【Azure】AlmaLinuxの仮想マシン(VM)を作成する際の注意点(CentOS7代替)Tech TIPS

Red Hat Enterprise Linux 7の互換OSである「CentOS Linux 7」のサポートが2024年6月末に終了する。その移行先として有力な候補の1つである「AlmaLinux」を、Azureの仮想マシンにインストール(デプロイ)する際の注意点を説明する。

» 2023年08月03日 05時00分 公開
[島田広道デジタルアドバンテージ]

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連載目次

AlmaLinuxをAzureのVMにデプロイする際の注意点

対象:Azure Virtual Machine(仮想マシン)、AlmaLinux、Bicep


間もなくサポートが終わるCentOS Linux 7の移行先は?

 無償で利用できるLinuxサーバのディストリビューションとしてよく使われてきた「CentOS Linux 7」(以下、「CentOS 7」)が、2024年6月30日をもってサポートを終了する。その後はセキュリティパッチが提供されないため、安全に運用できなくなってしまう。

 しかし、次バージョンの「CentOS Linux 8」はすでにサポートが終了している。また、サポートが続いている「CentOS Stream」は、「Red Hat Enterprise Linux」(以下、「RHEL」)より早く新機能を取り込む先進的な方針を掲げており、CentOS 7とは方向性が異なる。そのため、CentOS以外で無償利用が可能なRHEL互換OSを探している人は多いのではないだろうか。

 その候補の1つが「AlmaLinux」である。CloudLinux社など複数企業からの支援を受けつつ、コミュニティー主体で開発されてきたAlmaLinuxは、これまでRHEL 8/9の各バージョンのリリースから間を空けずに同一バージョンがリリースされた他、クラウドサービス向けのOSイメージも提供されている。CentOS Linuxの有力な代替候補として挙げられることも多い。

 本Tech TIPSでは、このAlmaLinuxをAzureの仮想マシン(VM)としてデプロイする際の注意点を説明したい。

■執筆時の各種ツール/APIのバージョン

  • Azure CLI: Ver. 2.50.0
  • Bicep CLI: Ver. 0.19.5
  • Bicepでのデプロイ時のAPIバージョン: 2022-11-01(仮想マシン生成)

Red HatがRHELのソースコード公開方針を変更。AlmaLinuxへの影響は?

 Red Hatは2023年6月、RHELに含まれるOSS(オープンソースソフトウェア)のソースコード公開を、CentOS Streamのリポジトリに限定することを発表した(詳細はRed Hatのブログ記事「Red Hat’s commitment to open source: A response to the git.centos.org changes」[英語]参照)。

 従来は、RHEL自体に含まれるOSSソースコードが公開されていて、そこからRHELの完全互換OS(クローンOS)を作ることが可能だった。しかし今後は、その公開対象がRHELとは似て非なるCentOS Streamに変わるため、RHELの完全互換OSを実現するのが非常に困難になることが予想される。

このRed Hatの方針変更に対し、AlmaLinuxを運営する「AlmaLinux OS Foundation」は2023年7月に、従来の「1対1の互換性」からABI(アプリケーションバイナリインタフェース)の互換性を目指す方針に変えることを表明した(詳細は同団体のブログ記事「The Future of AlmaLinux is Bright」[英語]参照)。

AlmaLinux OS Foundationのサイトに掲載された今後のAlmaLinuxの方針に関するブログ記事 AlmaLinux OS Foundationのサイトに掲載された今後のAlmaLinuxの方針に関するブログ記事

 この方針変更後でも、RHELと互換性のあるアプリケーションは引き続きAlmaLinuxでも実行できる一方で、例えばRHELにあるバグがAlmaLinuxにはない、あるいはRHELにないバグがAlmaLinuxに生じる可能性がある、とのことだ。

 この発表を読む限り、RHEL対応アプリケーションをAlmaLinuxで実行するにはソースコードからの再コンパイルが必須、といった手間がユーザー側で生じることはそうそうないように思える。ただ、実際にCentOS 7からの移行先システムの構築/運用にどう影響するかは、早めにAlmaLinuxの試用を開始し、様子を見ていく必要があるのではないだろうか。


Azureで「多数の」AlmaLinuxのOSイメージから1つを選ぶには

 AzureでAlmaLinuxのVMをデプロイする場合、通常はAzure MarketplaceにあるAlmaLinuxのOSイメージを利用することになる。

 以下の画面はAzure Portalの「Marketplace」で「almalinux」という名前を検索した結果である。執筆時点では50個ほどのAlmaLinuxベースのOSイメージが見つかった。

Azure Marketplaceで「almalinux」という名前で探すと見つかるOSイメージ Azure Marketplaceで「almalinux」という名前で探すと見つかるOSイメージ

 このうちの大部分は、サードパーティー企業が提供する有償のOSイメージである(VMの使用料とは別に課金がかかる)。試用するなら、まずは運営元であるAlmaLinux OS Foundationが提供する公式かつ無償のOSイメージから始めるのがよい。それには、[発行元名]に「almalinux」と指定すれば絞り込める。

「AlmaLinux OS Foundation」提供のAlmaLinuxのOSイメージ 「AlmaLinux OS Foundation」提供のAlmaLinuxのOSイメージ

 執筆時点でAlmaLinux OS Foundationは4種類のOSイメージを提供している(それぞれ複数のバリエーションがある)。

  • AlmaLinux - Official: x64アーキテクチャ向け
  • AlmaLinux OS (x86_64/AMD64): x64アーキテクチャ向け
  • AlmaLinux OS (AArch64/ARM64): ARM64アーキテクチャ向け
  • AlmaLinux HPC: HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向け

 思わず「Official」と入っている「AlmaLinux - Official」を選びたくなるところだ。しかし、執筆時に調べた限りでは、以下のように少々面倒な事前設定や制限がある。

  • 事前に、対象のOSイメージ利用を明示的に「有効化」する設定が必要
  • リソーステンプレートからデプロイする場合、VMのリソース定義に「plan」(購入プラン)という設定項目の追加が必要
  • セキュリティ強化機能の「トラステッド起動」に非対応

 x64アーキテクチャが選択できる場合、上記の制約がない「AlmaLinux OS (x86_64/AMD64)」を選ぶ方がよいだろう。

AzureリソーステンプレートでAlmaLinuxのVMをデプロイする際のポイント

 以上を踏まえつつ、AzureでAlmaLinux公式のOSイメージを使ってVMをデプロイするためのリソーステンプレート(Bicep)の例を以下に記す。

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