米国のビザには、「観光」「留学」「転勤」「投資」「スポーツ」「宗教」「結婚」「抽選」など、さまざまな種類があります。そしてそれぞれに「就労できる」「できない」または「条件付きで限定的に就労できる」といった複雑なルールがあります。
日本のITエンジニアが米国で就労できるビザを取得する方法は、幾つかあります。
世界各国からシリコンバレーにやってくるエンジニアの9割以上が使うメジャーな方法、それは、「学生ビザ」を取得して留学し、それから就労する、です。
もちろん、大学や大学院に留学生として入学するためには「学生ビザ」が必要ですが、留学生は米国にとってはお金を落としてくれる“お客さま”なので、不法就労目的でないことが確認できれば比較的簡単にビザを取得できます。
ただし、米国の大学、特に私立大学の学費は近年べらぼうに高くなっています。費用を少しでも節約したい場合は、日本の大学に数年通い、そこで取得した単位を米国の大学の単位に組み入れて、米国の大学や大学院に途中編入する、ことができます。米国の大学はその辺りは、柔軟に対応してくれます。
学生ビザでは給料をもらって一般企業で働けませんが、学校に通い、単位を取得し、一定の条件をクリアすると、「インターン用のビザ」を取得できます。夏休みなどにインターンとして企業で働き、そのまま正社員として採用してもらえれば、「一般就労ビザ」に切り替えられます。
大学に通いながらインターンを通じて就活、そして内定をもらいながら、就労ビザへの切り替え、という複雑なステップを乗り越える必要がありますが、世界中の誰でも使える方法です。
日本の会社で社員として働いている人が米国の本社や支社に転勤や転籍になるときに発行されるのが「転籍ビザ」です。期間限定的な転勤であっても転籍ビザは必要です。
転籍ビザは関連会社やグループ内での“一時的な”転籍のために発行されるので、転籍先の会社以外で就労したり、グループ外の会社に転職したりはできません。また、あくまで期間限定の転籍が目的なので、無期限には更新できません。転職するためには、米国滞在中に一般就労ビザなどの転職可能な他のビザに切り替える必要があります。
転籍のパターンは、2種類です。
a. 日本にある、米国企業の○○ドットコム社の日本支社、株式会社○○ドットコムジャパンに在籍している人が米国本社へ転籍する
b. 日本にある、日本企業の××電機株式会社に在籍している人が同社の米国現地法人、××エレクトロニクスUSA社へ転籍する
「海外で活躍したい」という希望をもって外資系企業に就転職する方は多いでしょう。しかし、aの「米国企業の日本支社から本社へ転籍する」というパターンは、実はそう簡単ではありません。
米国企業が日本支社で日本人を雇うのは、日本で行うビジネスに日本人としての能力を生かして働いてほしいからであって、優秀な人を探して米国本社へ送り込むためではないからです。
現在の勤務先に米国支社がない場合は、米国に子会社を設立し、そこで自分が働くというルートもあります。
米国に会社を設立し、米国で人を雇い、そして米国の経済に貢献する、という意味で「投資ビザ」が付与されます。転籍ビザに似ていますが、投資ビザには期限がありません。実際、多くの日本人がこのルートで米国に来て働いています。
一般就労ビザは、ビザの中で最もシステムが複雑です。申し込みできる時期が限られていたり、申込者が一定数を超えると抽選になったり。おまけに審査にとても時間がかかったり、数年ごとに更新が必要だったり、非常に複雑ですが、いったん就職してしまえば、ある一定の条件を満たすと、自由に転職できるようになるという利点があります。
ビザは他にも、メジャーリーグでプレーする日本人選手や芸術家、宗教関係者に与えられる特別なビザもあります。
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