秋田県東成瀬村で建設が進む成瀬ダムでは、ダンプトラックやブルドーザーなど10数台の無人重機が自律的に稼働して建設工事に従事している。それを支えるネットワークはどんなものだろうか。
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2024年2月27日の朝、いつものように在宅仕事の前のコーヒーを飲みながら何げなくテレビを見ていると、ダムの工事現場で無人の重機が縦横に行き来して堤体(ダムの本体)の打設工事をしている様子が映し出された。そのよどみないスピーディーな動きに驚かされた。
無線ネットワークで監視、制御されているに違いないが、どんなネットワークが使われているのだろう、ローカル5Gでも使っているのだろうかと強い興味が湧いた。その日のうちに鹿島建設広報室に電話をかけて取材をお願いし、2024年4月4日にオンラインで取材させていただいた。
対応していただいたのは、技術研究所 プリンシパル・リサーチャー 三浦悟氏と、技術研究所 先端・メカトロニクスグループ グループ長 浜本研一氏だ。
筆者がテレビで見た映像は2023年10月に撮影されたものだった。11月から4月は積雪が深いため工事が行われない。以下の文章は現在形で記述するが、2023年10月時点のことであることを承知いただきたい。
成瀬ダムは秋田県の南端、岩手県との県境に近い成瀬川に建設中の台形CSG形式のダムで、工期は2018年から2026年だ。CSG(Cemented Sand and Gravel)とは、石や砂れきとセメント、水を混合して作る材料であり、台形CSGダムはCSGを使って堤体の断面を上流面も下流面も同様の勾配を持つ台形にしたダムだ。
台形の下部から上部へとCSGを幾層も重ねて打設してダムを形作っていく。当然、下部は面積が広く、上部にいくに従って面積は狭くなる。成瀬ダムは完成すると堤高114.5メートルとなり、台形CSGダムとしては日本一の高さになるそうだ。
このCSGの打設工事が鹿島建設の開発した、建設機械の自動運転を核とした次世代建設生産システム、「A4CSEL」(Automated/Autonomous/Advanced/Accelerated Construction system for Safety, Efficiency,and Liability:クワッドアクセル)で自動化されている。
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