市がオープンデータ基盤を運営、大学が学内通貨の実証実験を実施! 「ITエンジニア U&Iターンの理想と現実」、福島編第2回は、産官学で先端技術活用に挑む、会津若松の「今」をお伝えします。
はじめまして、「アクセンチュア」の馬藤宏一(ばとうこういち)です。
「ITエンジニア U&Iターンの理想と現実:福島編」、前回は添田が会津若松で働くエンジニアのワークスタイルをお伝えしました。第2回は馬藤が、会津若松市のIT業界の「今」をめぐる動きをお伝えします。
今、会津若松で働くエンジニアが最も注目しているのが、「スマートシティAiCT」(以降、AiCT)です。
AiCT(アイクト)は、首都圏からの新たな人の流れと雇用を創出し、会津大学卒業生などの若年層の地元定着を図るために、会津若松市が整備した施設です。
会津若松市によると、AiCTは「会津ICT」の略称であり、さらに「A」には、AIZU、AI(人工知能)、Advance(前進、進出)の意味を込めているそうです。首都圏や地元のICT関連企業が集積可能で、収容人数は約500人。2019年2月に施設の工事がほぼ終わり、春のオープンに向けて準備が大詰めを迎えています。
報道によると、欧州のヘルスケア製品大手やソフトウェア大手などの企業がAiCTに入居を予定しているとのことです。私や添田が働いているアクセンチュアも入居予定です。
ICTに特化した企業が多数入居するので、会津地域の技術系人材の厚みが増し、地域内のコラボレーションの機会が増えていくだろう、と地元のIT業界も注目しています。
会津若松市ではさまざまな実証実験やオープンデータを活用した取り組みも盛んです。
例えば、市が運営しているオープンデータ基盤である「Data for Citizen」(以降、D4C)では、イベント情報や休日診療などのさまざまなオープンデータが提供されており、発想次第でいろいろなサービス開発やアプリケーションを作成、公開できます。
つまり、知恵とやる気さえあれば、オープンデータを活用して誰でも新しいサービスを作れるので、エンジニアがスキルアップできる環境があります。AiCTオープンをきっかけに、新たな企業、人材の流入や交流が加速すれば、今までになかった市民サービスが生まれる可能性も十分にあります。
行政の支援に加え、会津大学の存在も欠かせません。
会津大学は、1993年に日本初のコンピュータ専門大学として発足し、ICT人材の育成に力を入れています。また、産学官の連携にも積極的で、2017年には都内のスタートアップ企業などと連携し、ブロックチェーン技術を応用した学内通貨「白虎」の実証実験が行われるなど、先進的な取り組みも盛んです。
会津大学の卒業生が地元で起業するケースもあります。デザインやアプリケーション開発に特化した会社、運用、保守に強い会社、自動運転などの新技術の開発に注力した会社など、特色のあるITベンチャーが根付いていることも、会津地域のIT産業が盛り上がりつつある一面を物語っています。
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