■システムエンジニア |
ウチのシステムはなぜ使えない――SEとユーザの失敗学 | ||
●岡嶋 裕史=著 ●光文社新書 2008年3月 ●740円+税 978-4-334-03444-3 |
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情報システムに不満を抱いている人は多い。現状における情報システムへの不満の根は、技術者の作りたいものと、顧客がほしいものが合致していないことにある。本書は、情報システム開発の中でも技術ではなく、SEに着目して、その疑問を解く。 SE(システム・エンジニア)は技術職だが、IT業界の技術者=SEと等式で結べるかというとそうでもない。IT業界には、SEではない技術者もたくさんいるからだ。その技術者は、開発系技術者と運用系技術者の2つに大別でき、そしてこの両者は恐ろしく仲が悪い。前者を上流工程、後者を下流工程と呼ぶことがあり、職業に貴賎はないといいつつも、なんとなく上流の方が偉そうだ。仲が悪いのは、現場でもこの感覚が染みついているためだ、とする。 ユーザーが何らかの案件をIT企業に依頼する場合、まずどこの会社にお願いするのかを決めなければいけない。この時点で当該案件の成否がかなりの確度で決まる。考慮すべき点は、IT企業の成り立ちに関する部分だ。IT企業はメーカー系、ユーザー系、独立系の3種類に分類され、それぞれに利点と欠点がある。頼みたい案件の種類に応じて選択することが重要になる、と説明する。 SEの仕事とIT業界の構造を理解したうえでシステム開発の発注ができれば、お願いしたいものと出来上がるものとのミスマッチを最小限に抑えられるという。本書の最後にあるように、ユーザーがSEを御用聞きのように見下したり、逆に崇めてしまっている現状を打破し、ビジネスパートナーとして対等な関係を築くことが大切だろう。(ライター・生井俊) |
ハイコンセプト──「新しいこと」を考え出す人の時代 | ||
●ダニエル・ピンク=著/大前 研一=訳 ●三笠書房 2006年5月 ●1900円+税 4-8379-5666-1 |
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この20〜30年ほどの間、世の中はある種の知識を持った、特定の人たちのものだった。だが、これからの世界で成功を収めるのは、それとは違った能力を持つ人だという。本書ではその6つの重要な資質についてまとめている。 過去150年間を振り返ると、“工業の時代”では、強靱(きょうじん)な肉体と不屈の精神力が必要だった。“情報の時代”では、左脳主導思考に熟達しているナレッジワーカーが中心的な役割を担ってきた。やがて「豊かさ」「アジア」「オートメーション」という3つの要因が浸透し、強まると、“コンセプトの時代”となる。そこで中心となる登場人物は「右脳主導思考」を身に付けているのが特徴だ。今後は、経済も社会も、ますます右脳に頼り、築かれるようになっていくと予測する(第1部)。 コンセプトの時代には、左脳主導の考え方を、6つの不可欠な「右脳主導の資質」を身に付けることで補う必要がある。その6つの感性(センス)とは、機能だけでなく「デザイン」、議論よりは「物語」、個別よりも「全体の調和」、理論ではなく「共感」、まじめだけでなく「遊び心」、モノよりも「生きがい」から構成される。これらは、ますます私たちの生活を左右し、世の中を形作っていくという(第2部)。 これらの能力は、基本的に人間に備わった資質であるといい、その感性を身に付け、鍛えるための演習問題や参考文献を数多く収録している。クリエイティブな仕事をしている人だけでなく、仕事をクリエイティブに変えるために役立つ。(ライター・生井俊) |
日本のSEはこれからどうなるのか──大失業時代を生き抜くための考え方 | ||
●萩原佳明=著 ●翔泳社 2005年3月 ●1500円+税 4-7981-0806-5 |
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SEがその他大勢から抜け出すためにはどうすればいいのか。SEだけでなく異業種の人たちも巻き込んだインタビューを敢行し、まとめたもの。 第1章の話し手は、日本人SEと仕事をしたことがある外国人。例えば、新しい技術を使う傾向があるという韓国で、受注してからASPへの書き換えが必要になった案件があったとき、日本人SEは「Perlしかしらないから」と消極的だったという。このような諸外国との考え方の違いをメインに扱う。 第2章は、SEではない手品師、農家、マンガ家などへのインタビュー。マンガ家・しりあがり寿氏は、マンガのクオリティについて「時間をかければかけるだけ、いいアイデアになる確率が高まるだけなのね」と答えている。これは、「別に時間をかけたからといって、確実にいいものができるわけではない」という意味で、SEの働き方への警鐘にも聞こえる。 このインタビューは結論がない。それでも、他者とは違った角度でものを見たいと考えているSEには一読をオススメしたい。(ライター・生井俊) |
悩めるSEマネジャー119番 | ||
●上級SE教育研究会=編 ●日刊工業新聞社 2004年9月 ●2100円+税 4-526-05344-9 |
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『SEマネジャー心得ノート』の続編で、Q&A形式でSEマネジャーの悩みに対してアドバイスしていく構成。1つのテーマに、1ページないし2ページで解説されている。 SEマネジャーに期待される役割は、業務目標の遂行、部下の育成、業務の改善や仕事の標準化、組織間の調整という4項目が軸になっている。これらの軸をうまく回していくためには、マネジメント・リーダーシップの在り方が問われる。 第1章では、SEマネジャーになったが、すべきことが見当たらない、分からない人からの質問が並ぶ。「リーダーシップをうまく発揮できない」点については、チームへの思いをしっかりと整理し、自らの価値観を部下と共有できるよう熱く伝える努力が必要だという。また、「マネジャーになってまずやるべきこと」は、問題・課題の掌握と部下の人心の掌握であると、端的で理解しやすい。 ほかには、「上司から与えられた目標が受け身的で面白くない」「外部委託での管理法などが分からない」といったような「役割や位置付け」について(第4章)や、「部下の育成」について(第5章)が特に役立つことだろう。(ライター・生井俊) |
SEマネジャー心得ノート | ||
●泉田浩二、竹野内勝次、中谷正明、久井信也=著 ●日刊工業新聞社 2004年3月 ●2100円+税 ISBN4-526-05262-0 |
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書名に「ノート」とあるが、システムインテグレータあるいは社内SEを抱える企業情報システム部門のマネージャの心得をまとめたもので、「教科書」や「チェックシート」として使える1冊。 まえがきに、SEマネージャに必要なのは「人質(じんしつ)」だとある。本書は、知的にシステムを作る人材とはどういうものか、という大きなテーマを背景に、人材育成やプロジェクトを遂行するためのプロセスを紹介する。 「SEスキルの人材育成基本計画表」やプロジェクトの「案件チェックリスト(受注時)」など、若干の修正を加えれば、実際のプロジェクトやマネジメントのシーンで活用できるフォームを多く掲載する。 ユニークなのは第11章の「悩めるSEマネジャー・Q&A」。「優れたSEがいるが部下の育成には興味をもたない」「いわれたことしかしない部下にどう対処したらよいか」などの問いに、業界の流れやコミュニケーションといった観点から簡潔に答えている。 本書はこれから部下を持つSEや、自分のマネジメントの方向性を確認したいマネージャに最適だ。(ライター:生井俊) |
SEのための顧客提案術──ITキーワードをわかりやすく説明するコツ | ||
●小林秀雄=著 ●日経BP社 2003年9月 ●1400円+税 ISBN4-8222-1565-2 |
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ITベンダ側の提案型SEやセールス・エンジニア向けに、「IP電話」「ICタグ」「IPv6」「ERP」といった言葉とそれらのソリューションの使われ方、提案の仕方を解説した1冊。 ITサービスベンダのSEと営業マンがユーザー企業の担当者に提案を行うシチュエーションの会話形式で書かれており、非常に読みやすい。ITキーワードの解説本としても分かりやすいので、IT用語に詳しくない方、提案を受ける側のユーザー企業・担当者にとっても、ちょうどよいガイドブックになるだろう。 |
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