阿部川 入社が2019年ということでコロナ禍の影響も大きかったのではないかと思います。入社当初と現在では働き方はどのように変わりましたか。
ラジさん 2020年の2月からはフルリモートになりましたが、働き方はほとんど変わっていません。というのも、私が以前シンガポールで勤めていたスタートアップでは、創設者の一人がノルウェー在住で、打ち合わせなどは常に「Zoom」でした。その仕事の仕方に慣れていましたから、あまり不便は感じませんでした。
阿部川 他のメンバーはどうでしたか。すぐに順応できたのでしょうか。
ラジさん そうですね。非常に高い生産性を維持できていると思います。もちろん、「このやり方が苦手だ」という人もいるのは分かります。オフィスなら誰とでも自由に話ができますが、オンラインですと、話し掛けてもいい、相手にとって都合のいいタイミングを見つけにくいですからね。
阿部川 テレワークではコミュニケーションが課題になりがちです。ラジさんのチームメンバーには日本人もいらっしゃると思いますが、日本のエンジニアとのコミュニケーションで困ったことはないですか。
ラジさん そうですね。日本では例えば「できない」とは言わずに「ちょっと難しいですね」と物事を直接的に表現したがりませんよね。海外ではどんどん意見を前に押し出すスタイルが多いので、その違いに戸惑うことはありました。ただ、徐々にこの「カルチャーコミュニケーション」が大切だと思うようになりました。幸運にもメンバーは全員、非常に気さくで物事をしっかり理解する人たちなので、困ることはなく、むしろ私がそこから学ぶことの方が多いです。
阿部川 何事にも学びはありますよね。
「日本人は議論が苦手、でも米国人はしっかり主張する」みたいな話をよく聞きます。優劣をつけるような話になりがちですが、ラジさんの話を聞いていると「どういうスタイルで議論するのか」というより「相手が何を大切にしているのかという観点で互いの違いを認識すること」の方が重要なんじゃないかと思います。きっとそれが多様性の尊重にもつながるのではないのでしょうか。
阿部川 ラジさんがCTOとして大切にしていることは何でしょうか。
ラジさん 先にお話しした内容(前編:「ダイヤルアップ接続」で学んだタイムマネジメント)と重複するかもしれませんが、まずは良いエンジニアを雇用して、彼らが満足感を持ってずっと仕事をしてくれるような環境を作ることです。特に日本では、優秀なエンジニアを雇うことはなかなか難しいことですし、加えてスタートアップで働きたいエンジニアとなると、比較的少ないと思いますので。優秀なエンジニアをいつも探しています。
阿部川 ラジさんが考える「優秀なエンジニア」の“優秀さ”とはどういったことを指しますか。
ラジさん 顧客の視点から何が必要かを考えられることでしょうか。スタートアップで要求される優秀さと大企業で求められるものは違うとは思いますが、タスクが与えられて、それをこなすだけで今日の仕事は終わり、という考え方では駄目だと思います。
特にプロダクトの最初のバージョンでは、たくさんのネガティブなフィードバックが来ます。それをしっかり聞いて「じゃあどうする?」と考えられないといけません。もちろん、あまり深刻になるものいけません(笑)。後はスピードです。誰も使わない完璧な製品の完成に数カ月かけても意味がありません。完璧ではなくともいいので、ある程度動くものを早く作れる(というエンジニアは優秀だと思います)。
阿部川 優秀なエンジニア採用の他にCTOとして気を付けていることはありますか。
ラジさん 「スケーラブル」ということですね。将来にわたって、より多くの方々に当社のプロダクトを使ってもらうにはどうしたらいいか、ということを常に考えています。顧客の要望に耳を傾けたりプロダクトの英語バージョンを作って海外でも使いやすくしたりといったように。
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