希望の職が見つかったら、みかん色の生活が待っている。だが、職探しは難航するかもしれない。
テレワーク移住の交渉が決裂、上場企業のエンジニア職は狭き門、事務や営業に職種替えすれば門戸は広がるがエンジニアを諦めたくない。大手の元請けの中小システムハウスを探したいが、どこが元か子か孫か分からない。製造や販売などの別業種に就職して情シス部署を作るとなると、社内政治力が問われそうだ。新居浜市の求人には、ハードウェア絡みが少なくない。パラレルスキルが必要だろうか……。
こうした不安が募ったら、移住を諦めるしかないのだろうか?
いや、そんなことはない。不安になるのは当然だ。新しい町で、新しい仕事、新しい人間関係を始めるのだから。不安と移住の魅力をてんびんにかけて、後者が勝ったときが、移住のタイミングだ。不安が勝る間は、情報収集しながら待てばいい。移住を諦める必要はない。
社会は、5つの役割の人による危ういバランスの上に成り立っている――これは筆者の私見にすぎないが、長年の地域活性化活動から得た知見である。
「トリックスター」は社会規範の破壊者だが、ときにスターターとなる。「デザイナー」は、抽象的な着想を具体的な設計書に落とし込む(※1)。「アントレプレナー」は、事業を興し、雇用を生み出す。「プレイヤー」は、モノづくりに関わる実務者だ。会社員エンジニアは、これに該当する。「マネジャー」は、管理や運営や人材育成などの後方支援で、社会基盤を支える(※2)。
※1 デザイナー=ここでの「デザイナー」とは、図案や配色やレイアウトなどのグラフィックに関わる職業デザイナーのことではない。形のない思考を、具体的な企画に定着させる人全般を指している
※2 マネジャー=ここでの「マネジャー」は、企業の管理職ではなく、社会維持のために必要な作業を担う人全般を指している。交通や通信網といった社会インフラに関わる人や、家事や介護や育児といったアンペイドワークの専業者も含まれる
この中で、いま、移住のタイミングにあるのは「デザイナー」と「アントレプレナー」ではないだろうか。「プレイヤー」はその後に続けばいい。
実際、筆者が移住の成否をくまなくbing検索したところ、現時点では、愛媛に限らず全国的にスタートアップ移住が目立つ。移住先で開店した飲食業経験者、移住先の素材を生かす手仕事系クリエーター、イベントプランナー、農業や牧畜業などの第一次産業従事者などである。「この街に移住した人たちと作るウェブマガジン『いい暮らし、松山』」の「移住者インタビュー」にも、スタートアップ移住の成功例が多い。
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