Book Guide

社会、経済 競争力強化 マネジメント ビジネス
企業改革 管理手法 CSR コンサルティング
IT戦略 IT-ROI 組織・人材 思考法
SLCP 上流工程 方法論 ソフト品質
モデリング、SOA プロジェクト IT基盤 運用管理
内部統制 コミュニケーション  ナレッジ 情報理論
ERP SCM セールス、SFA マーケティング
製造業 流通業 サービス業 ネットビジネス 
IT入門 SE ITソリューション ワークスタイル
今週のブックガイドへ

■経営手法、経営フレームワーク、マネジメントシステム
 
コンピュータに知恵はない――情報を知恵にかえるための発想の転換
●奥沢 浩=著/日本ビジネスオブジェクツ=監修
●カナリア書房 2008年1月
●1300円+税 978-4778200589
 世の中一般では、万能な道具とイメージされているコンピュータだが、実際には情報を集め、蓄え、整理して、人間に提供する道具でしかない。本書では、コンピュータの情報を人間の知識に変えるビジネスインテリジェンス(BI)を解説、日本的BIのあるべき姿をまとめている。
 BIを使うためにまず意識しなければならないのが「情報共有化」だ。情報の共有化は企業のノウハウの集積に役立つだけでなく、会社全体のビジネスの方向性をも左右する大切な作業となる。しかし、会社の中に「聖域」が存在するため、本当の意味でナレッジシステムが使われていることが少ない。
 こうした状況を避けつつ、情報の開示を進めていくには、情報の統制が同時に必要になる。それを担うのが、欧米風の役職にするとCIOとなる。このような責任者を置くことで、情報の開示をしても評価プロセスによる悪循環に影響されないシステムを構築できるはずだ。また、BIが日本で拡がりを見せるためには、まずは経営者や部門の責任者が「BIによって何を気付かなければならないのか」を考えていく必要がある、と説明する。
 ほかに、BIを理解するのに必要なこととして「文化」「ビジネススタイル」「市場感覚」の違いを認識することと、情報に対する意識の変革、部門間の連携強化を提唱している。短時間で情報活用術の課題や傾向がつかめる本書は、生きたナレッジの蓄積に悩む経営者やマネージャにオススメしたい。(ライター・生井俊)
 
「不祥事」を止めるISO思考
●有賀 正彦=著
●光文社 2007年5月
●952円+税 978-4-334-93411-8
 ISO取得企業の不祥事が相次いでいる。ISO制度が無意味で機能しないものとならないように、そのマネジメントシステムについての正しい内容と本来の目的を解説し、自立した組織作りができる考え方をまとめたのが本書だ。
 前半は、不二家の賞味期限切れ問題や関西テレビの情報番組捏造などを振り返りながら、ISO的な考え方を示す。ISOの最大の目的は、問題が起こらないようにすることではなく、問題が起きた後にどう再発を防ぐか、が一番のキモになる。再発防止のためには、現在の仕事の手順や能力を見直すことが必要だが、「問題の真の原因を特定しにくい」「問題の真の原因を除去する再発防止の手順に、有効性があるか判然としない」という2点からきちんと実施するのは難しい。
 まっとうに機能していないISOの現状があるとはいえ、ISOを活かさなければ社会負担が増えるため、今後は多くの組織がISOを理解し有効に活用していくしかない。組織がISOを真に理解し、自立してシステムを改善することができる仕組みを確立すれば、トータルで見れば社会的なコストは低減する。それは、コンプライアンスの順守だけでなく、業務や提供する製品やサービスの質を向上させ、そのことを信頼ある認証制度の枠組みで外部に示していくことで可能となる、という。
 登録制度が形骸化していることについて、審査登録機関のブランド化や審査担当機関を無作為抽出で選定するべきなど、ISO認証自体の改革にも言及している。(ライター・生井俊)
 
パフォーマンス・マネジメント──戦略をすべての人の仕事に落とし込む
●ゲーリー・M・コーキンス=著/SAS Institute Japan=訳
●東洋経済新報社 2007年3月
●3400円+税 978-4-492-53228-7
 組織における戦略実行の管理プロセスを意味する「パフォーマンス・マネジメント」。人的資源や人事制度に混同されることがあるが、それよりもはるかに包括的なもので、方法論、指標、プロセス、ソフトウェアツール、組織のパフォーマンスを管理するシステムからなる。
 PDCAサイクルと同様にパフォーマンス・マネジメントにも、「フォーカス」、フィードバックのある「コミュニケーション」、「コラボレーション」の3つの要素を繰り返すサイクルがある。その焦点を絞る際の主要なツールは「戦略マップ」で、コミュニケーションを補強し、戦略マップを推進させるのが「スコアカード」だ。そして、戦略を管理するプロセス・サイクルの最後であるコラボレーションでは、ビジネスユニット間のさまざまな戦略を整理することにより、組織は集積された知識を従業員に与え、各人の可能性を解き放つ。
 また、ここでいうスコアカードとは、バランスト・スコアカードと機能別スコアカードの両方を示したもの。戦略マップとスコアカードはセットで進められるべきで、一度作成されれば、組織の戦略的意図は具体化され、組織が満たすべき戦略上の目的と、それらの達成を測定する重要な成功指標すべてのコミュニケーションが可能になる、という。
 パフォーマンス・マネジメントは、マネージャと従業員が本当に連動して、彼らがまるで事業主であるかのように振る舞う環境づくりを促進するもの、と説く本書。「戦略をどう現場に落とし込むか」という点で役立ちそうだ。(ライター・生井俊)
 
デザイン思考の道具箱──イノベーションを生む会社のつくり方
●奥出 直人=著
●早川書房 2007年2月
●1800円+税 978-4-15-208799-7
 ナイキ、GE、インテルなど多くの会社が、デザイン教育を行っている大学を、イノベーションをマネジメントする人材の供給源として見るようになってきた。このような「デザイン思考」が、イノベーションを創出し、多くの人を惹きつける商品やサービスを生み出すきっかけになる。
 創造性は個人の才能ではなく、方法だ。方法さえ身に付ければ誰でも創造性を発揮できる。例えば、有名デザイナーとのコラボレーションによる携帯電話があるが、これは永遠に持続可能なものではなく、それによって企業自体に創造性が備わるわけではない。
 本書が提案する「創造の方法」は、会社組織をイノベーションを生む組織につくり変えるための道具箱だ。ここでは、創造のプロセスの設計が大切になる。まず、ものづくりの哲学を考え、何をつくりたいかビジョンを決め、それをもってフィールドワークを行い、どのようなものをつくるかコンセプト/モデルをつくり、機能やインタラクションを検討しながら実際の設計デザインを行い、実証する。次にビジネスモデルを構築して、実際の運営方法を決定するのが創造のプロセスとなる。
 創造の方法を実行するために必要なのは、経験の拡大、プロトタイプ思考、コラボレーションの3つだと説く。果たして創造性は方法なのかという疑問は残るが、企業の全体最適に向けて一定の効果が期待できそうだ。(ライター・生井俊)
 
分析力のマネジメント─―「情報進化モデル」が意思決定プロセスの革新をもたらす
●ジム・デイビス、グロリア・J・ミラー、アラン・ラッセル=著/SAS Institute Japan=監訳/鈴木 泰雄=訳
●ダイヤモンド社 2007年1月
●1800円+税 978-4-478-33124-8
 新たな「ビジネスの実現」のために、企業への要求水準が高まり、情報管理をより効果的に行うことが欠かせなくなった。旧式の情報管理方法が、もはや足かせとなり、企業を破滅へと追いやるケースすらある現在、「情報の管理方法と活用方法を見直す」「競争力の高い情報管理モデルに系統的に進化することを目指して、継続的に取り組む」時期を迎えている。本書はそのための方法論として「情報進化モデル」(IEM)を提唱する。
 情報進化モデルでは企業内の情報活用をインフラ、ナレッジ・プロセス、人的資本(人材)、企業文化という4つの要因(次元)で評価していく。この4つの次元からとらえた企業の成熟度は「個人」「部門」「全社」「最適化」「革新」という5段階に整理される。
 企業の進化では出発点と終着点が必ずしも明確でないか、意見が分かれてしまうことが多い。だが、この2点について合意のうえで明確化できれば、情報進化モデルがバーチャルなGPSの役割を果たして企業を目的地に導いてくれる。このように情報進化モデルは、企業が客観的に現状を自己評価し、改革に向けたロードマップを策定し、その進捗のベンチマークを設定する上で有用だ、という。
 将来の事業戦略を正しく導き出すために、自社の情報管理を中心としたビジネス環境を見直し、組織としての分析力(ビジネス・インテリジェンス)を高めていくための方法論を説く本書は、情報統制を進めたい経営層・マネージャにとって有用だろう。(ライター・生井俊)
 
BAM〜可視経営の実践〜
●田岡 賢輔=著/中島 洋=監修
●日経BP企画 2006年12月
●2381円+税 4-86130-227-7
 内部統制の強化を求める日本版SOX法が成立し、上場企業は2008年4月の会計年度から対応が必要になる。本書では、変化しつつあるビジネス環境の中で、競争力を維持しつつ、企業のコンプライアンスを保つ解決策として注目を集めるBAM(Business Activity Monitoring)について掘り下げる。
 第2章ではBAMの位置付けを扱う。業務アプリケーションの実行結果が対象になるBIと違い、BAMは業務プロセスのリアルタイムでのパフォーマンスを示すKPIが対象になる。また、改善という観点では同じものに見えるBPMとBAMについては、BPMで注力するのは、業務プロセスのモデル化とそれに基づく改革・改善であるが、BAMは業務プロセスのパフォーマンスをモニタリングするがモデルそのものを変えることは範囲に含まれないと解説する。
 第5章ではコンプライアンスをテーマに、米国のSOX法と日本版SOX法の違いを取り上げる。また、IT業務処理統制整備への手順、BAMによる業務処理統制の効果を説明するほか、欧米の大手企業の事例からポイントを紹介し、BAMがいかに内部統制に効果的なものかを示している。
 章は前後するが、第4章で米国モトローラ社でのBAM導入事例をしており、BAMの効果を実感できそうだ。攻めのIT投資でビジネスの効率化を考える経営者、マネージャ向け。(ライター・生井俊)
 
可視化経営──経営のコックピットを機能強化せよ
●長尾一洋、本道純一=著
●中央経済社 2006年10月
●2200円+税 4-502-38860-2
 これまで情報共有といっても、経営者側からの一方的な発信でしかなかった。本書は、双方向の理解が深まる「可視化経営」を取り入れることで、企業体質の強化し、今後の危機を乗り越えていける経営のあり方を提言する。
 ユニークなのは、可視化経営を孫子・孔子の考え方からひも解いている点。孫子の兵法を引用し、現場の動きをつかんでいなければ組織を動かすことができず、ビジネス(戦争)に勝ち抜くことができないという。また、孔子の論語から、「視る」「観る」「察する」の3つの「みる」を紹介し、これがそろってこそ、表面的ではない「診る」につながると説く。
 また、部門間の可視化にも言及する。お互いが見えることで相互理解ができ、その理解が深まることで信頼を生む。そして、相互信頼ができあがると、自然に「ナレッジ・コラボレーション」と呼ぶ相互作用が生まれる。これは、IT日報を導入した事例から実証されており、可視化がうまくいっている企業は、日報コメントの入れ合いが始まり、部門間・拠点間・社員間の相互作用が生まれているという。
 可視化経営のための理論だけでなく、全社共有のためのワークショップ風景(写真)や、経営情報可視化システムのスクリーンショットを盛り込むなど、実践でも活用できる内容だ。(ライター・生井俊)
 
BPMがビジネスを変える──BPRを超える「業務プロセスの継続的改革」
●日沖 博道=著
●日経BP企画 2006年8月
●1800円+税 4-86130-183-1
 企業改革に活用するに当たっては、BPMはほかの選択肢に比べより効果的なマネジメント手法である。本書は、企業経営者らが、企業改革とその実現のためのIT化を進める際に、何をどう考える必要があるかの骨子を示し、BPMの活用を提案している。
 大規模な情報システム構築プロジェクトが終了した後には、往々にして役員クラスから利用者部門まで「関係者全員が不満足」の構図が存在する。その原因の1つには、「戦略意図が不明確なままのシステム化」という出発点でのボタンの掛け違いがある。もう1つには、要件定義を進めていく手法が旧態依然としたもので、あるべきビジネスプロセスを関係者で共有するなどの視点に欠けていることが挙げられる。
 改革プロジェクトで現れる典型的障害を克服する視点の多くは、BPMアプローチに含まれる。システムの要件定義に一気に突入するのではなく、まず「構想策定」というフェイズにおいて改革の全体像を描いてから、次の具現化フェイズでビジネスプロセス/組織・制度/情報システムの詳細を設計することを推奨する。このフェイズの実施により、「重点志向の欠如」と「目的意識の希薄化」を克服できる可能性が高まる、と説く。
 ほかにもBPMアプローチによる改革実践について、ソリューション領域別に解説を加えている。企業改革、業務改革の旗手となる経営層、プロジェクトマネージャ向け。(ライター・生井俊)
 
AI 「最高の瞬間」を引きだす組織開発──未来志向の“問いかけ”が会社を救う
●デビッド・L・クーパーライダー、ダイアナ・ウィットニー=著、本間正人=監訳、市瀬博基=訳
●PHP研究所 2006年6月
●1400円+税 4-569-65438-X
 組織開発や変革のマネジメントにおいて、潜在力を引き出す組織革命を引き起こすというAI(アプリシアティブ・インクワイアリー)。組織変革のマネジメントにおいて、従来の「問題解決志向」のベクトルを、反対の強みを引き出す方向に向ける点に特徴がある。
 AIとは、人や組織、そしてそれを取り巻く社会において何が最高であるかを、組織メンバーの協業を通じて探究し、その中でお互いを高め合う活動だ。ここで重要になるのは、プロセスへの介入により変革を実現することではなく、変革の方向性を探し求め、創造し、常に新しいことにチャレンジすることである。
 AIは、対話を通じて潜在力を引き出していく。決まったやり方があるわけではないが、AIを通じて組織変革を行うほとんどの組織で4Dサイクルの過程が見られる。4Dは、ディスカバリー(潜在力発見)、ドリーム(理想像構築)、デザイン(変革設計)、デスティニー(変革実現)から構成され、潜在力活性化テーマにより互いを結び合わせている。
 AI=4Dサイクルととらえがちだが、そういう概念ではない。また、一方でAIにより、人々が真に互いを知り合う機会をもたらす、という。組織開発や変革において、やはり、人が互いに最高の部分を認め合い、前向きな姿勢で分かち合うのが大切だと再認識できる一冊だ。(ライター・生井俊)
 
バランス・スコアカード経営実践マニュアル──効果が上がるBSCプロジェクトの進め方
●バランス・スコアカード・フォーラム=編
●中央経済社 2004年12月
●2400円+税 4-502-24810-X
 戦略マネジメントシステムのバランス・スコアカード(BSC)は、書物や翻訳により解釈がまちまちだ。それを正しく理解し、効率的かつ効果的な導入と運用で、経営システム革新の推進、企業・組織のトランスフォーメーション実現を意図しているのが本書。2部構成になっており、前半は企業のシステムアセスメントに着目する。後半は、アセスメントを受けて、BSCを導入・運営するプロジェクトの進め方をまとめる。
 第1部のシステムアセスメント編は、経営システムを簡易診断し、BSCの必要性、狙い、導入時の障害の明確化するのが目的。付表の「アセスメント項目」「経営システム要件と成熟度の評価ステップ」を利用し、簡易診断することにより、経営システム革新プログラムの成果が目に見えるようになる。
 第2部のBSCプロジェクト編は、企画準備・構築・運用・展開の4つの章からなる。プロジェクトの流れが分かる図や、進ちょく状況がYes・No・N/A(該当なし)で確認できるチェックリストなどを随所に盛り込む。また、ISO 9000/14000シリーズやそのほかのマネジメントシステムとの調整にも言及する。
 概論だけではなく、実務レベルでの取り組みがまとめられており、BSCを導入したいマネージャからBSCを運用している担当者まで、幅広い層向けの内容といえる。(ライター・生井俊)

各書評にあるボタンをクリックすると、オンライン書店で、その書籍を注文することができます。詳しくはクリックして表示されるページをご覧ください。

この記事に対するご意見をお寄せください managemail@atmarkit.co.jp

キャリアアップ

@IT Sepcial

「ITmedia マーケティング」新着記事

生成AIの米中依存、地政学リスクに――BCGが警告
ボストンコンサルティンググループ(BCG)の戦略シンクタンクであるBCGヘンダーソン研究...

Webサイトリニューアル時のSEOチェックポイント 順位を落とさないために必須の12の対応を解説
何らかの目的があって進めるリニューアルではあるものの、検索順位がその代償になってし...

ハッシュタグはオワコン? イーロン・マスク氏も「使うな」と投稿、その意図は……
ハッシュ記号(#)とキーワードを連結させることで投稿のトピックを明示する「ハッシュタ...