リスキリング? 本当に大切なのって、そこでしたっけ?仕事が「つまんない」ままでいいの?(96)(2/2 ページ)

» 2022年12月14日 05時00分 公開
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リスキリングの前に、大切なこと

 先日、こんなことがありました。

 ボクは組織づくりやコミュニケーションの企業研修や講演を行っていて、先日ある企業から講演の依頼がありました。見積書のひな型が郵送で送られてきて「記入、押印の上、郵送で送り返してほしい」とのリクエストです。

 郵送でのコミュニケーションは、書類の不備があった場合に何度もやりとりするのが大変です。通信費もかかります。そこで「近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れを受けて、PDFをメールでお送りするのではダメでしょうか?」と尋ねてみました。すると、担当者からの回答は「一担当としては、そのようにできるべきと考えてはおりますが、現時点ではそれがかなっておりません」でした。

 書類をPDFにするのはそれほど難しいことではありません。でも、その簡単なスキルでさえ、組織によっては生かすことすらできない悲しい現実……。「スキルも大事だけれど、それを生かせるか否かは、組織次第なんだよな」なんて、つい思ってしまいました。

 もっとも、組織の問題とリスキリングは分けて考えた方がいいのかもしれません。でももし、企業の中でリスキリングというなら、社員が学んだスキルを存分に生かせるように、組織文化も変えていく必要があるのでしょう。

 また、個人としても「うちはどうせ……」にとどまらず、「課題を発信する」「周囲を巻き込む」など、学んだスキルを組織で生かすための行動も必要そうです。

リスキリングの次に、大切なこと

 また、本当の意味で学んだスキルを仕事に生かすためには、「仕事で生かす努力」も必要ではないかと思います。

 ボクには以前、「知識は身に付けたけれど、飯は食えない」時代がありました。サラリーマンを辞めて個人事業主になったとき、「とにかく、仕事を作らないと! そのためには、資格か!」と安直に思って、ITコンサルタントの資格を取りました。

 でも、資格を取ったからといって、全然仕事にはならなくて。それはそうですよね。知識はあっても、実務経験はほとんどないわけですし。そもそも「竹内さんは□□ができる」と、名前が知られていませんし、「竹内さんと仕事をすると、めっちゃいいんですよね」といった評判があるわけでもありません。

 つまるところ、仕事ってスキルだけで得られるものではないので、時代に合わせて自分の流動性を高めていくなら、実績とか、人柄とか、頼まれたら逃げずにやり切るところとか、スキルと同時に、スキル以外のところも高めていく必要があるんじゃないかな、と思います。そういったところを、人は信頼してくださると思うので。

いまの時代「本当に必要なこと」

 時代の流れで仕事のやり方がガラッと変わってキャリアをシフトしていくようないまの時代を生きるためには、単に「知識を学ぶ」とか「教えてもらう」というよりも、自分から「学ぶ」とか、「気付いていく」とか、「発見する」みたいな、自発的な力も大切だと思うんですよね。

 そういうのって、スキルとは違った力の場合が多いし、「学ぼう!」と思って学べるものではないかもしれないけれど、それでも学んだスキルを生かすためには、「こういったことがあるといいんじゃないかな?」とは思うわけです。

  • 課題を「課題だ」と認識する力
  • 認識した課題感やモヤモヤ感を言語化し、発信する力
  • 課題だと思うことを、少しでもいいから改善する力
  • 何かを「やろう!」としたときに、協力してくれる友人や知人
  • 実現する、しないにかかわらず、やってみる、やり続ける力

 こういった力、あるいはつながりがあって初めて「生きたスキル」なると思うんですよね。

 いろいろな人と話したり、社外に出たりすると、「これが当たり前」だと思っていた価値観が揺らいで「気付き」が起きる。そして、思ったり感じたりしたことを「言語化する」。こういったことなら、チャレンジできるかもしれない。

 本当の意味で、スキルを生かし、時代に合わせて職業の流動性を高めていくためには、こういった努力も必要なのではないかな、とは思います。

 努力……というより、本当は、こういった学びが楽しめるといいですよね。いろいろな人と会ったり、会話をしたりすると、新たな気付きや発見がある。そこに、新たな学びがある。そこから、「○○をやってみたい」という前向きな動機や、「○○をしなきゃ」「変えなきゃ」という課題感が起きる。

 その結果、新たな学びの必要性を感じ、新たなスキルを身に付けていく。そして、会社や社会に適用していく……そういった循環が起きると、本当はいいんだろうな。

 もっとも、そこまでは求め過ぎかもしれないので、まずは知識を付けるところからでいいような気もします。

 でも、少なからず「学んだだけ」「知識が広がっただけ」「スキルが身に付いただけ」にならないようにしたいなと思いますし、「人がいうから」とか「時代が変わっているから」という外的な動機だけではなく、自分なりの価値観、自分なりの動機付け、自分なりの学びたい意欲によって、学びが深まっていくといいなと思いますし、そういったところに、本当の「生きたスキル」が宿ると思うので、そんな学び方ができるといいですね。

 とにかく、はやっているからとか、時代がホニャララとか、そういうことは関係なく、ボクらは学び続けましょう!

筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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