■SCM |
図解 SCMのすべてがわかる本――ムダをなくして儲け続ける | ||
●石川 和幸=著 ●日本実業出版社 2008年6月 ●1800円+税 978-4-534-04398-6 |
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かつてSCM改革を、SCMシステムを導入したりSCM組織を作ればよいといった「小手先の改善」と勘違いした組織が多かった。本書は、もう一度SCM改革が必要になった組織、これから手掛ける企業向けに、SCMをサプライチェーン“マネジメント”として構築する方法を解説する。 SCMも通常のマネジメント同様にPDCAを当てはめる活動だ。そのSCMで最も遅れているのが、「指標管理」に関する問題。単なる儀式と化している管理指標の報告会も多いが、本来はPDCAサイクルの中に位置付けられることで初めてその意味を持つ。PDCAサイクルに乗せ、よりよいSCMにする推進装置(ドライバー)にするためにも、計画−実行の差を検証し、アクションとしての意志決定に役立つ指標にしていく必要があり、そのフレームワークとしてバランスト・スコアカードが有用だ。 より強力なSCMのためには、“ひも”解きと“編み上げ”が必要だ。ひもを解きほぐし、業務を見極めるためには「製品階層」「拠点・組織階層」「対象期間と時間単位(バケット)」「制約条件」など7つの項目があり、これらを厳密に解き明かして定義していかない限り、きちんとした業務設計ができない。ひもを解くことにより、SCM業務としてどんな観点を持って考えるべきかが明らかになる、という。 SCMの構築手順のポイントを理解するだけでなく、SCM改革の名の下にガタガタになった組織を再構築するためには、本書のような視点が有効だろう。(ライター・生井俊) |
だから、あなたの会社の「SCM」は失敗する | ||
●石川 和幸=著 ●日刊工業新聞社 2008年2月 ●2000円+税 978-4-526-06021-2 |
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SCMが当たり前になった現在でも、SCMがうまく行かず、たくさんの課題が残されている。本書では、なぜSCM改革は難しく失敗する可能性が高いのか、そしてどうすればうまくいくのかを多くの事例を下敷きに解き明かす。 SCM業務がつながらない原因の1つに、営業の「ガンバリズム」による在庫滞留が挙げられる。営業マンも、常に計画通りの目標を達成できるとは限らない。しかし、上司からは目標必達をいわれ、目標を下げることはダブー視される。「どうせ売れないだろう」と生産側で勝手に減産することもできない。そうなると、大幅な販売計画未達で在庫が大量に残ることがある。それを避けるためにも、需要計画と販売計画は別に管理し、生産や調達に対してアクセルとブレーキを踏める業務の在り方を、需要計画と連動させて決めていく。 SCM改革体制を確立するコツとして、社内のメンバーだけでプロジェクトを立ち上げると、過去の業務上のやり取りが記憶に残って、感情的な対立を生みやすくなると指摘。このような状況を避けるには、まずデータに基づいて話し合うことを宣言して、問題として挙がっていることがそもそも事実なのか、発生したときのデータはどのようなものか、発生の頻度や影響はどれほどかを踏まえて話し合う。事実とデータを元に話すことで、単なる個人の感情的な偏りを排して、議論の俎上に載せることが大切だ、という。 SCMのチェーンをいかにつなげるか、人がかかわる部分の不確定要素をどう見極めるかについてかなりページを割いた本書。課題になっている部分の見出しを拾い読みするだけでも参考になる。(ライター・生井俊) |
企業のレジリエンシーと事業継続マネジメント──サプライチェーン途絶! その時企業はどうしたか | ||
●ヨッシー・シェフィー=著/渡辺 研司、黄野 吉博=監訳 ●日刊工業新聞社 2007年2月 3400円+税 978-4-526-05826-4 |
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外圧により変形したものが、元の形に戻る復元力を「レジリエンシー」という。本書では、企業活動における脆弱性の軽減とレジリエンシーの増強を中心のテーマに、サプライチェーン上に生じる災害・事故・事件の影響について研究成果をまとめたものだ。 冒頭、2000年に起きた、フィリップス社の落雷による工場火災からスタートする。火災は軽微に思われたが、半導体工場のクリーンルームで起きたために、初期消火活動の約10分間で携帯電話数百万台相当分のICが被害を受けた。同社の主要顧客であるノキアとエリクソンは、この情報が流れたときにそれぞれがまったく異なる対応をとった。 1週間の遅延予想を受けたノキアは、同社工場から来る5種類のICを特別観察リストに載せた。2週間後に復旧の遅れを知ったときには、30人におよぶチームを結成し、その問題解決にあたった。一方のエリクソンは、受け身。連絡を受け取った時点では、その扱いはエンジニアからエンジニアへの連絡事項にすぎなかった。深刻さに気付いたときには、ノキアがフィリップス社の余剰生産能力まで押さえた後。結果的に、同社は最初の3カ月間で4億3000万ドル〜5億7000万ドルの損失があったと報告している。 企業活動のグローバル化などにより、サプライチェーンの脆弱性が高まっている。それを軽減させるセキュリティの増強には、防護システムの多重化、ニアミスや「ヒヤリハット」の解析・対応はもちろん、ときには競合他社との協力も必要になる。レジリエンシーの増強には、災害・事故・事件の「原因」についての考察は不要で、これらの「対策」を考えるべきだと説く。 サプライチェーンの脆弱性の解明、需要予測の必要性、柔軟性の構築など、サプライチェーンを構築する企業・業界には示唆に富んだ内容。企業のトラブル対応を克明に記した読み物としても楽しめる。(ライター・生井俊) |
オンデマンド・ロジスティクス──経営成果を最大化する統合的物流管理 | ||
●有安健二=編著、水谷浩二=監修 ●ダイヤモンド社 2004年6月 ●2200円+税 ISBN4-478-37472-4 |
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顧客の要望にタイムリーに対応する一連の物流業務の取り組み──オンデマンド・ロジスティクスを提示し、グローバルな調達・生産・配送流通の事例を通じて、さまざまな概念の定義、影響力、構造、最適化などについて解説する。 第2章では「デマンドマネジメントとサプライマネジメント」について取り上げ、それぞれ計画系システムと実行系システムと分けるのではなく、一体のものとしてとらえるべきだと述べる。 第4章では、RFIDなどのツールとインターネットを活用すれば、在庫の可視性が高まり、また在庫量と在庫(仕掛)期間をグラフ化した流動数図表を利用することで、サプライチェーンでの在庫動態がふかんできるため、在庫量の最適化につながると説く。また、キャリア選択問題、配車計画問題などを取り上げている。 各章はいくつかの節に分かれ、2ページから10ページ程度で構成されるため、テンポ良く読み進めることができる。図表なども盛り込み、物流全体を見渡せる分かりやすい内容だ。部門の担当者だけでなく情報マネージャにも読んで欲しい。(ライター・生井俊) |
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