Google Cloudが2024年3月7日に開催した「Generative AI Summit Tokyo '24」で、住友ゴム工業の角田昌也氏は、デジタル設計の工程に不可欠な「コンピュータシミュレーション」に関連したプログラムの生成やマイグレーションにおける生成AIの活用事例を紹介した。
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製造業において、製品シミュレーションなどの「性能予測」の領域は、これまでも積極的にデジタル化の投資が進められてきた。この領域に、現在進化が著しい「生成AI」の技術が適用されると、どのような成果が期待できるのか。
Google Cloudが2024年3月7日に開催した「Generative AI Summit Tokyo '24」では、住友ゴム工業の角田昌也氏(研究開発本部 研究第一部長)が「製造業における生成AIを使った業務効率化への取り組み」と題した講演で、同社における生成AI活用の取り組みを紹介した。
住友ゴム工業は、1909年にダンロップの極東工場としてスタートした。1913年には自動車用タイヤ(以下、タイヤ)の生産をスタートし、現在に至るまで主力製品となっている。ただ、タイヤメーカーとはいえ、近年では車両メーカーの開発プロセスのデジタル化に追従する形で、設計のデジタル化が加速していると角田氏は語る。
「車両開発のデジタル化に伴って、タイヤのようなパーツについても試作する前にデジタルデータで仕様をやりとりするケースが増えてきた。設計のデジタル化と、コンピュータシミュレーションによる性能予測の重要性が非常に高まっている」
言うまでもなく、自動車にとってタイヤは不可欠なパーツだ。数百キロから数トンに及ぶ車重を安全に支えるために高い性能が求められる。この「性能」の指標は多岐にわたり、転がり抵抗や摩耗量、動特性、耐久性、ぬれた路面での制動力に関係するハイドロ性能、空気抵抗などがある。タイヤの設計においては、こうした性能を事前にシミュレーションで「予測」することが重要になる。
住友ゴム工業は、1990年ごろから製品設計にコンピュータでの性能予測を積極的に取り入れてきた。タイヤのバネ特性といった基本性能の解析をはじめ、静的(あるいは動的)な構造解析、流体構造連成解析、さらにはスポーツ用品であるゴルフボールの空力特性、ゴルフクラブの気候解析など、その適用領域はさまざまで、30年以上の歴史の中で多くのノウハウを蓄積している。
「シミュレーションはモデルを作成した後、さまざまな条件を設定してスーパーコンピュータなどで計算を実行して、その結果をグラフ化したり、色づけして分かりやすく可視化したりといった後処理を実施する流れで進む。各工程で、市販の汎用(はんよう)アプリケーション(以下、アプリ)や自作(内製開発)したアプリを利用するが、その種類と役割は多様で、現在利用されている内製アプリは150本を超えるという。それらを市販の汎用アプリと連携させる際には、市販アプリ側でプログラミング言語が指定されているケースが多く、非常に多くの言語に対応する必要がある」と角田氏は説明している。
住友ゴム工業における性能予測業務用アプリケーションは歴史が古く、「Fortran」や「Perl」といった言語で書かれているものも現役で稼働している。また、技術計算を行う市販アプリについても「Java」「LISP」「Python」「MATLAB」など対応言語が異なっている状況だった。
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