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嫌いな上司の対処法経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(11)(2/2 ページ)

エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は嫌いな上司がいるときのチェックポイントとケース別対処法を伝授する。

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ケース別の対処法

 深刻なケースから考えよう。例えば「上司の人事評価がフェアではなくて、自分に不利に働いている」場合はどうか。これは、人材価値を損なう深刻な問題だ。

 「上司の上司」に訴え出たり、他部署のマネジャーに協力を求めたりするなど、動き方はいくつかある。しかし、「あなたの評価はフェアでない」と申し立てることは、上司の能力や人格に対する明確な否定なので、必ず勝てる状況か、転職などの退路を作ってから戦う必要がある。

 転職の代わりに人事異動を画策することもできるが、上司と対立した事実を残すと、後で評価が不利になったり、元上司に仕返しされたりする場合がある。

 「上司が、成長につながるような仕事を与えてくれない」場合はどうか。これも、人材価値のマイナス要因だが、先の問題よりは折り合いを付けやすいかもしれない。

 思うようにならない場合には、転職で解決することが最善の答えになることがある。

 「『セクシュアルハラスメント』や『パワーハラスメント』がある」場合はどうか。これも解決を要する問題だが、上司と直接対峙(たいじ)しようとするのは危険だ。

 正確な記録を取っておいて、後で十分対抗できるようにしてからアクションを考えるべきだ。ハラスメントは加害者に問題があり、職場の他のメンバーのためにもただすべきなのだが、訴え出ると、その後被害者も居心地が悪くなる場合がある。

 「上にはへつらうくせに、下には威張る上司」はどうか。

 この種の上司が大切にしているのは上と横に対する体面なので、仕事の力で自分が勝る場合は、自分の方が上司よりもできることを相手に分からせた上で、「あなたが私に威張らないなら、私はあなたを上司として立ててあげよう」という暗黙のメッセージを伝えると、上司の態度を改善できる場合がある。

 「指示が不明確」「部下とのコミュニケーションが乏しい」といった不満は、かなりの程度部下の側から解決できる。部下に自分から積極的に働き掛けられない上司は少なくないが、部下から積極的にコミュニケーションを取られて嫌がる上司も少ないものだ。

 「無能である」「地位や報酬に見合った仕事をしない」「人格が下劣だ」「尊敬できない」といった上司に対する不満は、我慢するのが正解だ。

 尊敬できる上司の下で仕事をするのは理想だが、職場にそこまで求めるのは贅沢だ。上司は身内ではなくて「他人」だし、実質的には「顧客」であり、満足させるべき対象だ。実害がない限り、顧客に腹を立てて良いことは何もない。

 最後にひと言、「上司も人間だ」と申し上げておこう。

 部下から好意を持って接すれば好意的に受け止めることがあるし、反発されると長きにわたって恨みに思うこともある。ときには誤解をすることもある。もちろん、「部下も人間だ」。

「経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」」バックナンバー

筆者プロフィール

山崎 元

山崎 元

経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。


※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。



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