ITエンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。
これまで、求人票の募集年齢とにらめっこして悩む、なんていうことはありましたか?
求人募集の年齢制限は、これまでも(平成13年に施行された雇用対策法で)努力義務だったのです。ただし、長期勤務によるキャリア形成を図るために新規学卒者などを募集する場合や、特定の年齢層が少なく、従業員全体の年齢構成の維持を図るためなどの例外が指針で認められていたのです。
しかし、先の通常国会で改正雇用対策法が成立し、新しい雇用対策法が2007年10月1日から施行になりました。同法では、求人の年齢を不問にしなければなくなりました。
厚生労働省のWebサイトにあるPDFファイルによると、「平成19年10月1日から労働者の募集・採用時に年齢制限を設けることができなくなります」と書かれています(このファイルは施行前に公表されたもので、その後改定されたかまでは確認できませんでした)。
これまでなら、「35歳未満」「40歳未満」などで募集をかけることも行われていましたが、今後は原則禁止となります。
このことは、転職希望者から見ると、チャンスが広がることになります。なぜなら、これまでなら年齢制限であきらめていた企業にも、どしどし応募できることになるからです。
今回の「年齢制限禁止」の背景にあるのは、フリーター、中高年の方などの求職者に対しても、年齢にかかわりなく就労機会の均等を図ろうという流れがあるようです。
今回の改正法では、「年齢にかかわりなく、均等な機会を与えなければならない」との明記がなされたことにも、そうした考えがあるように思えます。
参考までに書いておくと、多くの先進国では、雇用での年齢制限を禁止しています。例えば、米国は、「雇用における年齢差別禁止法」で、という具合です(厚生労働省 「2005〜2006年 海外情勢報告」について〜特集「諸外国における高齢者雇用対策」を参照のこと。
年齢制限の縛りがなくなることによって、企業の求人募集に応募しようと考える人の数が、ITエンジニアだけではなく、全体で増えることが予想されます。そうであれば、転職先をめぐって、ライバルが実質的に増えることになりそうです。
このような新しい状況は、企業の選考プロセスに変化をもたらすのでしょうか。
このことについては、あまり変わらないのではないかと思います。なぜなら、これまでも中途採用では、即戦力を要求されました。これは今後も変わらないでしょう。つまり企業は、即戦力と要求されるポイントとなる募集の職務を遂行するための適性、能力、経験、技能、ヒューマンスキルなどを、これまでと同じように、またはこれまで以上に見るのではないでしょうか。
逆にいえば、転職希望者が自身の適性や能力などをアピールしていなければなりません。もし欠けているものがあれば、それを補えるどんな武器があるかを示す必要があるでしょう。この点も、ある意味ではこれまでの転職市場でも重要視されてきたものです。
つまり、転職希望者自身の技術を高める努力、業務の経験を積むことなどでアピールポイントを増やすことは、これまで以上に重要になると思います。
ただし例外として、以下の場合は年齢制限が認められることになっています。
とはいえ、求人の年齢制限が原則として禁止になったことにより、選考にて重点的に見られるポイントが技術面、経験へとこれまで以上に移行するかもしれません。
この機会に、気になる求人に応募してみるなど、積極的に転職活動を始めてみるのも1つの手だと思います。いかがですか?
岡村知佳
大学卒業後、流通系企業にてコールセンターSV・WEBプロデューサー等を経験後、パソナキャリアへ転職。IT業界専門のキャリアアドバイザーとして、幅広いキャリアの提案に努めている。
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