「床で寝る」って日本の人に言ったら、びっくりされたGo AbekawaのGo Global!〜アゼストの張さんfrom中国(後)(2/2 ページ)

» 2024年04月02日 05時00分 公開
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将来は「気軽に相談してもらえる人」になりたい

阿部川 今後やりたいことは何ですか。

張さん 機械学習をもっとやりたいですね。後、マネジメントにもチャレンジしてみたい。

阿部川 いいですね。では、少し遠い将来、例えば10年後にはどんな感じになっていたいでしょう。

張さん そのくらいになると後輩がいると思うので、後輩から見て「何でも相談できる人」になりたいです。もし困ったことがあったら、いつでも気軽に相談できる人に。

画像 アゼストのWebサイトから引用

阿部川 きっと、そういうロールモデルがアゼストにはいるんですね。こういう人になりたいという人が。

張さん そうですね。

阿部川 普段、日本人と仕事をする機会が多いと思いますが、印象に残ったことなどはありますか。

張さん 「仕事を間違えないようにする努力」が素晴らしいと感じています。私も今、ダブルチェックなどの“間違えないための確認方法”を勉強中です。

阿部川 なるほど。しかし確認で時間をかけ過ぎてしまうというケースもあると思います。ちょうどいいバランスで確認するためにはどうしたらいいのでしょうかね。

張さん 私が1人で担当しているものでしたら、まず自分で確認し、その結果を上長に確認してもらってから先方に送る、という流れでやっています。グループでやるときは、みんなで一緒に討論して、「このような方法、方向性でいきましょう」と決めてから仕事を始めますね。

阿部川 恐らく、その仕事のプロセスが皆さんに徹底されているんでしょうね。しつこく確認するのではなく、程よく。しかし、ダブルチェックなんて日本独自のものかもしれないですね。

張さん でも仕事を間違えないようにするためには大切なことだと思います。

阿部川 周りの方はなぜ確認が必要なのかについてもしっかり教えてくれたのですね。恵まれた仕事環境ですね。

張さん はい。私はまだそんなに日本語がうまく喋れないのですが。見守ってくれる皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。私が当たり前だと思っているけれど、他の方から見たら変っていうケースは絶対あると思います。でも皆さん、そういうときも温かく、「日本ではこういうふうに、やっているんですよ」と親切に教えてくれて、本当に感謝です。

阿部川 お話ししていると分かりますが、その親切は、張さんがご自身で手繰り寄せたものだと思います。皆さんをちゃんと引き付ける力があって、努力をしているのが、そのまま出ている感じがします。


編集中村 編集 中村

 例えば不具合の再発防止策として「確認する人を増やす」はあまりよくない手段とされています。ただ、張さんのお話を聞いて、周りに確認しながら進めるのは仕事を覚えたり職場での信頼関係を構築したりという点では有用だと感じました。大切なのは機械的にそれをするのではなく、何のためにやるのか、その作業にどのような意味があるのか(そしてそれが最適な手段なのか)を考えることですね。


「娘」という漢字は中国では「お母さん」の意味

編集鈴木 日本語について、さっき「フランス語は漢字がないから難しい」とお話しされていました。日本語には漢字がありますが、同じ漢字でも中国語と日本語で意味が違うことがあるじゃないですか。それで、失敗したことってありますか。

張さん あります! 「床」っていう漢字です。床は中国語ではベッドの意味です。「床で寝る」って日本の人に言ったら、びっくりされまました。日本で最初にアルバイトしたときも、「この荷物を床に置いてください」って指示されて「えっ?」て思ったこともありました。

 もう1つ、「娘」という漢字は、中国では「お母さん」の意味です。中国に旅行してプレゼントを買う際に、「娘のために」と漢字で書いたら、小さい娘さん用なのにおばちゃんっぽいものを選ばれるかもしれません。ちなみに、中国語で「娘」を意味する漢字は、「女儿」です。

編集鈴木 最後にもう1つ。張さんが一押しの中国料理店とメニューを教えてください。「これはもう中国と同じだ」というお店などはありますか。

張さん ありますよ。池袋の「四季香」は本当に本場の料理って感じです。ホームシックになったときに行きます。お勧めのメニューは「鍋包肉(グオバオロー)」です。

画像

Go’s thinking aloud インタビューを終えて

 若さで笑顔がはじけた。聡明(そうめい)さは澄んだ目を見れば分かる。輝く瞳の裏側に数学脳が詰まっている。そして日本語も大変きれいだった。語彙(ごい)が豊富なことは感情が豊かなことにもつながる。

 張さんは、われわれが物事を「丁寧に確認することが素晴らしい」とおっしゃってくれた。それは素直にうれしい。丁寧さは私たちの強みだ。

 だが、私自身はそれも程度の問題ではないかと思っている。(もちろん拙速が良いとも思わないが)65点くらいの出来で走り出し、うまくいかなかったらそのとき直す、くらいの仕事の進め方ができないだろうか。80点で動き出すよりも、皆がそのスピードを是とすれば、きっともっといろいろなことが変わってくるはずだ。IT業界での競争優位はまずはスピード。これを忘れると、企業も人も衰退しか残らないだろう。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学の学部長、教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

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