阿部川 マッキンゼーでは「タレントマネジメント」(※)が専門だったとか。
ペレイラ氏 最初はヘルスケアや製薬関連を担当し、病院や政府が行う厚生や健康に関する制度の改善なども担当しました。その後、化学品・医薬品メーカーの「メルク」に転職し、社内コンサルタントとして、戦略立案とその実行にも関わりました。マッキンゼーに戻ってからは「HR」(※)専門のコンサルタントとなり、タレントマネジメントに関わり始めました。
阿部川 なぜ、タレントマネジメントに興味を持たれたのですか?
ペレイラ氏 人生に関わるものだからです。タレントマネジメントは、より個人に寄り添います。
企業の中で、個人がパフォーマンスを発揮し、自分のキャリアが形成されていく過程を楽しめるか。そのためには個人個人がしっかり結び付くことも大切ですし、忙しさの中で自分を見失わないように配慮することも大切です。
人材というものが、あるいは一人一人の個人というものが、どれほど企業に大きなインパクトを与えるか、企業がそれに対して十分な対応を行うことがどれほど大切かということを日々実感しています。
阿部川 フランクフルト、シンガポール、ロンドン、サウジアラビアのリヤドと、世界中で仕事をされていらっしゃいますね。
ペレイラ氏 2010年にサウジアラビアのリヤドで、マッキンゼーのリヤド支社のオープニングを担当しました。困難の連続でしたが、自分のキャリア形成の中で1番といえるほど良い経験をしたと思います。マッキンゼーには多くの機会を与えてもらい、とても感謝しています。
阿部川 「良い経験」とは、具体的にどんな経験ですか?
ペレイラ氏 それまでとはまったく違う環境で、自分の従来の思考を自ら広げる努力が必要だったということです。
どんな状況であっても、どんなに遠くの国や、縁の遠い文化であっても、決して先入観で物事を判断してはいけないと思います。事前に好き嫌いを決めてはいけない。それは国だけではなく、企業にも当てはまります。
エンジニアの皆さんも、常に心を開いて新しい物事に接してほしいと思います。急いで判断せずに、新しい文化があなたにどんな「変化」を与えてくれるかをゆっくり見ていってほしい。そうすれば必ず、その経験があなたの中で何かしら「形」になっていきます。そうした経験を繰り返していくことで、プロフェッショナルとしてのモノの見方も磨かれるのではないでしょうか。
阿部川 現在は、ご家族とご一緒にシンガポールに住み、シンガポールで仕事をされているのですね。
ペレイラ氏 シンガポール出身の夫と知り合い結婚しました。こればかりは、キャリアの行方とは関係なく起こってしまいました(笑)。
シンガポールは素晴らしい国です。美しく、便利で、子供を育てるにもとてもよい環境です。13歳と6歳の娘がいますが、住んでいてとても楽しいですよ。その意味では、シンガポールは私にとっては少しだけ特別な土地かも知れません。
よく「あなたの故郷はどこですか」と聞かれるのですが、答えに困りますね。はやりの言葉で言えば、私は「グローバル市民」でしょうか。ロンドンもリヤドも友達がいますし、子供たちは学校生活を過ごしました。ある意味故郷のようなものですね。
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