本記事をお読みの方の中には、「そんなにすごいこと、個人である自分にできるはずがない」と思われている方もいるでしょう。ここで、ITエンジニアとして“いまできること”を考えてみます。
Googleでは、共有サービスの情報登録ボランティアを募集しています。現在はすでに十分な人数が協力しているようですが、今後もこういったボランティア需要は増えることでしょう。
また、「Hack For Japan」や「日本Androidの会 東北&関西支部 チャリティーアイディアソン」など、エンジニア主導の勉強会やイベントに参加してみるのもよいでしょう。主催側に回れば、 相羽さんのような直接の社会貢献だけではない 「気付き」や「やりがい」を得られるかもしれません。
また、震災から時間が経過して、地方自治体やNPOの中間組織でも支援が始まっています。これから、ますますボランティア活動が活発になってくるのは確実です。
NPOの中間支援組織の1つである、新潟県上越市にある「くびき野NPOサポートセンター」に問い合わせたところ、「ボランティアの内容は避難場所の設置や救援物資の整理などの支援が中心」とのことですが、「多くの組織にはボランティアコーディネータがいるので、できることを伝えていただければ、コーディネートしてもらえる」とのこと。
筆者の経験では、NPO法人でITに関する専門的な知識を持っているところは少ないので、活発な活動をしたいと思っている法人ほど、情報発信のボランティアも必要になってくるでしょう。それぞれの地域には、NPOの中間組織があります。問い合わせてみてはどうでしょうか。
これらはほんの一例にすぎません。これからは復興のために、さまざまな動きが現れます。ご自身でも、情報収集をしてみてください。動いた分だけ、大きな達成感とコミュニティに参加する人々とのつながりを持てるでしょう。
相羽さんは、このようなこともおっしゃっています。
「前線で救助や補給の活動をすることだけではなく、後方で情報基盤を安定的に保ち、誰もが正確な一次情報を手に入れられる環境を維持することはとても大事です。その裏には、不眠不休でサーバを支えているエンジニアたちがいる、ということに陽が当たればいいなと思います」
いまこそ、ITエンジニアが日本を救うときです。こういうときに動けるエンジニアこそ「不死身力」を兼ね備えていると思います。
「1人のエンジニア」として、できることから始めてみませんか。エンジニア出身の筆者も、あるプロジェクトでホームページの立ち上げに関わっています。被災地での直接的な活動はできませんが、与えられている環境の中で、できることをやりたいと思っています。
私たちが体験しているこの瞬間は、間違いなく歴史の1ページに刻まれます。それがどのように刻まれるかは、エンジニア1人ひとりのちょっとした勇気にかかっています。
なお、各拠点にいる人々は、刻一刻と状況が変化する中で、忙しい日々を過ごしています。お問い合わせいただく際には、活動が遅延せず、お互いが気持ちよく活動できるような配慮をお願いいたします。
文中の、筆者が参加しているプロジェクトは、「LINCs ‐ The United Wings」(LINCsとは、「Lifework Incubation Centers」の略。「仕事をしながら、ワクワクを見つけて形にする」の意)です。さまざまな業種や立場の方が集い、仲間と共に難問を解決するために集まったプロジェクトです。いま、LINCsでは、震災で不安を抱いている1人ひとりの心が1日も早く癒されるよう、歌手の高橋洋子さんが提供してくださった楽曲を配信しています。詳しくは、こちら。
竹内義晴
特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分がつらかった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場がつくれるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。ITmedia オルタナティブ・ブログの「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織づくりやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。
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