CI/CDベンダーのHarness、オープンソースのソースコード共有プラットフォーム「Gitness」を立ち上げ一方で「Gitnessを選ぶ理由はないのでは」という声も……

CI/CDパイプラインのベンダーであるHarnessはオープンソースのコード共有&CI/CDプラットフォーム「Gitness」を立ち上げた。同社が買収した「Drone CI」の後継プロジェクトであり、Drone CIは今後数カ月以内にGitnessに統合予定だという。

» 2023年10月24日 08時00分 公開
[Beth PariseauTechTarget]

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 2023年9月21日(米国時間)、Harnessはオープンソースのコード共有プラットフォーム「Gitness」を発表した。Gitnessは同社が2020年に買収したオープンソースプロジェクト「Drone CI」の後継プロジェクトであり、Gitバージョン管理とCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインのコードが含まれている。今後数カ月以内に、Drone CIをGitnessプロジェクトに統合する予定だという。

 Harnessは、ソースコードの共有、管理プラットフォームとして著名なMicrosoftの「GitHub」や、GitLab社が提供する「GitLab」と競い合うことになる。どちらも10年以上前からビジネスを行っており、GitHubは2018年にMicrosoftに買収されて以降もエンタープライズIT領域で勢いを増し、同じく2018年には「GitHub Actions」によるCI/CD機能も追加されている。

 こうした背景があっても、Harnessは、DevOpsを組み込み、オープンソースコミュニティーとの協調をうたうGitnessが市場に食い込む余地があると考えている。HarnessのCEO兼共同創設者のジョティ・バンサル氏は米TechTarget編集部宛てのメールに「質の高いオープンソースプラットフォームが不足している。既存のソリューションの多くは有償かつ非常に高価で、機能が多すぎる。そして、他の無料ソリューションには本質的な機能が欠けている」と記している。

 GitnessのWebサイトによると、GitnessはDrone CIのPipeline as Codeの機能と組み込みパイプラインテンプレートを受け継ぐ予定だという。Drone CIユーザーは、切り替えの手間が減ると、バンサル氏は述べている。

企業とオープンソースを巡る緊張が高まる中、「Gitnessを選ぶ理由はないのでは」という声も

 一方、「Gitea」や「Forgejo」などのプロジェクトを引き合いに、Gitnessに異議を唱える開発者もいる。米カリフォルニア州コンコードでフリーランスの技術コンサルタントとして活動するロブ・ザズウェタ氏は「既にDrone CIに取り組んでいて、GitHubの代わりを探しているなら、Gitnessは適しているだろう。だがそうでないなら、Forgejoのような間違いなく優れたコミュニティーソリューションが存在するのに、ユーザーのニーズに耳を傾ける可能性が低い民間企業が管理、監督する製品を選ぶ理由があるだろうか」と疑問視している。

 Forgejoは2022年10月にGiteaプロジェクトを運営する営利企業のGitea Limitedが設立されたことへの対抗手段として存在するプロジェクトだ。これは2022年にビジネスとオープンソースの精神の間で高まった緊張の一例であり、最近では「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」のソースコード利用方法の変更や、HashiCorpのライセンス移行なども物議を醸している。

 「企業によるオープンソースの取り組みは予断を許さない状況にある。ソフトウェアの無料配布が優れたビジネスモデルだと見なされることはほとんどなく、オープンソースの大義に取り組むというよりも、マーケティング活動を目的にしていることが多い」(ザズウェタ氏)

 Harnessの広報担当者によると、数百人もの貢献者が参加するDrone CIプロジェクトを買収以降、Drone CIをApache License 2.0の下で利用可能な状態を維持しているという。Drone CIプロジェクトの「Drone Enterprise」は、年間総収益が100万ドルを超える企業がソースコードを商業利用する場合は、その期間をトライアル期間に限定するライセンスを使用しており、オープンソースのGitnessはHarness独自の製品「Harness Code Repository」を基盤とする予定だ。Harness Code Repositoryは「Open Policy Agent」を使用して、ロールベースのアクセス制御とポリシーガバナンスを追加する。

 Forrester Researchでアナリストとして働くクリストファー・コンド氏は「HarnessはDrone CIを買収して以来、オープンソースコミュニティーとは健全な関係を築いてきた」と述べている。だが、そのコミュニティーとの関わりは、他のDevOpsプラットフォームベンダーほど広範囲には及んでいない。

 2023年5月に行われた統合ソフトウェアデリバリープラットフォームに関する調査報告書によると、コミュニティーとの関わりについて、競争相手のGitLabとCloudBeesがHarnessよりも上位にランクインしている。GitLabとCloudBeesの2社が「Leaders」、Harness、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Atlassian、Codefreshは「Strong Performers」だった。

 「最近の『Forrester Wave』で調査した項目の1つがオープンソースコミュニティーへの貢献とユーザーコミュニティーの規模だった。Harnessのコミュニティーは他のベンダーのコミュニティーと比べて小規模だったため、貢献度が低くなっている。だが、それは同社が努力していないということを意味するものではない」(コンド氏)

 オープンソースに基づくかどうかによらず、DevOpsプラットフォーム市場は競争が激化しており、ベンダー各社はDevOpsプラットフォームで利益を得ようと躍起になっているとコンド氏は語る。

 Gitnessがオープンソースを強調する場合、オープンソースの競合が存在することから、最終的にはビジネスの点でHarnessを悩ませる可能性がある。そう話すのは、米コロラド州ボルダーを拠点とする技術顧問およびコンサルタント企業Sageableの創設者でグローバル最高技術責任者(CTO)を務めるアンディ・マン氏だ。

 「HashiCorpの『Terraform』やオランダのElasticの『Elastic』などと同様、将来ビジネスの点で問題が起きると予想できる。オープンソースのアプローチには、イノベーションの速度、商業的競争、統合と廃止、貢献量、品質管理など多くの問題が含まれる。将来はコントロールできない。Harnessは最終的には幾つか問題に直面することになるだろう」(マン氏)

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