グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はソフトウェアエンジニアとしてグローバルで活躍するShoaib Shaikh(ショエブ・シェーク)さんにお話を伺う。けがをするのは日常茶飯事、外遊びが大好きだったショエブさんが勉強の“楽しさ”に目覚めたきっかけとは。
国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回は、ソフトウェアエンジニアであるShoaib Shaikh(ショエブ・シェーク)さんにお話を伺った。自然豊かな環境で生まれ、素晴らしい先生とも出会ったショエブさんは、なぜソフトウェアエンジニアの道に進んだのか。聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
阿部川 “Go”久広(以降、阿部川) お生まれはインドのマハラシュトラ州ですね。
Shoaib Shaikh(ショエブ・シェーク、以降、ショエブさん) はい。その中のイガットプリで生まれ、育ちました。インドには28の州(日本でいえば県)があり、面積が一番大きい州はウッタラプラデッシュ州ですが、経済的にはマハラシュトラ州が最も大きい州だと思います。なにせ首都(ムンバイ)があるので。
阿部川 経済や産業の中心なのですね。イガットプリはどういった環境なのですか。
ショエブさん インドの地図を見ていただくと分かるのですが、西部は日本の山岳地帯のように峰々が連なっています。その山岳を「サヒャドリ(Sahyadri)」、山岳の頂上付近を「カルスバイ(Kalsubai)」と言います。イガットプリはカルスバイの近くです。イガットプリは避暑地になっていて、雨期(モンスーン)にはたくさん雨が降ります。全ての景色がとても美しい緑色に染まるので、それを見に多くの旅行者が訪れます。
モンスーンは、以前は6月から10月くらいだったのですが現在は地球温暖化の影響なのか、5月に降り出して11月まで降り続くこともあります。雨が多いので、多くの滝や湖、ダムなどで水があふれてしまいます
阿部川 えっ、それがダムですか。まるで湖ですね。
ショエブさん 普段はもっと水が少ないのですが、モンスーンの時期はこんな風になります。水の中に島のように山が見えていると思うのですが、普段は逆で、湖を山が囲んでいるイメージです。子どものころは学校のショートトリップ(日本でいう遠足?)でそういったダムや湖にハイキングしたんですよ。
阿部川 お話しぶりからするとそういう外出がお好きだったのですね。活動的な子ども時代だったのでしょうか。
ショエブさん はい。いつも家の外にいて、そこかしこの木に登って遊び、木から落ちて足をくじくなんてこともよくやっていました。両親は私の足や手の傷を見て「ああ、また外で遊んでいたんだな」と理解します(笑)。
阿部川 元気でなによりです(笑)。勉強はどうでしたか。
ショエブさん イガットプリでは、教育を受けられることは当たり前ではありません。私の場合は両親が頑張って学校に行かせてくれたこともあり、一生懸命勉強しました。成績も良くて「できる方」の生徒だったと思います。特に数学が好きでしたし、得意でもありました。先生にも恵まれました。どの学年でも、良い先生に巡り合えたと思います。
阿部川 インドの教育課程はどのようになっていますか。日本と同じように「6年3年3年」といった感じでしょうか。
ショエブさん 少し違います。まず幼稚園に“ジュニア”と“シニア”があって、通算2年通います。次の“小学校”が4年間。その次が“第2学校”というものがあって、それが5年間です。それぞれの学年は小学校の続きとして、5年生、6年生、7年生、8年生、9年生、10年生と呼びます。次は“上級第2学校”に進んで、11年生、12年生となります。13年生からは“学部生”、要するに大学生となり、科目を選択できるようになります。ちなみにエンジニアリングを選択する場合は、上級第2学校で2年学んだ後、エンジニアリングを4年、合計で16年生まで学ぶ必要があります。
阿部川 なるほど、勉強は大変でしたか。
ショエブさん 勉強が、というよりは言葉が大変でした。というもの、私の母国語はヒンディー語ですが、小学校の公用語はマラーティー語でした。5歳とか6歳のときに、全ての教科を母国語以外の言葉で学ぶのは簡単なことではありませんでした。幸いにも少しずつ言葉が分かるようになりましたけれど。今思うと、子どものころに複数の違う言葉を学んだことは、その後の学習にも良い影響をもたらしたと思います。
ただ、小学校のころはそれほど真剣に勉強には打ち込みませんでした。普通にやれと言われたことをやっていた程度です。恐らく教育がどれほど大切か分かっていなかったからだと思います。
阿部川 転機になったのは良い先生に出会えたことでしょうか。
ショエブさん そうですね。第2学校で素晴らしい先生に出会たことは非常にラッキーだったと思います。その先生は単に教科を教えるだけではなく、「勉強することが、あなた自身や家族にとって素晴らしい結果をもたらすのだ」と話してくれて、学ぶことへのきっかけを私たちの心に与えてくれました。この先生のおかげで、第2学校の当たりから真面目に勉強するようになりました。おかげで第2学校のテストでは、地域で2番の成績を収めました。
これまでの学校生活を振り返ると「勉強ができるありがたさ」ってあまり感じられていなかったと思います。特に小学生なんて学校は友達と会うためか給食を食べるための場所でしょう(私の場合はそうだった)。今なら勉強は自分の糧になる、ということは理解できますが、小学生のときはちょっと難しい気がします。良い先生に出会えて良かったですし、それをちゃんと受け止めて勉強したショエブさんも立派だと思います。
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