ここまで紹介してきたビザは「非移民ビザ」と呼ばれる、「米国に一生移民するつもりはないけれども、一時的に米国に居住したい」という人向けのビザです。米国への移民を希望する人には、「永住権」や「グリーンカード」と呼ばれる「移民ビザ」があります。
一般就労ビザなどの非移民ビザは、一定の年数や条件をクリアすると永住権に切り替えられます。永住権があれば、ビザの期限を気にすることなく、自由に就転職できます。しかし、米国市民ではなく外国人のままなので、選挙に立候補したり、投票したりはできません。
永住権は切り替え以外に、いきなり取得する方法が2つあります。それが「結婚」と「抽選」です。
米国籍を持つ米国市民、または米国永住権を持つ人と結婚すれば、漏れなく永住権が取得できます。つまり他のビザにあるような面倒な手続きをほとんどスキップしていきなり就労できます。ある意味、誰にでも可能な一発逆転のチャンスではないかと私は思います。
米国ならではのシステムが「永住権抽選プログラム」です。文字通り「応募して抽選に当たれば、面倒なステップを一気に通り越して、いきなり米国永住権がもらえる」というシステムです。
抽選は毎年行われ、誰でも、ネットで、タダで応募できます。利用しない手はありません。私の周囲でもこのプログラムに当選して米国で働くようになった友人が何人もいます。
移民局の発表によると、例年数百人の日本人が当選するそうです。既婚者の場合は夫婦がそれぞれ応募してどちらかが当選すれば夫婦ともに永住権がもらえるので、確率は2倍です。何年か続ければかなりの確率です。
どのようなビザであれ、米国籍を取得しない限りは、外国人労働者であることに変わりません。罪を犯したり、飲酒運転で逮捕されたりするようなことがあれば、仕事どころではなく、住み続けることすらできなくなることもあります。
米国で働き、労働ビザを常に有効な状態に更新し続けていく生活は、本当にストレスがたまります。人生ゲームのように綱渡りになることもあります。仕事は得られたのに何らかの都合でビザの期限を延長できなくなり、帰国せざるを得なくなることもあります。
しかし海外で生活すると、なかなか得られない体験を得られます。また外から日本や日本人を見つめると、自分が日本人であることをより客観的に意識できるでしょう。
先日引退したイチローも記者会見で話していましたが、日本の会社の第一線で働いていた(特に中堅レベルの男性)エンジニアが米国へ渡ると、自分がマイノリティーであることを意識するようになるといいます。そういった日本では気付くことのできない思いや考えを得られることも海外で働くことの一つのメリットだと思います。
日本人が日本で外国人に対して思う気持ちと同じように、米国にいればわれわれも外国人ですから、常に節度を持った行動を心掛けたいものです。
次回は最終回、「さよなら、シリコンバレー」です。
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