システムの動作状態をチェックしたり、必要なメモリサイズやCPU/ディスク性能を見積もったりするには、タスクマネージャーによるシステム状態の把握が必要だ。Windows 10のタスクマネージャーの見方を解説する。
対象OS:Windows 8.1/Windows 10/Windows Server 2012 R2/Windows Server 2016
Windows OSにおいて、システムの動作状態をチェックしたり、必要なメモリサイズを見積もったりするには、タスクマネージャーによるシステム状態の把握が必要である。これを使えば、簡単にシステムの動作状況を調査できるし、必要ならアプリケーション(プロセス)ごとの細かな動作状況やCPU/メモリの利用量などをモニターすることも可能だ。
タスクマネージャーは非常に多くの機能を持つが、本TIPSでは最もよく使われるであろう[パフォーマンス]タブの内容について解説する。Windows 10よりも前のWindows OSやWindows 11におけるタスクマネージャーについては、以下の記事を参照していただきたい。
タスクマネージャーを起動する方法は何通りかある。
タスクマネージャーを起動すると、デフォルトでは「簡易表示」モードで表示される。このモードではタスク名しか表示されず、簡単に実行中のタスクの一覧を確認できる。
上の画面で[詳細]のリンクをクリックし、[パフォーマンス]タブを選択すると、次のような画面に切り替わる。
画面左側にある[CPU]や[メモリ]などのカテゴリーをクリックすると、右側にそれぞれの詳細情報が表示される。右クリックしてメニューから[コピー]を選択すると、その詳細情報をテキスト文字列としてクリップボードにコピーできる。
左側のカテゴリー部分か右側の詳細部分をダブルクリックすると、左側だけ、もしくは右側だけの「要約ビュー」モードになり、コンパクトに表示される。
CPUグラフだけを要約ビュー表示させると次のようになる。
ではそれぞれの項目について、詳しく見ていこう。まずは[CPU]カテゴリーの内容である。Windows 7のタスクマネージャーと比較すると、CPUのスペックの情報が表示されているため、CPUの情報(仕様)などを調べやすくなっている。
各表示項目の概要は次の通りである。
項目 | 概要 |
---|---|
使用率 | CPUがどれだけ利用されているかを表す率。全CPU/全コア/全スレッドで通算して計算される。例えば全コアがそれぞれ100%動作すると利用率は100%になる。もし半分のコアが100%で、残り半分が0%ならば50%となる |
速度 | CPUのクロック周波数。アイドル時や低負荷時はクロックを下げて消費電力を抑制するので、CPUの理論最大クロック数よりも低くなる |
プロセス数 | OSから見たプログラムの実行単位。通常のWindows OSでは数百プロセスが実行中となっている。通常はアプリを1つ起動すると、1つないしは複数のプロセスが実行される |
スレッド数 | プロセスの中にある実際の実行単位。1つのプロセスには複数のスレッドが含まれているのが普通。CPUコアは、スレッド単位でプログラムを実行する |
ハンドル数 | ファイルやメモリやリソースなどの管理単位(を識別するためのIDのようなもの) |
稼働時間 | システムが起動/再起動してからの時間「日:時:分:秒」で表示されている |
CPUカテゴリーの表示内容 |
Windows OSにおけるプロセスやスレッドの詳細については、以下の記事も参照していただきたい。
「CPU使用率」とは、現在CPUがどの程度処理を実行しているか(もしくは何もせずに、アイドル状態になっているか)を表す数値である。100%ならフル稼働、0%ならアイドル状態を表す。
CPUの使用率が100%近くになり、それがずっと続いているようならば、CPU性能が不足しているので、もっと高速なCPUのシステムにするべきであろう(もっともゲームでもしない限り、実際にはそのようなことは少ないが)。
CPUに余裕があるのにシステム全体の処理が遅い場合は、メモリが不足していてページングが頻繁に起こっていないか、ディスク入出力が遅くて待ち時間が長くなっていないかなどを、(メモリカテゴリーやディスクカテゴリーの情報で)チェックするとよい。
右クリックオプションで[カーネル時間を表示する]をオンにすると、Windows OSのカーネル内部での処理に要する使用率を表示できる。例えばディスクI/Oやファイルシステムの暗号化、圧縮処理などで時間がかかると、カーネル時間の割合が上昇する。
CPUのコアごとの使用率を知りたい場合は、グラフを右クリックして、ポップアップメニューから[グラフの変更]−[論理プロセッサ]を選択する。すると各コア別の使用率グラフが表示される。
右下には、CPUの仕様などの情報が表示されている。これを見ると、CPUの性能やスペックなどをある程度推測できる。
項目 | 概要 |
---|---|
基本速度 | このCPUの仕様上の標準クロック周波数。ブースト時にはこれより高くなることもあるし、アイドル時にはこれよりも低くなることがある |
ソケット | CPU数。通常は1だが、ハイエンドワークステーションやサーバシステムなどでは、2つ以上のCPUを装着できるものがある |
コア | CPUのコア数。クライアント向けCPUでは2〜4コア程度のものが多いが、ハイエンド/サーバ向けでは8コアや16コアなど、もっと多くのコアを持つCPUもある |
論理プロセッサ数 | 1コア内で同時に実行可能なスレッド数。ハイパースレッド対応のCPUだとコア数×2となる |
L1/L2/L3キャッシュ | 1次/2次/3次キャッシュのサイズ。このサイズが大きいほど、同じくクロック周波数でも性能が高くなる(可能性が高い) |
仮想化 | 仮想化機能が使えるか、仮想環境下で実行されているか、などを表す |
CPUカテゴリーの表示内容 |
「仮想化:〜」は、仮想システムに関する状態などを表す。
「仮想化:有効」となっていれば、Hyper-V(やVMware、VirtualBoxなどの仮想化ソフトウェア)を動作させるのに必要なIntel-VTやAMD-Vなどのハードウェア仮想化支援機能が利用できるということになる。
「仮想化:無効」(BIOSで一時的に無効になっている)もしくは「仮想化:非対応」(ハードウェア的に非対応)となっていればHyper-Vなどは利用できない可能性が高い。
またCPUのキャッシュ情報が「N/A」(情報は利用不可)と表示され、さらに「仮想マシン:はい」となっていれば、このWindows OSは何らかの仮想環境上の仮想マシンの中で動作しているということを表している。
[メモリ]カテゴリーを選ぶと、システム全体でのメモリの利用状況とメモリに関するハードウェア情報などが表示される。
この画面にある「使用中」と「利用可能」「コミット済み」などの項目を見ると、現在のメモリの利用状況やその過不足(メモリが不足していないかどうか)などが分かる。各表示項目の概要は次の通りである。
項目 | 概要 |
---|---|
使用中(圧縮) | 現在使用中となっている部分のメモリサイズ。「圧縮」は、使用頻度が低いので、メモリ上で圧縮して一時保管されている部分のサイズ(ディスクへスワップアウトするよりも高速に処理できる) |
利用可能 | OSやプロセスなどに割り当て可能なメモリのサイズ。以下の「スタンバイ」と「空き」の合計サイズ |
コミット済み | コミット済みサイズと、コミット可能な最大サイズ(=物理メモリサイズ+ページファイルサイズ)。「コミット」とはプロセスが使用するメモリサイズの合計のこと。物理メモリに入りきらない部分は、ディスク上のページファイルへスワップアウトされ、必要に応じてディスクから読み戻されながら(スワップインしながら)実行される |
キャッシュ済み | ファイルのキャッシュとして利用しているサイズ |
ページプール | OSカーネルで使用しているメモリのうち、(メモリ不足時には)スワップアウト可能な部分のサイズ |
非ページプール | OSカーネルで使用しているメモリのうち、(メモリ不足時でも)スワップアウト不可能な部分(必ずメモリ上に常駐している必要がある部分)のサイズ |
速度 | メモリモジュールの動作クロック速度 |
スロットの使用 | システムで利用可能メモリなメモリスロット数と使用中のスロット数 |
フォーム ファクター | メモリデバイスの種類。DIMMやSODIMMなどがある |
ハードウェア予約済み | システムに確保されていて、OSやユーザーから利用できない部分のメモリサイズ。例えば内蔵グラフィックス専用に割り当てられているメモリなどが相当する |
メモリ構成 | 用途別のメモリの利用グラフ。リソースモニターのメモリグラフで表示されているものと同じ |
[変更済み] | 「メモリ構成」グラフ中の項目の1つ。ダーティバッファー(後でディスクへ書き戻す必要があるキャッシュ)のサイズ |
[スタンバイ] | 「メモリ構成」グラフ中の項目の1つ。ファイルキャッシュとして利用しているメモリのサイズ。オリジナルデータはディスク上にあるので、必要なら破棄して、空きメモリとして利用可能 |
[空き] | 「メモリ構成」グラフ中の項目の1つ。何の用途にも使われていない、未使用のメモリのサイズ |
アプリなどを多数起動して使用中のメモリサイズが増え、利用可能サイズが非常に小さな値になっているようなら、メモリの増設などを行うことが望ましい(TIPS「必要メモリサイズを見極める」参照)。
なおこのメモリカテゴリーの下側にある「メモリ構成」の横棒グラフは、よく見ると縦に何本か線(区切り)が入っていることが分かる。これは[リソースモニター]の[メモリ]タブにある[物理メモリ]のグラフとほぼ同じものが表示されている。より詳しくメモリの利用状況を調査するには、リソースモニターを使うとよい。
Windows OSにおけるメモリ管理の仕組みについては、以下の記事も参照のこと。
[ディスク]カテゴリーを選ぶと、システムに接続されている物理的なHDD単位での情報が表示される。これを見ると、ディスクへのアクセスがどの程度あるか、アクセス速度はどのくらいか、などを確認できる。
「アクティブな時間」のグラフ(上側のグラフ)がずっと100%近くに張り付いたままになっているなら、ディスク入出力がボトルネックになっていると判断できる。
各表示項目の概要は次の通りである。
項目 | 概要 |
---|---|
アクティブな時間 | ディスクがアイドルでない時間の割合。ディスクに読み書きなどのコマンドを送ってから、その応答を受け取る、という処理が間断なく続いていると100%になる |
平均応答時間 | ディスクに読み書きなどのコマンドを送信してから応答が返ってくるまでの時間の平均 |
読み取り速度 | ディスクからの1秒当たりの読み出しデータサイズ |
書き込み速度 | ディスクへの1秒当たりの書き込みデータサイズ |
容量 | 未フォーマット状態の、ディスクの“生”の総容量 |
フォーマット済み | フォーマット済みのボリュームのサイズ |
システムディスク | Windows OSのブート用ディスク(C:)として使っているかどうか |
ページファイル | Windows OSのページング用ディスク(\pagefile.sys)として使っているかどうか |
ディスクカテゴリーの表示内容 |
[イーサネット]や[Wi-Fi]、[Bluetooth]などのカテゴリーを選ぶと、ネットワークインタフェースごとの利用状況が表示される。グラフには送受信の速度が表示されるが、DNS名やIPアドレスなども簡単に確認できるようになっている。また、グラフを右クリックしてポップアップメニューから[ネットワークの詳細を表示]を実行すると、各インタフェースの統計値情報(送受信したパケット数やバイト数などの値)をリアルタイムにモニターできる。
[GPU]カテゴリーは、Windows 10 Fall Creators Update(Ver.1709)で追加された項目だ。ここでは、システムで利用できるGPUの一覧やその仕様(メモリサイズ、サポートしているDirectXの機能レベル、ドライババージョン)、利用状況などを確認できる。GPUは3DグラフィックスやCAD、AI(機械学習)、VR、ゲームなどで使われる他、ビデオのデコード(再生)やエンコード作業などでも使われる。
例えばGPUの使用率(「3D」のグラフ)がほぼ100%になっているのに、グラフィックス描画などを多用するアプリやゲームのフレームレート(1秒当たりの描画回数)が思ったほど上がらないなら、GPUの性能が不足していると判断できる。もっと高性能なGPU(を使ったグラフィックスカード)に変えたり、描画の設定を変更して、処理を“軽く”するなどの対策が必要になるだろう。
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