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■ビジネス
 
ライフサイクルイノベーション──成熟市場+コモディティ化に効く14のイノベーション
●ジェフリー・ムーア=著、栗原潔=訳
●翔泳社 2006年5月
●2000円+税 4-7981-1121-X
 企業の生存競争において、「永遠にイノベーションを続けるにはどうしたらよいか」というのは、基本的かつ重要な問いだ。イノベーションを続けることは、単なる熱意の問題ではなく、入念な計画によるものだ。本書では、イノベーションと慣性力を1つのシステムとして理解するための枠組みとしてコア/コンテキスト分析を提唱している。
 コアとは差別化を作り出す企業活動であり、イノベーションが重要な役割を果たす。イノベーションは、市場カテゴリが成熟するに従い、その効果も変化してくる。一方、コンテキストとは、コア以外のすべての企業活動を指す。重要ではあるが、差別化の源泉ではない。しかし、慣性力を扱う場合には重要な位置を占める。
 本書では、イノベーションをカテゴリ成熟化ライフサイクルに合わせて14種類に分類する。対策がたくさんあるという点では楽観的になれるが、多くの選択肢から1つのベクトルを選び、フォーカスするのは簡単ではない。ムーアは戦略立案のため、7ステップからなるプロセスを提唱する。
 このほか、コンテキストから資源を抜き出す手法、飛躍的生産性向上を目指すためのアウトソーシングの活用、コアに向けた資源の再分配について言及している。(ライター・生井俊)
リエンジニアリング革命──企業を根本から変える業務革新 (文庫版)
●M.ハマー、J.チャンピー=著、野中郁次郎=監訳
●日本経済新聞社 2002年11月
●695円+税 ISBN4-532-19154-8
 1990年代を席巻した経営キーワード「リエンジニアリング」の原典。ここで紹介した文庫版は2002年発行だが、オリジナル英語版の発行は1993年5月(日本語版は2003年11月)──10年前になる。中に挙げられている実例も、今日的な視点で見れば「サプライチェーン・マネジメント」「コンカレント・エンジニアリング」「エンパワーメント」などでソリューションそのものには目新しさはないが、改革への取り組み方などの面は参考になる。本書は言う。「繰り返して言うと、情報技術の真の力は古いプロセスを改善することにあるのではなく、古いルールを壊し、新しい仕事のやり方を創造すること、つまりリエンジニアリングすることにある」。
クリック&モルタル
●デビッド・S・ポトラック、テリー・ピアース=著 坂和敏=訳 ビジネス・アーキテクツ=監訳
●翔泳社 2000年11月
●2000円+税 ISBN4-88135-933-9
 ネットバブル、ドットコムブームの最中、オンライン証券会社として勇名を馳せたチャールズ・シュワブのCEOが著したビジネス書。クリック&モルタルとは、実店舗とオンラインの相乗効果を狙ったビジネス戦略のことで、チャールズ・シュワブはその代表例とされたので、いかにも「クリック&モルタル」というビジネスモデルの解説書のようにも思われる。
 しかし本書は経営者やビジネスリーダー向けに、ビジネスへの情熱や企業文化の大切さを繰り返し説く。その中で「技術を理解し、それを作る人間を理解する」という章が設けられているが、ここでも技術そのものの解説ではなく、技術者とどう付き合い、彼らの“情熱”を引き出すことの重要性を述べている。
 そして最後に言う。「インターネットは物の見え方を変え、スピードを変える。だが、ビジネスの原則、すなわち行動の裏にある核心は、けっして変わることはない。果てしなく成長し続ける技術の世界において、成功の決定要因はますます人間におかれている」
デザイン・ルール──モジュール化パワー
●カーリス・Y・ボールドウィン、キム・B・クラーク=著、安藤晴彦=訳
●東洋経済新報社 2004年4月
●5200円+税 ISBN4-492-52145-3
 IT業界のイノベーション、ダイナミズムはどこから来るのか? その推進力としての「モジュール化」についてまとめられた話題の1冊。
 本書では、コンピュータという工業製品がモジュール化されたことにより、コンピュータ産業全体がモジュール化したことを述べ、独立して動くモジュール(ベンチャー企業)の集合体となったコンピュータ産業は極めてダイナミックな実験、参入、退出が繰り返されることから、イノベーティブな産業進化が行われるようになったとする。そこにはモジュール企業同士の戦いだけではなく、モジュールの配置を決めるアーキテクト企業(そしてアーキテクチャ)同士の熾烈な戦いがあった。すなわちモジュール化は、工業製品であれ、企業組織であれ、産業全体であれ、ダイナミックな進化を誘発するというのだ。
 「システム/360」や「UNIX」の開発の歴史に細かく踏み入りながら、“モジュール化”やその前提となる“デザイン・ルール”について、その特性や条件を解説する。経済学・経営学分野の研究書だが、コンピュータ工学・ソフトウェア工学の用語で書かれているので、エンジニアには読みやすいかもしれない。
 “モジュール化”を語るうえでは、必読の書だ。

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