リサーチャー、サイエンティスト、英語教師……多才な米国のエンジニア、本職は「地下足袋職人」?Go AbekawaのGo Global!〜Aaron Bramson(前)(3/4 ページ)

» 2023年01月05日 05時00分 公開

初めての来日は極寒の北海道

阿部川 来日されたのは幾つのときですか。

アーロンさん 21歳のときでした。英語学校に就職し、最初に派遣されたのはなんと北海道の帯広市でした。常夏のフロリダから一直線に極寒の北海道です(笑)。

 その半年後に派遣されたのが、東京の表参道でした。ご承知の通り都会です。そこで多くの知り合いができました。ファッション業界で働く生徒やタレントなど、多くの人に出会いました。多くの仕事のオファーがありました。学校で英語を教えることもありましたし、フリーランebデザイナーとして銀行で働いたこともあります。


編集中村 編集 中村

 日本語を覚えるために来日されるというのは珍しくない動機ですが、英語教師として来日されるのは珍しいのではないでしょうか。最近、Go Globalでインタビューさせていただいた中では、日本語学校で覚える、アルバイトや派遣など仕事先で覚えるといった人が多かったと思います。なんというか怖いもの知らずという感じがします。すごいバイタリティー……。


 英語を教える仕事に加えて、Webデザインの仕事もやるようになりました。ある企業が英語でのイントラネットのサイトを構築するために「『Adobe Photoshop』のスキルがあって、日本語サイトを英語のサイトにしっかり翻訳できる人」を探していたので、手伝いました。

 まだ21歳でしたから、何でも面白くてやりました。もちろん大学院への進学も忘れてはいませんでしたよ。

阿部川 それほどお仕事を楽しんでいても、そのまま日本で働き続けたいと思っていたわけではないのですよね。

アーロンさん そうですね。まずは大学院に進みたいと考えていて、その先はあまり考えていませんでした。修士、博士号と進めば、普通は5年ぐらいかかりますし、私の専攻は幾つかの分野にまたがっているので、それ以上の期間がかかります。1年は浪人しようと決めて日本に来て、日本のさまざまなものを学び、「まあ、経験としていいか」ぐらいに思っていました。ですから1年後は米国に戻って、大学院生として生活し始めました。

地下足袋と運命(?)の出会い

アーロンさん 大学院生として学びつつ、地下足袋を販売する会社を立ち上げました。そう、地下足袋です(と言って、足を上げて自分が履いている地下足袋をZoom越しに見せてくれる)。私は社長であり、ただ1人の社員です(笑)。

阿部川 (笑)。その会社は今も経営しているのですね。

アーロンさん はい、2004年に設立しましたので、2022年で18年になります。

阿部川 どうして地下足袋に注目されたのでしょうか。

アーロンさん 理由はシンプルです。地下足袋は世界一のシューズだからです。

 既存の規格の靴だと、靴擦れしたり踵(かかと)が痛くなったり筋肉痛になったりかぶれたり蒸れたり……本当に大変です。でも地下足袋にすれば、これらの問題は雲散霧消します。日本の外反母趾(ぼし)率は約3割(アーロンさん調べ)と世界と比べても非常に高い。これを患うとジョギングもエクササイズもできなくなります。

 足は体の全ての器官とつながっていますから、足が疲れると体全体も疲れます。1日歩いていると、足ではなく体が疲れますよね。それは靴のせいだと考えています。一方で、常に地下足袋を履いている大工さんたちは外反母趾にならないと聞きます。もちろん地下足袋だけが選択肢ではありませんが、少なくとも足に負担がかからない。健康に良いし、地下足袋はファッショナブルで、クールです。

画像 現在のアーロンさん

阿部川 日本の伝統的な履物のことと褒めていただいて、とてもうれしいです。会社の経営は1人でやっているのです。

アーロンさん はい、そうです。当初は日本での経営は他の人に任せ、私は米国で日本のメーカーとコンタクトするつもりでした。しかしこの方法はあまりうまくいきませんでした。そこで「日本から地下足袋を輸入して米国で販売する」というビジネスに切り替えました。そして、契約や新しいデザインの企画などの業務のため、なるべく頻繁に日本に戻って来るようにしました。例えば10日間日本に戻って仕事をして、また大学に戻る、などを繰り返しました。夏休みなどの間は、3カ月くらい日本で仕事をしました。

 ですから、学部生から大学院生になる間の1年に加え、大学院生になってからも全体で見るとさらに1年、合計2年ぐらいは日本にいた計算になります。そんな暮らしをするうちに「日本で暮らすのも良いなあ」と思えるようになってきました。

 そのころは、あるときはシンガポールの大学でリサーチの仕事、別のときには日本の理化学研究所で仕事、またあるときはベルギーの大学、バルセロナの大学でリサーチしたりワークショップの手伝いをしたりなど世界を飛び回っていたわけですが、「やはり東京に住むのが一番だなあ」と思うようになりました。もしかしたら日本というわけではなく、東京が一番ということかもしれません。

阿部川 東京で良いと思うのはどんなところですか。

アーロンさん 車を使わなくても移動できることですかね。米国では毎日車に乗るのが当たり前ですが、私は自転車の方が好きなんです。東京は全てが集中していますから、自転車で移動すればいいし電車も使えます。とてもクリーンなライフスタイルだと思います。20分も走れば多くの美術館を訪れられるし、スーパーマーケットもたくさんあるし、何百というカフェテリアにも巡り会えます。

阿部川 なるほど、自転車と地下足袋ですね。


編集中村 編集 中村

 田舎出身の私からすれば、お酒を飲んでも交通機関で帰れるのが東京のいいところです。田舎だと飲んだら代行(運転代行)を頼まないと駄目なんです(まだあるのかな代行サービス)。


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