DXが進まない? 取材から見えた、成功企業に共通する「7つのプロセス」:ITツールは手段。大切なのは「目的」と「思い」(1/3 ページ)

「DXって何から始めればいいの?」――業種も規模も違うのに、DXを成功させた企業がたどる道は驚くほど似ていた。連載「ITのチカラ」の取材事例を振り返り、始動から変革までを「7つのプロセス」として整理した。ツールより先に必要な「目的」と「思い」の共有とは――。

» 2026年10月26日 05時00分 公開

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 「DX(デジタルトランスフォーメーション)、何から始めればいいんだろう?」

 上から「DXをやってくれ」と言われたものの、何から手を付ければいいか分からない。できそうなところから始めてはみたものの、現場の理解が得られず止まってしまった。最近ではどこもかしこもAI、AIで、さらに「何かしなければ」と焦ってしまう――。

 もしあなたが、そう悩んでいるなら、それは多くのDX実践者が歩む「成功のプロセス」の途中にいる証拠かもしれない。

 連載「ITのチカラ」は、これまで幾つかの企業や組織のDX事例を取材してきた。それらの内容を振り返った時、ふと思うのだ。「業種も組織規模も違うのに、DX推進でたどる道はみんな同じなんだな」と。

 そこで今回は、これまで取材してきた事例から、DXを成功に導くための「共通点」を考えてみることにした。

ツールを入れても、なぜ動かないのか

 DXというと、一般的には「デジタル化」だと思われている。紙をなくし、システムを導入し、業務を効率化する。もちろん、それも大切だ。だが、デジタルのツールを入れただけでは、思うように機能しないことの方が多いのではないだろうか。

 私はかつてシステムエンジニアとして働いていたことがある。情報システムについて、「導入すること」と「使ってもらうこと」は別問題という事実は、ずっと感じていたことでもある。自分の経験としても、周囲の話としても、そうした場面を何度も見てきた。

 では、DXを成功させるためには、何が必要なのだろうか?

DXが成功した企業に見られる「共通のプロセス」

 これまで取材してきた企業の取り組みを振り返ると、DXはおおむね次の7つの段階を経て進んでいるように見える。

DX成功に共通する7つのプロセス(筆者の取材を基にClaudeで作成)

1.始動期:きっかけは「一言」か「危機感」

 多くの企業でDXの推進が動き出すのは、「トップの一言」や「外部環境の変化」「危機感」がきっかけのようだ。

 新潟県の物流会社「第一製品流通」がDXに取り組み始めたきっかけは、会長との雑談で出た「○○というツールがいいみたいだよ」という一言だった。東京都の建設会社「巴山建設」のDXも、社長の「そろそろ、DXを進めないとね」という提案がきっかけだった。長野県の電子部品メーカー「長野テクトロン」は市場縮小への危機感と、実際に受けたサイバー攻撃が、東京都府中市の取り組みは生産年齢人口の減少という危機感が出発点だった。

 ただし、推進役の担当者自身は、DXに対して必ずしも「腹落ちしている」わけではないことも多い。第一製品流通の押見透さんは「正直、考えるのも面倒くさかった」と振り返る。乗り気でないまま始まるのは、決して珍しいことではないようだ。

2.停滞期:意気込んで始めるが、つまずく

 DXの推進が始まると、ツールを導入したり、周囲を巻き込んだりし始める。だが、この段階では、導入したツールが使われなかったり、現場からの反発が起きたりして、取り組みが停滞しがちだ。また、移行期の二重運用が現場の負担となり、「前の方が良かった」という声が出やすい。

 第一製品流通は、転記作業が増え「これなら、むしろExcelの方がよかったんじゃないか?」と感じた時期があった。長野テクトロンは、幹部だけで決めたシステムを「使ってください」と案内したところ、反発の声が相次いだ。

 多くの企業が、このような停滞期を経験している。

3.巻き込み期:目的を問い直し、周囲と対話し始める

 この段階では、「何のためにDXを推進するのか」を改めて明確にし、現場の「困りごと」から対話を始める。トップダウンや担当者の意気込みから、巻き込み型へと進め方が変わっていく。

 長野テクトロンは、それまで幹部だけで行っていた議論に、中間管理職も加わってもらい、現場の困りごとからアプローチするようにした。巴山建設では、建設機械のデジタル化に不安を抱えるオペレーターに対し、「何かあったら全部責任は持つから」と伝えた。大阪府の製造業「岸産業」は、作業工程のデータ入力がなかなか続かない現場の従業員に対し、「なぜ、このデータが必要なのか」を説明して回った。

最初は自分も不安だった。だから、周囲の不安にも寄り添えた(巴山建設)

 鍵になるのは「ツール」ではなく、DXを推進する「目的」と「思い」を伝えることだったのだ。

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