Microsoftは、クラウドベースの開発者向け仮想ワークステーション「Microsoft Dev Box」の一般提供を開始しました。Microsoft Dev Boxは、Microsoft Intuneで管理されるWindows 365クラウドPCの技術に基づいたサービスです。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
「Microsoft Dev Box」は、ハイパフォーマンス構成済みで、すぐにコーディングを開始可能なクラウドベースの開発者向け仮想ワークスレーションです。仮想ワークステーションは「Dev Box」や「開発ボックス」とも呼ばれ、開発チームの管理者やリーダーが開発ボックスの仕様とネットワーク接続を定義した「開発ボックスプール」を設定することで、開発者は「Microsoft開発者ポータル」(https://devportal.microsoft.com/)から開発ボックスをセルフサービスで作成し、アクセスすることができます(画面1)。
Microsoft Dev Boxは、2022年8月からパブリックプレビューが開始され、2023年7月10日(米国時間)に一般提供が開始されました。
Microsoftは2016年から「Azure DevTest Labs」という、開発とテストの環境を素早くプロビジョニングするための無料のサービスを提供しています(画面2)。
Azure DevTest Labsのサービス自体は無料ですが、これはAzure仮想マシン(Azure VM)をホスティングするためのAzure IaaS(Infrastructure as a Service)上に、Windows、Windows Server、Linuxの仮想マシンをプロビジョニングして実行できるもので、Azure VMと同様にMicrosoft Azureのリソース使用量に応じて従量課金されます。
「Visual Studio」サブスクライバーの場合は、通常、クラウド上で実行することが許可されない「Windows 7 Enterprise」「Windows 8.1 Enterprise」「Windows 10 Enterprise」を含む「Windows Client」イメージをデプロイしてテストに使用できます。
Azure DevTest Labsは、開発やテストの目的で、一時的にさまざまなテスト環境を仮想マシンで準備するシナリオには向いていますが、フルタイムのアプリ開発では使いにくい部分がありました。
新しいMicrosoft Dev Boxは、フルタイムのアプリ開発から、一時的なハイパフォーマンスな開発/テスト環境など、さまざまな利用シナリオに柔軟に、コストを最適化できるサービスとして登場しました。
Microsoft Dev Boxは「Microsoft Intune」で管理される「Windows 365クラウドPC」(前回紹介した「Windows 365 Enterprise」や「Windows 365 Frontline)と同じ、PaaS(Platform as a Service)であるクラウドベースの仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)に基づいており、「Microsoft開発者ポータル」のスタイルや、開発ボックスに対する操作、リモートデスクトップ接続の方法は、「Windows 365ポータル」(https://windows365.microsoft.com/)とよく似てたものになっています。
ライセンスについても注意が必要で、Microsoft Dev Boxを利用するには、Windows 365 EnterpriseやWindows 365 Frontlineと同様に、Windows 11 EnterpriseまたはWindows 10 Enterprise、Microsoft Intune、およびAzure Active Directory(Azure AD*1) P1のライセンスが必要です。
(*1)Microsoftは2023年7月11日(米国時間)、「Azure Active Directory(Azure AD)」の名称を「Microsoft Entra ID」に変更することを発表しました。この名称変更は、2023年7月11日から30日間の通知期間を経て、Microsoftのエクスペリエンス全体に反映されはじめ、SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理単位)とサービスプランの表示名は2023年10月1日に変更されます。ほとんどの作業は、2023年末までに完了する予定です。
これらのライセンスは単独で購入できる他、「Microsoft 365 F3」「Microsoft 365 E3」「Microsoft 365 E5」「Microsoft 365 A3」「Microsoft 365 A5」「Microsoft 365 Business Premium」「Microsoft 365 Education Student Use Benefit subscriptions」などに含まれます。
Microsoft Dev Boxの価格は、開発ボックスのインスタンスごとの月額および時間単位の価格オプションで構成され、フルタイムの利用と、一時的な利用の両方に柔軟に対応できます。インスタンスのサイズに応じて最大月額料金が設定され、それとは別に時間単位コンピューティング料金と月単位のストレージ料金が設定されています(画面3)。
短時間の利用の場合、時間単位のコンピューティング料金とストレージ料金が課金され、それらの合計が最大月額料金を超える場合は、月額固定料金が自動的に適用されます。これにより、短時間の利用から、フルタイムの利用まで、極端な課金が発生するのを心配することなく、予測可能なコストで利用できるようになっています。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.