この段階ではいきなり大きな成果を狙わず、取り組みやすい小さなところから着手し始める。現場の負担をできるだけ減らす工夫が、継続を支えるのだ。
住民に必要なデータの可視化に取り組んでいる府中市は、住民データという、取り扱いが難しい「本丸」ではなく、個人情報を含まないオープンデータからスモールスタートする道を選んだ。第一製品流通は、外出が多く、なかなか話す時間が取れない配送部門ではなく、社内に従業員がいる総務部門から着手した。岸産業は、PCの扱いに慣れていない職人のために、データ入力の負担が極力少なくなるように工夫した。
このように、できるだけ負担を減らし、小さく始めることによってデジタル化、データ化を推進した。
小さく始めたデータがたまってくると、業務や課題の見える化が進む。それをきっかけに、部署を超えた対話や、改善への意欲が生まれ始める。
長野テクトロンは、各部署のデータを集めてみたところ、製品を管理するための通し番号がないことに気が付き、「これは、何とかしなきゃいけない」と認識がそろった。第一製品流通は、業務のつながりが見えたことで「こうしてあげると、あの部署も楽だよね」と、お互いを気遣う意識が生まれた。
対話が促進されるようになると、小さな成功が共有され、口コミのように社内に広がっていく。すると、現場から自発的にアイデアや改善提案が出てくるようになる。
岸産業は、取り組んだ努力の見える化として、製品利益率のトップ20とワースト20を発表した。その結果、従業員から「面白いやん!」と反響があった。巴山建設は、現場から「次はこういうことができない?」という声が上がるようになった。
小さな成功体験の大切さについて、第一製品流通の押見さんは次のように語る。「現場の皆さんに実際に使ってもらって、小さな成功体験を体感してもらう。これが一番早いです」
この段階は、自社の変化を土台に、新たな事業や業界全体への展開など、次の挑戦に向かう。デジタル化が、本来の意味での「変革」――つまり、デジタルトランスフォーメーション――へとつながっていく。
第一製品流通は、物流業界向けのデジタル化伴走支援を新たな事業として見据えている。巴山建設は、自社の取り組みが建設業界全体のDXにつながっていくことを目指している。
IT担当者不在の物流企業が、4年かけてたどり着いた「自走するDX」
創業明治19年 気遣いが功を奏した「ザ・アナログ」企業のデジタル化
府中市とGovTech東京が挑む、職員が「自分たちでやる」デジタル化
「カオス」を楽しむ! GovTech東京の女性エンジニアたちが描く、住民体験とDXの未来
人口減でも「人材不足」を乗り越える カギは「人に仕事を合わせるDX」
「デジタル化」のその先へ! 長野の中小企業がDXで挑む市場変化という魔物
「技術が変わると、人が変わってくる」 デジタル化で建設業界を盛り上げる巴山建設の挑戦
なぜ、星野リゾートの「成長の足かせ」だった情報システム部は、基幹システムを再構築できたのか
なぜ、倒産寸前だった事務機屋は「働き方改革事例共有会社」に変われたのか
デジタル化の目的は効率化だけなのか? 大阪の製造業に起こった「うれしい想定外」
「環境変化に合わせて進化するシステム」を支える、不動産仲介企業情シスの矜持
連載「ITのチカラ」始まりますCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.