阿部川 シーさんのキャリアについてお伺いします。大学ではどのようなことを学ばれましたか?
シー氏 台湾の輔仁(ふじん)大学で応用数理を専攻し、卒業後に南カリフォルニア大学で電気工学の博士号を取りました。
輔仁大学時代は、キャンパスライフを心から楽しみました。ギタークラブに入って演奏会を企画したり、ダンスパーティーに行ったりしましたし、2年生のときは大学初となるモータースポーツクラブを立ち上げました。台湾の大学でモータースポーツクラブを持っているところはあまりなかった時代です。モーターショーやイベントも企画しました。
イベント企画の経験からは、どうやったら実行力のある組織を作れるか、どうやって来場者を集めるかなど、多くを学びました。失敗すれば、直接自分にはね返ってきますから、学生といえども真剣でした。
学生時代は自分を探索する期間です。自分に何ができるのか、自分はどんなことに興味があるのかなどを、一所懸命探すべきときだと思います。
阿部川 モータースポーツクラブは、シーさんの起業家としての原点とも言えますね。
シー氏 そうですね。私は新しいことが好きで、また新しいことを始めるのも好きなのかもしれません。
阿部川 エンジニアとして社会人生活をスタートし、技術分野でさまざまな成果を出した後、マネジメント分野にキャリアを広げられましたね。これは、自然とそうなったのでしょうか、あるいは自ら進んでそのようにしていったのでしょうか?
シー氏 若いころは主に技術に興味があり、マネジメントを意識したことはあまりありませんでした。また、マネジメントを行うためには、技術とは違った能力や経験が必要だとも感じていました。
しかしビジョンや夢を意識し、多くのスタートアップ企業に関わるようになり、技術スキルだけではそれらの実現は難しいと分かるようになりました。
スタートアップでは、エンジニアとしての仕事もしなければなりませんし、それ以外の仕事にも携わらねばなりません。マネジメントについては、両親(エイサー創設者のスタン・シー氏とキャロリン・イー氏)から学んだことが、下地になりました。
私は今でもさまざまなことを学び続けていますが、「自分を強いて」学んだことは一度もありません。面白いから学ぶのであって、だからこそこれまでやって来られたのだと思います。
阿部川 今でも自動車のファンですか?
シー氏 もちろんです! 自動車関連の企業に出資もしています。
多くの自動車関連企業はいわゆるビッグデータのオーナーですから、顧客情報が漏えいすることを非常に恐れています。その面でBYOCが支援できることは多いと思います。
また、自動車に関するデータを集めたら、位置情報を活用したサービスのような新たなサービスを展開できるようになるかもしれません。
さらに考えを進めると、IoTのコンセプトで顧客のデータをモニターしたら、故障率が分かるようになります。製品開発のレベルでは分からなかった故障発生箇所がデータから判明すれば、製造段階から手直しできるようになります。
単にデータを収集するだけではなく、そのデータを用いて何ができるのかが大切なのです。
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