コミュニケーションツールの発展や英語公用語化などで随分やりやすくはなったものの、日々の苦労は当然起きます。
各国それぞれに祝日や長期休暇時期があって、その間は質問しても返事がないとか、海底ケーブルが壊れて、ネットワークが遅くてPull Requestが送れないとか、発生する問題がいちいち地球規模なのは面白いです。
複数スクラムチームが並行で開発を進める上でのチャレンジもあります。チームの同期を図るための工夫として、「LeSS」や「SAFe」などのドキュメントを読み漁ったり、カンファレンスを聞きに行ったりしながら、自分たちに合ったやりかたを探しています。
「拠点単位でのチーム形成に重みをおく」か、「システムの分解点を軸にチームを構成する方を重視するか」でシステムの成長が変わってくることも、実体験で学びました。いわゆる「コンウェイの法則」を、身を持って体験できたわけです。
いずれの課題も、明確な答えはまだ見つかっていません。アジャイルソフトウェア開発宣言の言葉通り「チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整」を日々行っています。
さまざまなツールのおかげで、大阪も含めた拠点間が極めてフラットに結び付くような開発スタイルが出来上がり、われわれのソフトウェア開発の仕事から「場所」の概念が薄れてきています。
コミュニケーションのハードルが下がったおかげで、大阪にいながら東京のチームと一緒に働くことは普通になりました。同じように、海外のエンジニアとも特に大きな障害はなく仕事ができます。
そうなると、今後はエンジニア個人のスキルがより重要になります。
例えば、インドのエンジニアと自分が同じぐらいのスキルや能力だった場合、発注側が「よりコストの安いインドの方にやってもらおう」と判断することもあり得ます。これまでは、スキルが同等でもコミュニケーションコストがかさむからと海外の方の起用を躊躇(ちゅうちょ)していたケースでも、今後は純粋に「スキル」と「人件費」で評価するようになります。
現在、オフショア開発や海外拠点設置などで、多くの国内SIerが海外勢との競合関係にあります。今後この流れは、個人レベルでも起こってくるでしょう。
つまり、日本のエンジニア1人1人が、海外のエンジニアと競合関係になるのです。
良い方に捉えると、スキルを磨けば、大阪でもどこでも働けるようになるといえます。腕に覚えがあれば、東京でも大阪でも台湾でも世界中どこでも働ける。そうでなければフラット化する世界に飲み込まれる。そういう時代がやってきます。この流れが将来的に日本のスタンダードになるのではないかと筆者は思います。
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