これは、私にも覚えがあります。冒頭でお話ししたように、私は一時期、ストレスフルな環境に身を置いていました。上司に相談しても話を聞いてくれず、むしろプレッシャーをかけられる日々。時々、同僚と愚痴りあうことはあっても、最終的には「誰にも相談しない」を選択することしかできませんでした。
少し気持ちが晴れるようになったのは、上司が入れ替わってからでした。新しい上司は、私たちの悩みや不満をよく聞いてくれました。ストレスフルな環境はすぐに解決するわけではありませんでしたが、思いを口にできる人、分かってくれる人がいるだけで、抱え込んでいたストレスという重荷をずいぶんと下ろすことができました。
アンケート結果でも、多くの人が「上司に相談したい」と答えています。しかし、その希望はかなえられていません。私が、話を聞いてくれる上司のおかげで救われたように、リーダー層が話を聞くコミュニケーションスキルを身に付け、スタッフの話を共感しながら聞く時間を作ることができたら、今、問題視されているメンタルヘルスの課題の多くは、未然に防げるのではないかと思います。
中には「スタッフの話を聞いている時間がない」というリーダーもいるでしょう。実は、スタッフの話を聞く時間を作ることで、スタッフが抱えている問題を事前に把握でき、問題が起きる前に対処するきっかけにもなるので、リーダー側のメリットもたくさんあるのです。
一方、スタッフの側の皆さんはどうでしょうか。アンケート結果が示すように、上司にもっと話を聞いてほしい、問題を共有したい、悩みを聞いてほしいと思っているエンジニアはたくさんいるはずです。しかし、それがなかなかかなわない人、誰にも相談できずにストレスを抱え込んでいる人もいるでしょう。このような場合、自分でストレスを軽減する方法を知っておく必要があります。
もっとも簡単でシンプルな方法は、「自分の気持ちを外側に出す」ことです。私たち人間は、怒りを覚えることもあれば、愚痴を言いたくなることもあります。よく、「愚痴ってはいけない」などのアドバイスがありますが、気持ちを押さえ込まず、外側に出すのは大切なことです。とはいえ、怒りや愚痴を他者にぶつけると、迷惑になる場合があります。なので、人のいない海岸や車の中など、「他者に迷惑にならないところ」で、たまった気持ちや不満を言葉に出してみてください。大きな声を出して、自分の声を自分自身で聞いてみることもおすすめです。
「上司に話す」ことも、言ってみれば「自分の気持ちを外側に出す」ことです。上司が話を聞いてくれなければ、友人や知人、カウンセラーなど、仕事に関わりがない人に話を聞いてもらうといいでしょう。仕事に関わりのない第三者なら、気兼ねなく話ができます。
今回は、アンケート結果を基に、エンジニアのやる気とメンタルケアについてお話ししました。
アンケート結果と、やる気・メンタルケアについての詳細は、冊子「仕事のやる気とメンタルケア」にありますので、ストレスを抱えている人や、ストレスを抱えたスタッフをへの対処に困っているリーダー層はぜひ、ご一読ください。「どのようにすれば、ストレスコントロールができるのか」「人間関係のよい職場になるのか」「やる気を見いだせるか」「チームが活発になるのか」などについて考察を行っています。
あなたの職場が働きやすい環境になり、ストレスが軽減されることによって「仕事が楽しい!」と思えるようになることを願っています。
竹内義晴
特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分がつらかった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場がつくれるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。ITmedia オルタナティブ・ブログの「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織づくりやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。
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