ビジネスマナー無視は転職失敗の道あなたの転職活動、デバッグすべし(7)

ITエンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。

» 2007年07月25日 00時00分 公開
[田中大介パソナキャリア]

転職活動のマナーは大丈夫ですか

 学生時代の就職活動はどのように行いましたか。数十、数百社の企業にWeb(ある程度の年齢以上の方は葉書)でエントリし、セミナーが重なったらキャンセル、内定を数多く取れたらその中から1社に決めて、ほかは辞退。しかし、いまだったら社会人としてビジネスマナーを身に付け、あのころのような失礼な対応はしないと思う方がほとんどでしょう。

 しかし、転職活動となると学生時代の気持ちを思い出してしまうのか、仕事でないから適当で構わないと思ってしまうのか、基本的なビジネスマナーを忘れてしまう方もいるようです。実際に遭遇した、ビジネスマナーを忘れてしまった方の転職事例をご紹介しましょう。

入社を決めた後、ダメもとで応募した企業から連絡が

 Nさん(26歳)は、大学卒業後、2次請けのソフトハウスで会計システムの開発を中心に行っていました。会計やシステムの知識は身に付いたものの、友人と比較して年収が低く、エンドユーザーとも接する機会がなかったため、キャリアアップできる環境を求めて転職活動を行いました。

 上流工程の経験はないものの会計の知識を持っているNさんは、売り手市場であることを実感しました。大手のシステムインテグレータやパッケージベンダなど、自分の経験・スキルが応募要件を満たしている企業は多数あります。その中で、社風が合いそうな企業に応募することにしました。

 順調に書類選考は進み、応募してから1週間以内に、以前から気になっていたP社、Q社を含め4社から面接の通知がきました。P社、Q社は、以前からの印象どおり、雰囲気がよさそうな会社です。P社、Q社の面接は順調に進み、最終面接まで進みました。

 最終面接も無事に通過し、最終的にNさんはP社に入社することに決めました。条件提示面接では、役員の方に「一緒に頑張ろう」と握手され、退職準備を進めることにしました。入社承諾書には1カ月後の○月1日に入社すると記入して提出しました。

 そんな中、ダメもとで応募したので忘れていた大手のS社の書類選考が通過したという連絡がきたのです。P社に入社を決めたものの、S社のことが気になって仕方ありません。退職日まで有給休暇が残っていたので、その休暇時にS社との面接に挑んだのです。そして自分でも驚いたのですが、最終面接に進むことになったのです。

 しかし、S社の最終面接日はP社の入社日です。どうすべきか、Nさんはぎりぎりまで迷った末、入社日の前日にP社に連絡しました。

 「明日の入社、お断りしようと思うのですが……」

 人事の方にとっては、寝耳に水です。

 「何があったのですか?」

 驚いた人事の方の返事にも答えず、Nさんは一方的に謝って電話を切ってしまいました。

 すでにP社では、NさんのPCや机・文具などを準備しています。Nさんの入社が決まったので、研修担当の人はNさんのための研修の予定を組んでいました。1次面接を行った現場では、Nさんの入社を心待ちにしており、今後の業務のアサインと引き継ぎのスケジュールが決まっていたのです。

 その後、NさんはS社の面接で不合格となりました。P社に再度入社できないか相談したのですが、断られたのはいうまでもありません。

やっぱり狭いIT業界

 思ったよりもIT業界は狭い業界です。今回、迷惑をかけたP社といつ仕事を一緒にすることになるとも限りません。

 IT業界の人事の方には、かなりの転職を経験された方もいらっしゃいます。合併をはじめ、企業の再編もよくあるため、意図せず所属企業が変わる方も少なくありません。転職に当たっては、同じIT業界内の人事として転職する方も多いので、数年前の面接で会った担当者と、別の会社の面接でも会うことに、というケースも実際に存在します。

 一度転職しようとして不合格となっても、一定の期間がたてば、再度転職にリトライできる企業は多くあります。しかし、今回のNさんのような場合、再度応募することは難しいでしょう。

 Nさんは、一時は入社を決めたほど自分に合った(と思っていた)企業に、転職する可能性をつぶしてしまったのです。

転職にも重要なビジネスマナー

 転職活動は、プライベートな活動だと考えてしまい、ビジネスマナーを二の次にしてしまう方もいらっしゃるようです。しかし、企業と接点を持つので、完全な個人活動とは到底いえません。転職活動でお会いした方とは、将来一緒にビジネスを行う可能性だって十分あるのです。ですから、転職活動においても、マナーを忘れずに行動することをお勧めします。

筆者紹介

パソナキャリア

田中大介

システムインテグレータにて営業・プリセールス、システムエンジニアと幅広い業務を経験。その後、人材紹介会社でIT業界を中心とした中途採用のコンサルティング営業を行った後、現在はITエンジニアの方を中心に転職サポートを行っている。



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