高齢化による就労人口減は、自治体の弱体化に直結しない。人生経験や業務経験の豊富な人材が多いということだからだ。
ITの力で住民の能力を引き出せば、デメリットはメリットに変わる。
高齢化の進む自治体には、高齢者という「資産」がある。高齢者向け開発では、企画に先立つ実態調査を実施できる。テスト段階では、操作性や機能への市場の反応が手にとるように分かる。世界各国で寿命が延びる時代に先駆け「超高齢テスター集団を組織化」できたら、そのノウハウがビジネスになる。
地元の歴史と文化を知る高齢者に方言の通訳ツールを開発して提供し、インバウンドを取り込む。旅行者と2ショット写真を撮ってもらい、表情データに基づく顧客満足度を次回旅行企画に生かす。
鬼北町には、最近まで名だたるブランドを手掛ける高級アパレルメーカーがあったことから、縫製のプロが多く、布製品の創作ビジネスが可能だ。例えば、宇和島市の真珠を3Dプリンタと鬼北町民の技術でコスチュームジュエリー化して、MRを利用した仮想の海で見せる、といったことも夢ではない。「品物」ではなく「体験」を売るクロスオーバーな企画には、ITの力が不可欠だ。
愛媛県産品を売り込む「愛のくにえひめ営業本部」によると、売り込みの強化で2017年4〜9月の成約額が前年同期比20%も増えたという(※)。より一層の県産品や産業の宣伝力強化には、パワポに代わる新規性のあるプレゼン手法が必要になる。リアルとバーチャルをミックスした視覚的でインタラクティブな「MRインフォグラフィック」の作成ツールを開発できれば、136万人の県民エヴァンジェリストの誕生だ。
以上のようなヒントを読むと、デザイナーならより優れたプランを考え始めるだろう。アントレプレナーなら事業化への可能性を模索するだろう。一方、これらの話に現実味を感じられないなら、スタートアップ移住には時期尚早だ。だが、今すぐ移住せずとも、旅行はできる。ぜひ観光からでも足を運び、愛媛を満喫してほしい。
次回(愛媛編、最終回)は、移住前準備から短期的な収益確保まで、具体的な移住方法を指南する。
全国各地のU&Iターンエンジニアたちが、地方での生活の実情や所感などをセキララに伝えます。Uターン、Iターン、Jターンに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
現在、または元ITエンジニアかIT企業社員、かつ現在住んでいる地域へUターン/Iターン/Jターンし、記事執筆に興味のある方は、下記まで連絡ください。
個人事業所セイザインデザイン自営。
1980年代より、勤務先業務の一環として、地域高度情報化推進、産学共同開発、技術イベントや地域ポータルの企画など、地域活性化活動に従事。1998年、XML1.0勧告翌月に退職し、愛媛県鬼北町に移住して開業。東京案件にテレワークで応える。XMLマスター資格試験の初発本など、著書、連載、多数(おもにPROJECT KySS名義)。Microsoft MVPを12年間受賞(Oct 2003- Sep 2015)。
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