ITエンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。
「あなたは面接の際、どのようなことに気を付けていらっしゃいますか」
転職は人生を左右する重要な分岐点です。面接に際しても、しっかり事前準備をされてから臨まれる方も多くいらっしゃいます。
ただ、私のようなキャリアアドバイザーから見ると、選考=面接ととらえていらっしゃる方が非常に多いように見受けられます。
もちろん実際に面接内容で合否が決まることは多いのです。しかし、転職活動全体を見渡すと、それ以外にも合否に影響するポイントはあります。例えば、書類審査もそうですね。でも、面接以後にもポイントはあるのです。
今回はいったん「内定」の連絡をいただいたにもかかわらず、最終的に見送りとなってしまったBさんの事例を紹介します。その事例を皆さんの転職活動の参考にしていただければと思います。
Bさんは某有名私立大学を卒業後、大手独立系システムインテグレータのK社でシステムエンジニアとして活躍されていた28歳の男性です。
大学では情報学科に所属し、課外活動では英語のサークルに精を出すなど、充実した学生生活を送られました。K社入社後もJavaを用いたオープン系のシステムエンジニアとして順調にキャリアを積まれていました。
BさんはK社のコア事業であった金融系のプロジェクトを多数担当され、若くしてプロジェクトリーダーも経験されるなど、会社でも将来を嘱望されている人材だったようです。
ただ、はたから見れば順風満帆なキャリアを積まれているBさんも、キャリアプランで迷いをお持ちだったのです。
Bさんが弊社に来社されたのは、昨年の3月ごろでした。
面談の際のBさんの印象はコミュニケーション能力が高く、面接の評価も高いだろうと想像させる方でした。
お話を伺うと、Bさんは語学力を生かせる職業に転職したいとの希望をお持ちでした。
もともと海外志向のあるBさんは、大学時代にアジアを中心にさまざまな国を旅行されていました。就職活動のときもITへ進むか、語学力を生かせるような商社に行くか迷われましたが、結局内定したIT業界を選択されたとのお話でした。
ただ、中途採用となると話は別です。いくら語学力が優れているといっても年齢を考慮すると、未経験の職種への転職はハードルが高いのが現状です。そこで私はITエンジニアのスキルを最大限生かしながら、メインではないにせよ英語を使う機会が多少なりともある商社機能を持つIT企業への転職を提案させていただきました。
Bさんは私の提案を受け入れて、いくつかの企業へ応募されました。お人柄、スキルともに優れていたBさんは当然のごとく各企業の選考を順調にパスされました。進ちょくの早かった2社からは早々に内定をいただき、さらに当初より第1志望だったA社からも正式に内定の連絡をいただきました。Bさんに内定のご連絡をさせていただいたとき、大変喜ばれていたのを私も覚えています。ところが、内定の承諾をしたのもつかの間、後日、企業側から再度連絡があったのです。
「勝手ながら内定を白紙にさせていただきたい」
それは内定取り消しの連絡でした。すでに正式に内定の連絡をいただき、Bさんからも承諾の意思をいただいていたので、人事担当者に詳細な理由を伺ってみると……
「Bさんは大変優秀で、面接官の評価も高かったのですが、内定承諾時に提出いただいた入社手続き書類と、応募時の提出書類に乖離がありました。確認してみると、弊社が必要としている資格をお持ちでないことが分かったため、業務遂行が難しいと判断させていただいた次第です」
どうやらBさんは応募時の履歴書に記載したベンダ資格の取得日に誤りがあり、実際には資格の有効期限が切れていたのです。企業側は業務上、その資格を非常に重視されていたため、今回のような結果となりました。そこから私と企業の担当営業と人事担当者で話し合いの場を持ち、「入社までに再度資格を取得すること」を条件に入社を承諾していただき、事なきを得ました。
このように、転職活動においては意外な落とし穴が存在します。
今回の事例以外にも、面接日程の調整やレスポンスなど面接以外の部分で見送りになるケースは存在します。面接で高い評価を得たとしても、そのようなところで不合格になってしまっては泣くに泣けません。こんなことにならないように、注意してください。
信頼できる友人などの相談者が身近にいないときは、人材紹介会社のキャリアコンサルタントに相談してみてはいかがでしょう。
山下洋平
大学卒業後、パソナキャレント(現パソナキャリア)に入社。IT業界専門の営業として大手企業から中小企業まで数多くのクライアントを担当する。その後、現職のキャリアアドバイザーに転身し、営業経験を強みとして多くの方の転職をサポートしている。
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