MicrosoftはWindows 11 バージョン22H2向け2023年9月の「オプションの更新プログラム」で「Windows in Copilot」を含む多数の新機能を追加しました。追加された新機能の多くは無効化されており、「制御された機能ロールアウト」技術で段階的に有効化されます。その段階的なロールアウトをさまざまなケースで検証していたとき、有効になるはずの「Copilot」が見当たらないことに気付きました。その理由は単純なものだったのですが、それが分かるまで何度も新規インストールとWindows Updateを繰り返してしまいました。
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「制御された機能ロールアウト」(Controlled Feature Rollout、CFR)による段階的なロールアウト(有効化)では、「品質更新プログラム」(Quality Update)であるオプションの更新プログラム(Cリリース)で追加された新機能の多くが、既定の状態では無効になっており、翌月以降のセキュリティ更新プログラム(Bリリース)で広く有効化されます。
Windows Updateの「利用可能になったら最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチをオンにしてWindows Updateを実行すると、「Windows構成更新プログラム」が検出、インストールされ、新機能を先行的に有効化できます。
2023年9月に追加された新機能は、翌10月のセキュリティ更新プログラムでは有効化されませんでした。おそらく11月のセキュリティ更新プログラムのタイミングで広く有効化されることになるでしょう。
「Windows 11」のバージョン22H2以降のCFRによる段階的なロールアウトについては、以下の記事もご覧ください。
Microsoftが「Windows in Copilot(プレビュー)」をはじめとする新機能のロールアウトを2023年9月後半に発表した直後、これを「Windows 11 バージョン23H2のリリース」と誤報したメディアが幾つかありました。
その後、「大幅アップデート」や「大規模アップデート」に訂正されたりしていますが、これらの表現はこれまでWindowsの新バージョンを提供する「機能更新プログラム」(Feature Update)に対して使用されていたものです。また、「バージョン23H2の新機能を先行公開」という表現も見掛けましたが、非推奨になった機能が削除されることはあっても、前バージョンの機能が次のバージョンにも搭載されるのは当然のことで、今もなお多くの読者を混乱させていると思います。
「Windows 10」以降、Windowsは機能更新プログラムで新バージョンにアップグレードされ、品質更新プログラムでは小規模な新機能の追加や仕様変更が行われることもありましたが、セキュリティ修正とバグ修正が主体でした。
MicrosoftはWindows 11 バージョン22H2以降、品質更新プログラムを使用して、より短いサイクルで新機能をロールアウトする(「Moment Update」とも呼ばれます)方針に変更しました。今回はその4回目のロールアウト(2023年9月のCリリースで追加、11月以降のBリリースで広く有効化)であり、CFRによるロールアウトは3回目(2023年5月のCリリースで追加、7月のBリリースで広く有効化)からです。
機能更新プログラムで新バージョンへのアップグレードだけでなく、新機能が追加される方針は今後も変わりはないでしょう。ただし、Windows 11 バージョン23H2については、Windows 11 バージョン22H2と同じコードベース(NI_RELEASE)の小規模な更新であり、「有効化パッケージ」(Enablement KB、EKB)によってバージョン(ビルド)が切り替えられることになります。
今回、Windows 11 バージョン22H2ユーザーに限っていえば、サポート期間(Home/Proエディションはリリース後24カ月、Enterprise/Educationエディションはリリース後36カ月)をリセットするのがWindows 11バージョン23H2の機能更新プログラムの主な役割になります。
そして、有効化パッケージではない将来の機能更新プログラムでは、それがバージョン「24H2」なのか「25H2」なのか、さらにその先なのか分かりませんが、OSのコア部分の大幅な変更と合わせて、新機能が追加されることになるでしょう。
前掲の記事で説明している企業向けのオプションを含め、CFRによる段階的なロールアウトを検証するために、筆者はWindows 11 Pro バージョン22H2を実行するメインのPCと、Windows 11 Enterprise バージョン22H2がインストールされたHyper-V仮想マシンの2台で、いち早く新機能を有効化しました。
さらに、さまざまなケースを検証するために、Hyper-V仮想マシンにWindows 11 Enterprise Evaluation バージョン22H2(90日無料評価版)を新規インストールして、ロールアウトの各段階のチェックポイントを作成しながら、検証を進めました。この仮想マシンは検証途中であり、新機能の一般提供を確認するまで維持する予定です。
その検証過程で、Evaluationエディションを実行する仮想マシンで「Windows構成更新プログラム」までインストールし(画面1)、再起動したところ、タスクバー上に追加されるはずの「Copilot(プレビュー)」のアイコンがないことに気付きました。「設定」の中を検索してみても見つかりません(画面2)。利用可能な環境では、「個人用設定」→「タスクバー」の「タスクバー項目」に「Copilot(プレビュー)」のオン/オフトグルスイッチが見つかります)。
何度か新規インストールを繰り返しましたが、全く状況は変わりません。最初、Evaluationエディションが新機能の先行的な有効化に対応していないのではと思いましたが、Copilot(プレビュー)以外の複数の新機能は有効化されています。例えば、タスクバーの右クリックメニューの「タスクを終了する」や、タスクバーのシステムトレイの時計を非表示にするオプション、「ナレーター」への自然な声の追加、新しい個人用設定「動的ライティング」などは有効化されています(画面3)。
そこで、Copilotの有無の理由を探るため、Copilotを利用できるPCで調べていると、以下のドキュメントが見つかりました。
ドキュメントの説明には、「If you're signed in with a local account, Copilot in Windows isn't available.(ローカルアカウントでサインインしている場合、WindowsのCopilotは利用できません)」とあります。このドキュメントは、Copilotのパネルを開いて、「…」の「詳細情報」からアクセスできますが、Copilotが見当たらない環境ではたどり着くのは困難だと思います。
Copilotを利用できない環境は、“ローカルアカウントでセットアップした環境”です。一方、Copilotを利用できる環境は、「Microsoftアカウント」や「職場のアカウント」(Microsoft Entra IDアカウント)といったオンラインアカウントでサインインしている環境でした。Copilotの有無の理由はこれだけです。
試しに、問題の環境をオンラインアカウントによるサインインに切り替えると、Copilotのアイコンがタスクバーに追加され、「設定」アプリにもCopilotの項目が追加されました(画面4)。ローカルアカウントをさらに追加して、ローカルアカウントでサインインすると、Copilotアイコンと「設定」アプリの項目は再び消えてなくなります。
以下のドキュメントに記述されているように、インターネット接続とMicrosoftアカウント(または職場または学校のアカウント)は、Windows 11をPCにインストールするための最小システム要件です。
HomeエディションはMicrosoftアカウントがOOBE(Out-Of-Box Experience)セットアップ時に必須です(抜け道がないわけではありません)が、Pro以上のエディションはオンプレミスのActive Directoryドメイン参加を想定して、ローカルアカウントによるセットアップも可能です。しかし、ドキュメントにあるように“一部の機能を利用するにはMicrosoftアカウントが必要”なのです。
これまでは、ローカルアカウントでWindowsにサインインしなくても、アプリごと(例えば、「Microsoft Edge」や「Microsoft 365 Apps」など)にMicrosoftアカウントなどのオンラインアカウントを設定すれば、そのアプリを利用できる場合が多く、ローカルアカウントでもさほど不自由を感じることはなかったと思います。
しかし、今後はCopilotのように、オンラインアカウントによるWindowsへのサインインを要件にするアプリや機能が増えていくでしょう。今回は、Copilot以外にもAI(人工知能)技術を取り入れたアプリや機能が新機能として追加されています(オンラインアカウントによるサインインが要件であるとは限りませんが)。
最後に、今回の一連の新機能には、有効化しなくても利用可能になるもの、有効化してもすぐには利用できないものもありました。例えば、AI機能を搭載した新しい「ペイント」「切り取り&ステッチ(Snipping Tool)」「フォト」などは、新機能の有効化後もすぐには利用可能にはなりませんでした。これらのアプリは、Windows Insider Preview向けにまずリリースされ、数週間かけて一般提供されます(ました)。そのことは、2023年9月の発表時に以下の公式ブログで明らかにされていました。
今回の新機能に含まれる新しい「Windowsバックアップ」アプリは、オプションの更新プログラムのインストール直後から利用可能であり、Windows構成更新プログラムによる有効化は必要ありませんでした(「Windowsバックアップ」アプリは、Windows 10向けにも2023年8月のCリリース以降で追加されています)。
追加される多数の新機能が、どのタイミングから利用可能になるのかはっきりしないものがあること、更新プログラムのリリース情報では言及されていない新機能が機能ごとにMicrosoftの別のブログポストで紹介されていて、そういったことが話をますます複雑にさせている気がします。
なお、Microsoftアカウント(または職場または学校のアカウント)を使用していても、Copilotの存在を確認できない場合もあるようです。その理由は定かではありませんが、理由の一つとして考えられるのが、管理されたデバイスに対して行われる「エンタープライズ機能の制御」による一時的な無効化です。
Copilotはこの一時的な無効化の対象になっており、Windows 11 バージョン23H2に更新することで解除されます。管理されたデバイスでなくても、それと同じような設定(ポリシー設定)が影響しているのかもしれません。あるいはプレビュー機能のため、提供範囲に上限のようなものかもしれませんし、バグかもしれません。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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