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転職で重要な自身の強み、理解している?転職失敗・成功の分かれ道(23)

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

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 皆さんは、採用面談(面接)が終わった後に、「もう少しうまく答えられれば」と思った経験はありませんか。

  • ご自身のご経歴を簡潔にご説明いただけますか
  • 応募動機を教えてください
  • 弊社のビジネスモデルについてはどのように思いますか
  • 3年後のビジョンは?

 こうした質問は、必ず面談で聞かれることだと思います。今回は、このような質問を想定した面談への対策や、転職の動機についてお話ししましょう。もちろん、これから転職を考えている人にもお役に立てていただけるものと思います。

経歴説明について

 「実際の面談と想定して、私に経歴を説明してもらえますか」

 これは、カウンセリングにいらっしゃった転職を希望する面談者に、私が必ず確認することです。

 その方の回答が、

  • 自分の強みを理解し、売りをアピール(表現)できているか
  • ロジカルな説明ができる人か(簡潔か)
  • 自分の方向性(考え)をすでに明確に持っているか(希望の会社、部署・希望年収)
  • 転職理由がネガティブな印象になっていないか

を見るのです。この簡単なチェックで、面談者の現在の考えを明らかにできます。

 転職希望者の職務経歴書を見てからカウンセリングに臨めれば、書かれた職務経歴書の問題点や面談対策事項が分かります。それが分かればコンサルタントとして、その方の転職活動のどこに力を注げばいいかを明確にできるのです。

自分の強みの理解と書類通過の重要性

 転職希望者のお話を聞いてよくあるのは、書類としての職務経歴書と、口頭で説明する職務経歴との乖離(かいり)です。

 例えば、口頭では社内のシステム構築を「提起」し、「提案書から作成し」「ベンダの検討から始め」「億単位の予算を管理し」、対応人数が少ないため、「メンバーのタスク配分まで考え」頑張りました、とおっしゃるのです。

 しかし職務経歴書に目を通すと、「システム構築(要件定義〜)」「環境はサーバ30台」「予算管理・人員管理」「期間1.5年」としか書かれていなかったのです。

 私には実際のシステムなどを含めた業界知識があるため、台数や期間からそこそこ大きなプロジェクトだと分かりました。ですが、上記の職務経歴書をそのまま転職を希望する企業に提出しても、書類通過もままならなかったかもしれません。

 転職活動は、「書類通過」しなくては意味がありません。上記の職務経歴書を基に、表現の仕方やアピール点を追加していなくてはなりません。このことをきちんと意識してください。

 職務経歴書のフォーマットにもよりますが、業務内容は誰が見ても分かるように書くこと、それにその開発の背景まできちんと文書化できるか、そして得意分野をアピールできているかは非常に重要です。

 ご自身では当たり前にやってきたことが、転職の際には十分な強みとなっている場合があります。こうした強みは、自身ではなかなか気付かないものです。コンサルタントと相談していく中で強みを見つけてください。

 職務経歴書のブラッシュアップとともに重要なことは、いかにそれを面談時に簡潔に話し、アピールできるかです。

応募動機は明確に

 整理してほしいことの1つに、今回の転職が「強みを生かした年収アップ」なのか、それとも強みを生かし「新たな環境・挑戦」を選びたいのか、ということがあります。

 コンサルタントには、こうした応募動機とともに、希望年収が適正かどうか、面談での話し方、アピールの仕方なども相談されることをお勧めします。コンサルタントに相談しつつ考えを整理することで、転職候補先の企業への応募動機を明確にすることができるからです。

 ちなみに転職理由で、「スキルアップしたいから、もしくは現在の会社ではスキルアップができないから」としか回答しない方がたまにいらっしゃいますが、こういう答えは避けた方がいいでしょう。

 20代後半の中途採用では、企業は即戦力を求めています。スキルアップというひと言だけではなく、即戦力であるということをアピールしつつ、ご自身で欠けていると思われる点を明確にし、それを今後いかに伸ばそうと考えているかを述べるようにしましょう。

こんな転職理由はダメ

 「○○ができないから退職します」というのは、転職するのは会社のせい、周囲のせいという印象を与えかねません。そもそも企業は何かを特別に与えてくれる場所ではありません。企業は面談者が自分で変えようという意思があまりない人ではないか、能動的ではない人(受け身の人)なのではないか、そして不満があるとまた転職するのではないかと推察し、マイナスの印象を持ってしまいます。

 もう1点、制度・業績などによる転職理由の場合も、気を付けなければマイナスの印象を与えてしまうことがあります。

 以前、こんな人がいました。勤務した企業を転職する理由が3社続けて、「業績の悪化に伴い、不安で」というものでした。ご本人は「運が悪くて……」といいたかったようですが、採用する側としては、転職する際に企業のリサーチを怠っていたのか、など不信感を持ち、「運が悪かったんですね」と同情してはもらえません。この方は応募した企業すべてで面談で落とされてしまいました。3社とも業績不振で転職せざるを得なかったというのは、特殊な例かもしれませんが。

 入社したときは業績が絶好調で安心していたが、突然買収話が持ち上がり、などなど、いろんなことがあり得るのがこの業界です。ただ、致し方ない、といっていてはダメなのです。その経験を今後どう生かしていくかなど、その状況さえポジティブにとらえ、応募動機にひも付けて考えるぐらいがちょうどいいのです。

コンサルタントの話やうわさ話を鵜呑み(うのみ)にしない

 一番重要な職務経歴書と、ご自身の経歴、強みの整理さえできれば、あとは転職候補先ごとにそれぞれ違う面談準備を、人材紹介会社のコンサルタントの情報を基に組み立ててみてください。

 ただし、掲示板などインターネット上に書かれているうわさ話を鵜呑みにしたり、コンサルタントの話を面談時にご自身で調べた(考えた)かのようにお話をされる方がいますが、それは避けた方がいいでしょう。

 人材紹介会社経由で応募された場合は、面談する企業もそれを承知しています。ですから「担当のコンサルタントにこのような情報をいただいたのですが」などのようにお話しすればいいのです。万が一、コンサルタントの話が間違っていたりしても、ご本人のマイナス評価にはなりません。

 ご自身で企業の業務内容などを詳しく調べることはもちろんですが、コンサルタントからの情報などで興味を持ったものは、コンサルタントに聞いた件としてお話しするように、きちんと切り分けておきましょう。

将来のキャリアビジョンは、への対処法

 最後に「3年後のあなたのビジョンは?」「将来像は?」と聞かれた場合です。実は私も弊社における採用面談で使用したことがある質問です。

 この質問の回答は難しいと思います。「3年後には独立を考えている」と正直に伝えた方がいたのですが、企業からは3年という期間しか働く気がないと見られてしまい、内定は得られませんでした。

 正直に答えても受け入れてくれるような企業も存在します。ですから正直にそのときの考えを伝えても受け入れてくれる会社を探すのもよいですし、「将来できれば独立も視野に入れたい」という伝え方も可能です。なぜなら独立志向がある人ほど向上心があり頑張り屋だ、という印象にすることも可能だからです。

 これに関してはどちらが正しいということではないと思います。個人としてのビジョンが明確になっているのは本当に素晴らしいことだと思います。どのように対応するかだけ、ポイントとして覚えておいてください。

転職活動とは

 転職活動では、「なぜ転職したいのか」「なぜいまの職場に不満があるのか」、自分自身に対してたくさんの「なぜ?」を繰り返すことになります。そしてその答えが分かったとき、あなたは転職をしないことになるかもしれません。ただし、なぜいま思ったのか、現職に残ることにしたのか、自問自答した答えは出て明確になっているはずなので、必ず前向きに変化しているはずです。

 そしてその「なぜ?」のときにコンサルタントが、皆さんのキャリアパスの近道へのお手伝いができると思います。コンサルタントは転職先の企業をご紹介するだけが仕事ではありません。第三者にいわれて気付くこともあると思います。身近に一生のコンサルタントを探してみてはいかがでしょうか。

著者紹介

ウェブドゥジャパン 鳥居可奈恵

ウェブドゥジャパン人材ビジネスの立ち上げメンバー。IT専門のフリーランスエンジニアコーディネート業務をマネージャとして3年間経験後、人材紹介キャリアコンサルタント(チームマネージャ)として活躍中。ITエンジニアからの信頼も高く、数多くの転職希望者の転職を支援する



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