ITエンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。
インターネットを利用した転職活動や情報収集が当たり前になりました。いまではインターネット上に掲載されている多くの求人情報から、いままでの経験、今後の希望など詳細な条件設定をして、条件を絞り込んで求人を探す。数十件のヒットした求人の中から自分の気に入った企業に応募する。一般的なインターネットを利用した転職活動のイメージは、このような感じではないでしょうか。
しかし、インターネットだけで転職活動をして求人を見つけ、その後面接などを経て転職しても、うまくいくとは限りません。
今回紹介するのは、インターネットを利用して転職活動を行ったものの、イメージと異なり短期で退職し、弊社に相談にいらっしゃったNさんの例です。
人と接することができ、成果の手応えを感じることができる職場を求めて転職したはずが……。
Nさんは、初め社員数20人程度のソフトハウスでITエンジニアとして働いていました。顧客視点を大切にして、システムの保守・管理業務を行っていたものの、サービスに対する顧客の反応がなかなか得られず、成果に対する手応えがないことに不満を感じて転職を決意したそうです。
より人とコミュニケーションを取って業務を進められる環境で、交渉力・プレゼンテーション能力などを身に付けたいという希望がありました。「コミュニケーションを積極的に取れる仕事、交渉力を身に付けられる環境、成果に対する手応え=営業」と考え、営業に的を絞り、転職活動を始めました。その後、インターネットで応募した企業にとんとん拍子で選考が進み、入社を決めたのです。
しかし、入社したのはいいものの、ITエンジニアと営業では業務の進め方が異なり、仕事に慣れるまでにもかなりの時間を要しました。さらに、成果が結果に出やすいとして魅力を感じたコミッション制ですが、当然のことながら結果が出ないと厳しいという現実を、入社してから理解しました。
周囲も1年足らずで離職・転職する人が多く、日々の残業時間はITエンジニア時代のピーク時と同じ程度です。それで年収はITエンジニア職のときと比べ、ちょうど残業代がない程度の金額でした。Nさんはそれで離職したのです。
前回の転職では、インターネットで1人で転職活動を行ったNさんですが、転職の失敗が1人だけで行ったことにあるかもしれないと考え、人材紹介会社に登録することにしたのです。
キャリアカウンセリングでは、大学卒業時になぜソフトハウスに入社を決めたのか、ソフトハウスではどんな仕事をし、何を考えていたのか、ということなど細かく質問を受けました。
その中でも、「コミュニケーションを積極的に取れる仕事、交渉力を身に付けられる環境、成果に対する手応え」を求めて転職をしたとNさんは語ってくれました。しかしよくよく話を聞くと、フラストレーションの原因は、違うところにあったのです。
それは、下請け会社という立場上、直接顧客と接するチャンスが少ないこと、自分を評価する上司が自分の業務をほとんど見ておらず、評価に納得できないことだったのです。
もともとは、ITエンジニアとして技術を磨き、計画的に物事を進めていくことに対して興味を持っていたため、ユーザーに近い立場でITエンジニアとして活躍できる求人を中心に探すことにして転職活動を行うことにしました。
顧客視点を大切にしてシステムの保守・管理業務を行っていたことが評価され、Nさんは大手のユーザー系システムインテグレータに入社することができました。現在は、プロジェクトリーダー候補として、業務系システム構築のプロジェクトで活躍しています。
今回のケースでは、そもそも求人検索をするに当たって、キャリアプランや、自分がしたいことなどを考えず、すぐに転職先を探してしまったことが失敗の原因でした。最終的には希望の仕事に転職できたから良かったものの、転職回数が多くなることにより、応募ができなくなる企業も存在します。
転職活動を始める前に、どんな仕事を探せばいいか、まずはキャリアカウンセリングを受けてみるのはいかがでしょうか。
遠藤貴之
神奈川県出身。IT関連企業にて6年間のエンジニア経験を経てパソナキャレント(現パソナキャリア)に。ITエンジニア経験を生かしながら、幅広いIT業界経験者の転職をサポートしている。
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