「真のP2Pを実現した完全な水平分散型社会」を目指すNeukindの未来は、Libraか? Winnyか?ものになるモノ、ならないモノ(84)(1/2 ページ)

2018年8月創業のブロックチェーン関連のスタートアップ「Neukind」は「ブロックチェーンの本質を追究し、そこにどのようなビジネスモデルを構築できるのかを模索している」という。その真意を探った。

» 2019年11月15日 05時00分 公開
[山崎潤一郎@IT]

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 東京ビッグサイトで開催されたあるIT関連の展示会で、ひときわ異彩を放つ企業があった。2コマのブースを構えてはいるが、“素”のままで飾り気のないパーティションの壁には、ITの展示会には似つかわしくないアート作品が並べられている。吸い寄せられるように近づきカジュアルないでたちのスタッフに話し掛ける。

 スタッフの説明に耳を傾けながら、よく見ると陳列台の上に基板をむき出し(というより基板のみ)のデバイスが無造作に陳列してある。仮想通貨(暗号資産)のマシンだという。仮想通貨のマシンで連想するのは、高速なGPUボードや冷却ファンを搭載した武骨な筐体のマイニングマシンのそれ。だが、目の前にあるのは、「Raspberry Pi」をスタックしただけの「部品」にしか見えない(後にラズパイの競合製品だと知る)。

仮想通貨を「ステーキング」するためのノード。暗号資産「Horizen(ZEN)」をサポートする。4万円(税別)

 詳しく話を聞くと、正確には、仮想通貨を「ステーキング」するためのノードだという。ステーキングとは、一定額のコインを保管しておくことで保有額が少しずつ増加する報酬の受け取り手法。ちょうど、金融機関に預けた口座に利子が発生して少しずつ貯蓄額が増えるようなイメージだ。従って、あらかじめ指定された量以上を保有するノードの数(貯蓄)が多ければそれだけ報酬額も多くなる。

 ビットコインのマイニング作業が膨大な電力消費を伴うことは知られている(オーストリア一国の年間使用料と同等という説もあり)。その一方で、「PoS(Proof of Stake)」という合意形成の仕組みの上に構築された仮想通貨のステーキングは、早いもの勝ちの計算作業が不要なので、システムの維持に必要な電力消費が少なくて済むのが特徴だ。なるほど、それならば、マシンパワーに依存することがないので、GPUや冷却ファンは必要なさそうだ。

 このノード端末の「NeuNode」を出展していたのが、今回紹介する、2018年8月創業のブロックチェーン関連のスタートアップ「Neukind」だ。展示会で彼らのビジネスに興味を持った筆者は、後日、取材を申し込んだ。同社のビジネスやビジョンを熱く語ってくれたのは、Neukind 代表取締役の渡邉真氏。

「分散型社会の在り方として個人情報はエッジに保存する」という主義を唱え、ネットでの顔出しはNG。ただ同社サイトには、スタッフ紹介の顔写真のところに、ハッシュ値を明示してある。「これを解読してくれれば写真が表示される」とのこと

 取材では当初、IoTデバイスとしてのNeuNodeについて、製品紹介の“ノリ”で話を聞くつもりだった。だが渡邉氏は、開口一番「ブロックチェーンの本質を追究し、そこにどのようなビジネスモデルを構築できるのかを模索している」と、いきなり取材テーマのハードルを上げてきた。

 「ブロックチェーンの本質!」

 筆者のブロックチェーン周りの知識はというと「ブロックチェーンってビットコインのナニですか?」という程度。おそらく「本質」から100万光年は懸け離れているだろう。はるか先にそびえる銀嶺の頂を目指すにも近い難題である。だが、ITのライターを名乗っている以上、受けて立たないわけにはいかない。渡邉氏の説明を聞きながら、筆者なりに悩み解釈してみた。たどり着いた結論は……。

 彼らが目指すのは「1人に1ノード」という未来だった。

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