【 git reset 】コマンド(基礎編)――ファイルをインデックスから取り除くLinux基本コマンドTips(407)

本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回はファイルをインデックスから削除したり、特定のコミットの状態まで戻したりする「git reset」コマンドです。

» 2020年07月27日 05時00分 公開
[西村めぐみ@IT]

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「Linux基本コマンドTips」のインデックス

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 本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回はファイルをインデックスから削除したり、特定のコミットの状態まで戻したりする「git reset」コマンドです。「git reset」には、「インデックスへの登録」をリセットする用途と、「コミットをリセットする」という用途があります。今回は、インデックスへの登録をリセットする操作について解説します。

git/git resetコマンドとは?

 「git」は「Git」という分散型バージョン管理システム用のコマンドです。Gitは元々Linuxカーネルのソースコードを管理するために作られた「バージョン管理システム」で、現在は多くのソフトウェアやWebサイトのソースコード、ドキュメントの管理などに用いられています。

 ソースコードを管理する際、最新版だけを保存するやり方はうまくいきません。開発中のさまざまなタイミングで状態を管理し、必要に応じて比較、参照したり、元に戻したりできるようにする仕組みが「バージョン管理システム」です。

 Gitでは、テスト版など複数に枝分かれした状態も管理できます。複数のメンバーによる開発を前提としており、開発中の各時点におけるコメントや、コメントへの返信なども管理できるようになっています。

gitのサブコマンドとGitの仕組み

 gitコマンドはほとんどの場合、「サブコマンド」と組み合わせて利用します(本連載ではgitとサブコマンドの組み合わせをコマンドとして紹介します)。

 今回紹介する「git reset」コマンドは、ファイルをインデックスから削除したり、特定のコミットの状態まで戻したりできます。

 gitコマンドでは「リポジトリ(repository)」を使ってバージョンを管理します。リポジトリにはソースコードや変更履歴、コメントなどを一括して保管します。リポジトリには、自分のPC上に作る「ローカルリポジトリ」と、「GitHub」などのWebサービス上に作る「リモートリポジトリ」があり、両者を連携させることで複数の開発者による開発を1本にまとめることができます。

 また、ローカルリポジトリのみで運用することも可能です。そのような運用をしているリポジトリにリモートリポジトリを追加したり、逆に、リモートリポジトリを削除したりするには、「git remote」コマンドを使用します。「git remote」コマンドには、さらに「add」や「remove」などのサブコマンドがあります。

 既存のリポジトリ(リモートリポジトリ)にあるソースコードなどを入手したい場合は、まず、「git clone」(連載第381回)でリポジトリを自分の環境に複製します(※1)。リモートリポジトリの内容がバージョンアップされたら「git pull」(連載第382回)で最新版を取得します。開発に参加するのではなく、単に最新版を取得したいという場合は、「git clone」と「git pull」を利用すればよいでしょう。

※1 特定のファイルだけが欲しい場合、例えばGitHub(github.com)にあるリポジトリであれば「Raw」というボタンで表示されるURLを使い、「wget」コマンドなどを使ってダウンロードできる。この他、プロジェクト全体をダウンロードするためのリンクも用意されている([Clone or download]ボタン→「Download ZIP」)。



 保管場所であるリポジトリに対し、ファイルの編集などを行う場所を「ワークツリー」「ワーキングエリア」「作業ツリー」などと呼びます。「git clone」や「git pull」で取得した最新版のファイルはワークツリーに配置されます。つまり「作業ディレクトリ」です。

 ワークツリーで編集した結果をリポジトリに反映する操作を「コミット」と呼びます。「git add」(連載第384回)コマンドでコミットしたいファイルを「インデックス」あるいは「ステージングエリア」と呼ばれる領域に追加します。インデックスにはファイルの変更箇所などが記録されます。

 インデックスの内容は「git commit」コマンドでローカルリポジトリにコミットされ、「git push」コマンドでローカルリポジトリの内容をリモートリポジトリに反映します。従って、「git add」や「git commit」などを行わなければ、自分の環境で編集した内容がリポジトリに影響を与えることはありません。自由に編集し、テストできます。なお、ワークツリーのファイルを過去の任意のコミット状態に戻すことも可能です。

 Gitには、この他、開発中のソースコードやドキュメントを、「テスト版」「○○版」……のように枝分かれさせたり、それらを合流させたりする機能もあります。枝分かれしたそれぞれのバージョンを「ブランチ」(branch)と呼び、ブランチを合流させることを「マージ」(merge)と呼びます。

 コミットには「タグ」と呼ばれる名前を付けることができます。その際には「git tag」コマンドを使います。



コマンドの書式

git [オプション] サブコマンド [サブコマンドごとのオプションや引数]

git reset [オプション] [対象] [ファイル……]

※ [ ]は省略可能な引数を示しています。対象にはコミットなどを指定します(デフォルトは「HEAD」)。




gitの主なオプション

短いオプション 長いオプション 意味
-C パス カレントディレクトリではなく指定したディレクトリで実行したものとする
--bare リポジトリを「bareリポジトリ」(ワーキングツリーが存在しない、管理だけを目的としたリポジトリ)として扱う
-c 設定=値 設定値を指定する(設定は「git config」で確認可能)
-p --paginate 全ての出力を「less」コマンドまたは環境変数PAGERで指定されたコマンドで表示する
-P --no-pager 「less」コマンドで表示しない(「-p」の指定を打ち消す)
--exec-path=パス gitの実行ファイルのパスを指定する(「--exec-path」のみの場合、実行ファイルのパスを表示する)
--html-path gitのHTML形式のドキュメントがインストールされたパスを表示する
--man-path gitのmanファイルのパスを表示する
--info-path gitのinfoファイルのパスを表示する

gitのサブコマンド

コマンド 実行内容
clone リポジトリのクローンを作成する
init リポジトリを新規作成する、または既存のリポジトリを初期化する
remote リモートリポジトリを関連付けする
fetch リモートリポジトリの内容を取得する
pull リモートリポジトリの内容を取得し、現在のブランチに取り込む(「fetch」と「merge」を行う)
push ローカルリポジトリの変更内容をリモートリポジトリに送信する
add ファイルをインデックスに追加する(コミットの対象にする)
rm ファイルをインデックスから削除する
mv ファイルやディレクトリの名前を変更する
reset ファイルをインデックスから削除し、特定のコミットの状態まで戻す
revert 指定したコミットを取り消すコミットを実行する
status ワークツリーにあるファイルの状態を表示する
show ファイルの内容やコミットの差分などを表示する
diff コミット同士やコミットとワークツリーの内容を比較する
commit インデックスに追加した変更をリポジトリに記録する
tag コミットにタグを付ける、削除する、一覧表示する
log コミット時のログを表示する
grep リポジトリで管理されているファイルをパターン検索する
branch ブランチを作成、削除、一覧表示する
checkout ワークツリーを異なるブランチに切り替える
merge 他のブランチやコミットの内容を現在のブランチに取り込む
rebase コミットを再適用する(ブランチの分岐点を変更したり、コミットの順番を入れ替えたりできる)
config 現在の設定を取得、変更する

git resetの主なオプション

短いオプション 長いオプション 意味
--mixed インデックスの登録を取り消す(デフォルトの動作、本文を参照
--mixed -N 「git add -N」による登録を取り消す(※2)
-p --patch パッチ形式でインデックスから取り除く。変更の一部だけ取り消したい場合に使用する(「git add -p」の逆の操作、※3)
--soft コミットだけを取り消す(ワークツリーとインデックスの状態を保持する)
--hard インデックスとワークツリーを指定したコミットの状態まで戻す。インデックスやワークツリーに変更があった場合は破棄する
--keep インデックスとワークツリーを指定したコミットの状態まで戻すが、インデックスやワークツリーに変更があった場合は処理を中止する(連載第408回を参照)
--merge インデックスとワークツリーを指定したコミットの状態まで戻す。インデックスに追加されていない更新がワークツリーにあった場合は処理を中止する(※4)
-q --quiet エラー以外のメッセージを表示しない

※2 「git add -N」は、後に追加する予定があることを記録するオプションだ。正式に追加するまで「git commit」の対象にはならないが、変更箇所を確認する「git diff」の対象になる。
※3 「-p」(--patch)は他のオプションと同時に指定できない。
※4 現在は、MERGE_HEADファイル(マージが中断されたり、競合するマージがあったりしたときなどに「.git」下に生成されるファイル)が存在するときに、処理を完了する際に使用する。「Error: You have not concluded your merge (MERGE_HEAD exists).」というメッセージが表示された際に「git reset --merge」を実行してリセットすることが多い。





インデックスへの登録を取り消す

 「git reset ファイル」で指定したファイルをインデックスから取り除きます(※5)。「git add ファイル」の逆の操作です。

※5 「git reset --mixed ファイル」と同じ動作となる。「--mixed」は「git reset」のデフォルトオプション。



 ファイルを指定しなかった場合は、全てのファイルをインデックスから取り除きます。

コマンド実行例

git reset ファイル

(指定したファイルをインデックスから取り除く)

git reset

(全てのファイルをインデックスから取り除く)


 画面1〜2では連載第396回で作成したローカルリポジトリとリモートリポジトリを使用しています。

 画面1では、まずワークツリーの状態を確認し、「hello.txt」と「index.html」を書き換えて、「git add .」(連載第384回)でインデックスに追加しました。

 この状態で「git reset index.html」を実行し、インデックスからファイルが取り除かれる様子を確認しています。

画面1 画面1 インデックスに追加したファイルを取り除いたところ


全てのファイルをインデックスから取り除く

 「git reset」のようにファイル名を指定しなかった場合、全てのファイルをインデックスから取り除きます(画面2)。

画面2 画面2 全てのファイルをインデックスから取り除いたところ


筆者紹介

西村 めぐみ(にしむら めぐみ)

元々はDOSユーザー。ソフトハウスに勤務し生産管理のパッケージソフトウェアの開発およびサポート業務を担当、その後ライターになる。著書に『図解でわかるLinux』『らぶらぶLinuxシリーズ』『[新版 zsh&bash対応] macOSコマンド入門』『Accessではじめるデータベース超入門[改訂2版]』など。地方自治体の在宅就業支援事業にてMicrosoft Officeの教材作成およびeラーニング指導を担当。会社等の"PCヘルパー"やピンポイント研修なども行っている。


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