データとアナリティクス(D&A)のリーダーは、マスターデータ管理(MDM)のビジネス価値をおろそかにしがちだ。生成AIの台頭により、信頼できるデータの必要性に関する認識が高まっている中、MDMは、組織の戦略目標に整合した包括的なD&A戦略の重要な要素でなければならない。
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Gartnerは毎年、顧客とマスターデータ管理(MDM)について数百件の対話をしている。データとアナリティクス(D&A)のリーダーの多くは、以前よりは改善されているものの、MDMプログラムがビジネスにもたらす価値の測定を依然としておろそかにしている。
このことは、重要なガバナンスの取り組みであるMDMの価値に対する認識や、MDMへの投資に影響を及ぼしている。成熟した組織は、顧客やサプライヤー、製品に関する信頼できる全社的なマスターデータビューのメリットを理解している。信頼できるマスターデータは、レポーティングや意思決定、ビジネスのアジリティ(俊敏性)を向上させる。一方、マスターデータの不備は、顧客体験の悪化、販売機会の損失、規制上の問題につながることがある。
生成AIの台頭により、データガバナンスが取締役会で議論されるようになり、信頼できるデータの必要性に関する認識が高まっている。だが、MDMプログラムは、単なるデータ管理プロジェクトと見なされてしまうと、支持を得ることは難しい。MDMリーダーがビジネスへの影響を直接示さない指標に注目しがちであるため、MDMの価値とビジネス価値に乖離(かいり)が生じている。
MDMは、組織の戦略目標に沿った包括的なD&A戦略の重要な要素であるべきだ。通常、戦略目標は、以下の3つのカテゴリーに分類される。
MDM戦略を策定する前に、MDMがサポートする成果を理解し、優先順位を付けることが重要だ。正式なD&A戦略なしでMDMプログラムを導入しようとしている場合や、既存の戦略でビジネス成果の優先順位付けがなされていない場合は、一歩退いて問題やステークホルダー、目指す成果、企業戦略との整合性を明確にする必要がある。このアプローチにより、MDMがサポートできるビジネス成果の全体像が把握できる。
MDMプログラムを、ステークホルダーにとって最も重要なビジネス成果に結び付けなければならない。この結び付きは数値化できる必要があり、仮説的なものであってはならない。評価指標のフレームワークを使用して、高レベルのビジネス成果をマスターデータに結び付ける。Gartnerの「Value Pyramid」(バリューピラミッド)は、マスターデータと成果の間に明確な因果関係を確立するためのフレームワークを提供する。
MDMプログラムの価値を効果的に評価するには、ビジネスの優先事項とその成果の測定方法を理解する必要がある。そのためにD&Aリーダーは、バリューピラミッドの頂点から裾野まで、組織内のさまざまなレベルのステークホルダーと協力しなければならない。D&Aリーダーがビジネスステークホルダーの優先事項や重要な関心事に対処することで、ビジネス目標の達成に向けたMDMの活用に対するステークホルダーの積極的な参加につなげられる。
MDMのビジネス効果を測定するには、データの改善がビジネスプロセスや成果の向上にどのようにつながるかを定量化するモデルを構築する必要がある。これにより、データと成果の間の測定可能な関係が明らかになる。以下の手順を検討すべきだ。
高レベルのビジネス成果に及ぼす影響を指標レベルで集計する。このステップでは、集計された成果を特定の財務結果と整合させる。例えば、サプライヤー管理効率の向上は、損益計算書の「売上原価」にプラスに影響するはずだ。
MDMプログラムの価値を効果的に評価するには、ビジネスの優先事項を理解し、組織のさまざまなレベルのステークホルダーと協力関係を築く必要がある。MDMを戦略目標に合わせ、ビジネス成果に結び付け、ビジネスへの影響をモデル化し、成果を集計することで、D&AリーダーはMDMの価値を実証し、継続的なMDM投資を確保できる。この構造化されたアプローチにより、MDM プログラムは有意義なビジネス成果を促進し、組織の成功を支援できる。
出典:Unlocking the Business Value of Master Data Management(Gartner)
※この記事は、2025年2月に執筆されたものです。
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