いくつかの「好きなこと」を要素分解したら、次は「要素レベルでの共通点がないか」を探します。
私の場合、「プログラムを作る」で好きな要素は、「組み立てること」「すべて自分で作ること」「動かないものが動くこと」「自分で考えた分かりやすいロジック」などです。自動車では「分解・組み立てる」「自分でできることは自分でやる」「動かないものが修理して動くようになる」「オリジナリティ」など。
要素 | プログラムを作る | 自動車 |
---|---|---|
組み立てる | ○ | ○ |
動かないものを動かす | ○ | ○ |
自分で考える | ○ | ○ |
オリジナリティ | ○ | ○ |
プログラムと車という直接関係がなさそうな事柄でも、要素レベルまで落とし込むと、さまざまな共通点があることが分かります。
つまり私は、これらの要素に触れた時、楽しさや喜びを感じるということです。楽しいことには一生懸命に取り組むし、そうすれば自然と得意になります。それが私の“強み”となるのです。
プログラミングや自動車のメンテナンスはどちらも技術作業なので、好きな要素が共通することは当たり前、と思うかもしれません。ですが、私が行っている別の仕事――コミュニケーション研修・セミナーの講師、コーチング――でも、要素は似ているのです。講師という仕事の中で楽しさを感じるのは、コンテンツを「組み立てる」ことだったり、自分なりの「オリジナリティ」を表現すること、コーチングの中でクライアントとの会話の流れを「組み立て」、望ましい方向へうまくリードすることだったりします。文章を書いている今も、文章が「自分の言葉で」「組み立てる」ことができると、うれしく感じます。
強みに気が付いてからの私は、将来にあまり不安を抱かなくなりました。なぜなら、仮に仕事が変わることになっても、「組み立てる」「動かないものを動かす」「自分で考える」「オリジナリティ」などの要素があれば、その仕事を好きになれると思うからです。
好きだと思える要素=強みは、これまで見聞きしてきたことが、大きな影響を与えています。なぜその要素を好きになったのか――これまでの人生を振り返り、きっかけを探してみましょう。
そのきっかけは人それぞれです。親の影響かもしれませんし、学校の先生などお世話になった人の影響かもしれません。子供の頃に好きだったテレビ番組の影響かもしれません。
私が好きな要素は、父親の影響を濃く受けていると自分では考えています。父は自動車整備士として働いており、幼い頃から父が機械を分解したり組み立てたりして、動かないものを動かす姿を見て育ちました(「組み立てる」「動かないものを動かす」要素そのものですね)。父は部品を加工して整備することもありました。ここには「自分で考える」「オリジナリティ」といった要素を見いだせます。
自分の軸ができた背景を見つけると、これまで過ごして来た時間への納得感が生まれます。これからキャリアアップやキャリアチェンジの機会が訪れた時、きっとあなたの選択をサポートしてくれるでしょう。
今回紹介した方法は、私が「トライアングルコミュニケーションモデル」と呼んで実践している手法です。
要素を分解する時は、実際に手で書き出してみることが有効です。「要件定義」「設計」「製造」「テスト」などのフェイズごとで分解したり、4W1Hの視点で分解したりしてみるのもよいでしょう。
上の図は、私が強みを書き出した実例です。三角形の頂点には「自分にとって本当に大切なこと」、下側に行くにつれて「論理的に具体化した内容」が展開されます。頭の中にある「思考の構成図」のようなイメージです。参考にしてください。
竹内義晴
特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分がつらかった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場がつくれるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。ITmedia オルタナティブ・ブログの「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織づくりやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。
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