[活性化関数]SELU(Scaled Exponential Linear Unit)とは?AI・機械学習の用語辞典

用語「SELU(Scaled Exponential Linear Unit)」について説明。「0」を基点として、入力値が0以下なら「0」〜「-λα」(λは基本的に約1.0507、αは基本的に約1.6733)の間の値を、0より上なら「入力値をλ倍した値」を返す、ニューラルネットワークの活性化関数を指す。ReLUおよびELUの拡張版。

» 2020年06月03日 05時00分 公開
[一色政彦デジタルアドバンテージ]
「AI・機械学習の用語辞典」のインデックス

連載目次

用語解説

 AI/機械学習のニューラルネットワークにおけるSELUScaled Exponential Linear Unit)とは、関数への入力値が0以下の場合には出力値が「0.0」〜「-λα」(λの値は基本的に約1.0507009873554804934193349852946で、αの値が基本的に約 1.6732632423543772848170429916717なので、つまり「約-1.7580993408473768599402175208123」)の間の値になり、入力値が0より上の場合には出力値が入力値をλ倍した値上限はない)となる関数である。

 名前から推測できると思うが、ReLUおよびELUの拡張版である。「Scaled(スケールされた)」という言葉の通り、ELU(Exponential Linear Unit)を「λ倍」スケールさせたものである。ただし、ELUのα値が基本的に1.0なのに対し、SELUのα値は上記の通り、基本的に約 1.6733である点にも注意が必要である。

 図1は、ELUとSELUの違いを示している(参考比較用にReLUも載せた)。オレンジ色(SELU)の線の左側が0.0から約-1.7581に向けて下がっており(比較:青色のELUは-1.0)、右側の直線の傾きが約1.0507になっている点が異なる(比較:青色のELUは傾きが1.0)。

図1 「SELU」のグラフ 図1 「SELU」のグラフ

 現在のディープニューラルネットワーク(以下、DNN)では、隠れ層(中間層)の活性化関数としては、ReLUを使うのが一般的である。しかし、より良い結果を求めて、ReLU以外にもさまざまな代替の活性化関数が考案されてきている。ReLUそのものを拡張したLeaky ReLUや、その拡張版であるParametric ReLUPReLUなどがある。「それらを改善したもの」としてELUがあり、さらにそのELUをスケールさせたバージョンの活性化関数が、(本稿で解説する)SELUScaled Exponential Linear Unit)である。

 まずは、ReLUを試した後、より良い精度を求めてSELUに置き換えて検証してみる、といった使い方が考えられる。ちなみに、SELUが発表されたのは2017年の論文『Self-Normalizing Neural Networks』(以下、SNN詳しくは「arXiv:1706.02515v5 [cs.LG]」/「arXiv:1706.02515 [cs.LG]」を参照)であり、その論文では活性化関数が主題ではなく、標準のFNN(フィードフォワード型ニューラルネットワーク、いわゆる全ての層が全結合のDNN)を改善する「SNN」という新しい手法(method)の紹介が主題であった。そのため、その論文内ではSELUと他の活性化関数との純粋な比較は行われておらず、他の活性化関数と比べた場合のSELUの優位性については不明である(筆者が検索したところ、論文「arXiv:1804.02763 [cs.LG]」では画像分類タスクにおいて他の活性化関数と比較されている。それによると、特にELUとSELUの比較では、必ずしもELUよりもSELUの方が良いというわけでもないようである)。

 主要ライブラリでは、次の関数/クラスで定義されている(いずれにもλ値とα値は固定となっており、指定できない)。

 SNNの論文「arXiv:1706.02515 [cs.LG]」では、基本的な重みの初期化方法(具体的には、平均値が0、分散が1/n[n:入力側の重みの数]となる正規分布。もしくは一様分布や、切断正規分布でもよいため、平均値が0、分散が1/nの切断正規分布である「LeCunの正規分布」を使ってもよい)や、ドロップアウトを使う場合の基本的な方法(AlphaDropout)も提案されている(正確かつ詳しくは論文を参照してほしい)。

定義と数式

 冒頭では文章により説明したが、厳密に数式で表現すると次のようになる。

 xが入力データで、f(x)が出力結果である。

 x ≦ 0の場合は、f(x)=λ × α × (ex−1)となり(λは基本的に約1.0507009873554804934193349852946αは基本的に約1.6732632423543772848170429916717)、
 x > 0の場合は、f(x)=λ × xとなる。

 上記の数式の導関数Derivative function:微分係数の関数)を求めると、次のようになる。

 SELUはReLU関数と同様に、非連続な関数であり、数学的にはx=0の地点では微分ができない

 SELUの導関数をニューラルネットワーク内で使うために、便宜的x=0を微分係数αexの方に含めることにする。これにより、次のような導関数が求まる。

Pythonコード

 上記のSELUの数式をPythonコードの関数にするとリスト1のようになる。

import numpy as np

SCALE = 1.0507009873554804934193349852946
ALPHA = 1.6732632423543772848170429916717

def selu(x, scale=SCALE, alpha=ALPHA):
  return scale * np.where(x > 0.0, x, alpha * (np.exp(x) - 1))

リスト1 SELUのPythonコード例

 条件分岐(np.where)をコンパクトに記述するために、数値計算ライブラリ「NumPy」を使用した。

 x > 0.0は「入力値が0より上か、そうではないか(=0以下か)」という条件を意味する。
 その条件がTrueのときは、戻り値としてスケール(scale)された入力値(=scale * x)を返す。なお、scaleという引数が、数式定義のλを表現している。
 また、その条件がFalseのときは、戻り値としてスケール(scale)され、α倍の(オイラー数を底とする指数関数−1)(=scale * alpha * (np.exp(x) - 1))を返す。np.exp(x)というコードが、e(オイラー数)を底とする指数関数exponential function)であるexを表現している。

 SELUの導関数(derivative function)のPythonコードも示しておくと、リスト2のようになる。

# リスト1のコードを先に記述する必要がある

def der_selu(x, scale=SCALE, alpha=ALPHA):
  return scale * np.where(x > 0.0, 1.0, alpha * np.exp(x))

リスト2 SELUの「導関数」のPythonコード例

「AI・機械学習の用語辞典」のインデックス

AI・機械学習の用語辞典

Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

AI for エンジニアリング
「サプライチェーン攻撃」対策
1P情シスのための脆弱性管理/対策の現実解
OSSのサプライチェーン管理、取るべきアクションとは
Microsoft & Windows最前線2024
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。