個人が“放送”できるポッドキャストって?5分でネットがわかるシリーズ(3)(5/5 ページ)

» 2006年09月05日 00時00分 公開
[江原顕雄@IT]
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笛吹けど聞かず? ポッドキャスティングの今後

  自動更新をしてくれてダウンロード、ポータブルプレーヤにもオートマチックに音楽データが転送され、いつでもどこでも好きなときに聞くことができるポッドキャスティング。アメリカでは非常に人気がある技術ですが、実は国内ではあまり盛り上がっていません。

  ブログを書いたり、閲覧しているユーザーは周りを見ればたくさんいることでしょう。しかし、ポッドキャスティングを聞いている人や番組を作っている人は、あなたの周辺に何人ぐらいいますか?

  日本国内のポッドキャスティングが、やや盛り上がりに欠けている原因について考えてみましょう。

○原因その1 リスナーが流し聞きできない

  ブログ・新聞、書籍などの文字情報は流し読みができ、必要な部分や重要な個所だけを読むことができます。8000字ほどある長〜いブログのエントリーでも、見出しをチェックしつつ、要点を押さえる読み方をすれば、2〜3分ほどの時間しかかかりません。しかし、ポッドキャスティングで5分の番組を聞こうと思ったら、絶対に5分かかってしまいます。最初から最後までじーっと聞く。この「聞く人の時間を固定化させる」点が、せっかちなユーザーが多いインターネットでは、大きなウイークポイントです。動画ファイルの場合は早送り・スキップをしながら必要な個所・面白そうなところでストップし、そこから再生するといったスタイルも可能ですが、音声のみの場合はうまくこれができません。1.5倍速再生などを使えば時間短縮は可能ですが、そこまでして聞いているユーザーは多くありません。

○原因その2 アメリカ人ほど日本人はラジオを聞かない!?

 アメリカのラジオ局の数は無数といわれており、ラジオメディアを聞く時間は平均年1000時間以上と、ほかのメディアを抜いてダントツ(*1)という報告があるように、アメリカは非常にラジオメディアが盛んな国です。それに比べて日本人はアメリカ人ほどラジオを聞きません。なのでインターネットラジオも盛り上がらないのは、当然ではないか?という見方もあります。

*1 電波行政「混信なければ許可」が基本 規制の仕方も地域に軸足 - 勝毎ジャーナル

○原因その3 著作権の問題で音楽放送が難しかった

  日本はラジオで音楽を流す場合、音楽に付随する著作権の問題をクリアしなければなりません。同じ名前のラジオ番組でも電波で流されるプログラムと、ポッドキャストの番組では構成や内容が違う場合があります。スポンサーとの問題もありますが、ラジオ放送で流した音楽を、そのままポッドキャストで利用できないという、音楽著作権がネックとなっていました。

  そんな動きを受けて、音楽著作権を管理するJASRACは、ポッドキャスティングの音楽著作権料に関する新料率適用開始について今年6月に発表をしました(*2)。ネット上ですべて申請ができ(*3)、JASRACも頑張っているようですが、個人でここまでの手続きをしてまで番組を作成するのはなかなか難しいものがあります。

*2 「有期限ダウンロード」「音声番組」の新料率適用開始について 社団法人日本音楽著作権協会

*3 JASRACネットワーク課

○原因その4 ブログと違って気軽に作成できない!

  ポッドキャスティングを始めるには、音声ファイルを作成してアップロードするだけなので、配信についてはとても気軽にできます。しかし、肝心の音声ファイルの作成はなかなか簡単ではありません。まず録音をするための機材をそろえなければなりません。次に録音後の編集作業とその環境、番組の構成作りやBGM・ジングルの用意などなど、文字を書くだけのブログに比べると非常に手間が掛かってしまいます。これらの作業をしない番組は大抵魅力に乏しく、結局リスナーは聞いてくれません。

 ポッドキャスティングは、日本において必要以上に騒がれ過ぎました。現在は音楽著作権の問題がクリアになり、環境が少しずつ整ってきていますが、もともと「ラジオ」自体が、現在の日本ではマイナーメディアであるので、いま以上の発展は一筋縄ではいかないでしょう。

 今後は「enclosure」タグを使った音声以外のデータ(文書ファイルや動画データ)を配信するポッドキャスティングサービスに注目です。

 特に音声ではなく動画データを配信する「ビデオキャスト」は、動画再生機能を持ったiPodやゲーム端末の普及により、今後ますます広まっていくでしょう。

 これからの「enclosure」タグを活用は、ワードファイルの英会話テキストとその音声や、毎日配布する英会話学校や、株価のリポートを更新ごとにPDFで配信する証券会社のサービスなどに応用が拡がる可能性があります。


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