスを見たり、一緒に働くであろうエンジニアと話したりすることは、エンジニアと企業がニーズを直接ぶつけられるため、はっきりした「転職活動」に進む前の段階でミスマッチを防ぐ効果が期待できます。
「会社訪問型」の現状
このタイプのサービスは、まだWantedlyだけです。類似サービスとして「ソーシャルランチ」がありますが、こちらは新卒採用に特化したものですので、今回は取り上げません。
また、GMOペパボの「ペパランチョン」のように、企業が独自で会社見学を受け入れるケースも増えてきました。常時受け入れるタイプのものの他に、不定期のイベントとして開催されるケースもあるようです。気になる企業があったら、公式サイトや公式Twitterアカウントなどをチェックしておくといいかもしれません。
イベントとして開催されていなくても、最近のIT系企業は中途採用に困っていますから、「中の人」に頼むと会社見学ぐらいはさせてくれるところが増えています。中の人に伝手(つて)がある人は、直接お願いしてみるのも一つの方法です。
次に紹介するのは、エンジニアが自分の実績や能力を可視化して公開し、企業からのスカウトを受けたり、応募時のレジュメに使ったりするタイプ。このようなサービスを「ポートフォリオ型」と分類します。
Forkwell
ポートフォリオ型の先駆けになったサービスが「Forkwell」です。菌類の前回の連載でも、最終回で「新しい転職の形」として取り上げました。これらのサービスの中では老舗といえるでしょう。
サービス内容は、エンジニアが自分のブログや講演スライド、GitHubリポジトリや著作などのURL、言語やミドルウエア、ツールや開発手法などのスキルを登録しておくと、アウトプットや保持スキルを列挙した「エンジニアのポートフォリオ」が出来上がる、というものです。
また、スキルやアウトプットには「タグ」が付けられ、Facebookの友達が「+1」を付けられるので、持っているスキルがどの程度信頼できるかの客観的な指標にもなります。
TalentBase
もう一つ、このタイプのサービスとして「TalentBase」があります。
こちらもエンジニアのポートフォリオを作成するサービスですが、「評価ゲーム」という機能が実装されています。Facebookの友達を利用して、「どちらの開発スピードが早いですか?」などの質問に回答してもらい、その結果から人物や能力の傾向を可視化しようという試みです。
Webサイトトップページに「人工知能とビッグデータ解析で新しいキャリアの可能性を作り出す」と書かれている通り、求人掲載企業に対して適した登録者を紹介する「マッチング」を自動化しているのが特徴です。
「ポートフォリオ型」の現状
興味深いことに、「Forkwell」と「TalentBase」は、エンジニアと企業のミスマッチを解消する方法としてまったく逆のアプローチを採用しています。
Forkwellは「人力」。遅れてオープンした「Forkwell Jobs」は、一見普通の転職サービスです。しかし求人情報をよく見ると、「オフィスの環境」「現場で使われている技術」「チーム体制と開発フロー」など、一般的な転職サービスに比べてエンジニアが知りたい情報が圧倒的に詳細かつエンジニア目線で書かれています。エンジニアをサポートするエージェントもエンジニアリングの知識や経験を持っているらしく、転職サービスの問題点であった「エージェントがソフトウエア開発のプロではない」という問題に正面から取り組んでいます。
一方のTalentBaseは「人工知能とビッグデータ解析」。サービスが集めたエンジニアの「人材プール」と企業からの「求人情報群」を、ソーシャルデータを活用してマッチングさせる、というアプローチです。こちらはまだサービス開始から日が浅いため、菌類の観測範囲で採用事例などは見えていませんが、今後の展開が注目されます。
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