阿部川 そこまでして学びたかったのですね。当時からエンジニアになろうとは考えていたのですか。
ベン氏 いいえ。当時コンピュータ関連の仕事は、それほどクール(カッコいい)ではありませんでした。1990年代の後半ですから「一部のオタク的な人」がコンピュータ関連の仕事に就くものだと思われていました。まだ子どもでしたから「もっと皆がうらやむような仕事に就きたい」と考えていました。別に料理が得意だったわけではないのにシェフに憧れていましたね。ただ面白さは感じていたのでPCについては学び続けていました。
阿部川 その後、大学に入学されます。「サザン・インスティチュート・オブ・テクノロジー」(SIT)ですね。
ベン氏 はい。16歳くらいから、大学でコンピュータを学びたいと考えるようになっていましたのでその方面の大学にしました。ちなみに通常は高校を卒業してから大学(注)ですが、飛び級で1年早く大学に進学できたんですよ。
※編集注:ニュージーランドの義務教育は6〜16歳となっている。そのため「小学1年生」といった呼び方ではなく「何年目」(1年生は「year1」)といった呼び方になる。小学校が終わると中学校ではなく高校に進み、その後大学に進学する。
専攻は情報コニュニケーションテクノロジーです。プログラミング、ネットワーク、ヒューマンコンピュータインターラクション、それからコミュニケーションなどコンピュータサイエンス全般の広い範囲について学びました。最終的に大学は3年いました。2年ほどSITで学んだ後はクライストチャーチにある「クライストチャーチ・インスティチュート・オブ・テクノロジー」(CIT)に転校しました。
阿部川 大学時代はPCの勉強に明け暮れた感じでしょうか。
ベン氏 明け暮れた、というほど熱心ではなかったですね。時には課題を出さないこともありましたし(笑)、勉強以外でやりたいことをもたくさんありましたから。とはいえ一番興味があるのはPCだったので多くの時間を使いました。
阿部川 やりたいことがたくさんあったということですが、インターンなどは経験されたのですか。
ベン氏 「学部内インターン」ならありました。日本に同様のものがあるか分からないのですが、ニュージーランドには「課題を出す、課題を解く、評価をする」を全て学生がやる「ブラックボード」(黒板)というシステムがあります。私はそのアドミニストレーター(管理人)として、大学のWebサイトを管理していました。システム全体の管理やオプティマイゼーションなどを、休日にもやっていました。
阿部川 その仕組みは実用的ですね。私は大学の教員でもあるので参考になります。
ベン氏 学生が仕事を覚えられる、とても良い仕組みだと思います。プログラムの勉強をしていて大切なことは「何が実用的か」「本当に価値があるか」を知ることだと思います。それを見つけたり感じたりできればモチベーションが上がりますし、もっと続けようという動機付けにもなりますよね。
阿部川 おっしゃる通りです。現在セキュリティのお仕事をされていますが、当時から興味があったのですか。
ベン氏 いやーそうでもなかったですね(笑)。Webサイトを見た人がどこからきているのか、というのはもちろん知りたいと思っていましたし、その情報を誰が持っているのかも気になってはいました。ただ私も、まだ若く世間知らずだったので私自身の情報すらどのように扱われているのか、あまり関心がなかった。パスワード一つ取っても、今から思えば無神経に扱っていたというのが正直なところです。
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