目的を理解したら、具体的な要件をヒアリングしましょう。この場合、矢印は下の方へ伸ばします。
「本当は○○したい」という上側の目的に対して、具体的な要件を確認していきます。
上記のような質問を繰り返し、詳細レベルまで詰めていきます。三角形の底辺を広げていくイメージを持つとよいでしょう。
このように、三角形を意識して「上は目的」「下は具体的なシステム要件」として聞き出すことによって、視覚的にヒアリングが不足しているところが明確になり、ヒアリング漏れを防げます。ホワイトボードにチャートを描きながら顧客と一緒に打ち合わせをすると視覚化できるため、その場で要求仕様の共通認識をつくりましょう
最後に、図を使ってトライアングルコミュニケーションモデルをおさらいしておきます。
エンジニアにとって、開発したシステムは「作品」です。それを「それは仕様漏れによる不具合です」と言われたり、「このぐらいなら簡単に変更できるでしょう」と軽く言われたりすると意気消沈してしまいます。
システム開発の「真の目的」を顧客と共有しておけば、「こんなつもりじゃなかった」を未然に防ぐことにつながります。もし、仕様変更が発生しても「システムの目的は○○ですが、その変更は本当に必要ですか?」と、仕様変更の必要性を振り返る機会にもなります。
また、入念なヒアリングの姿勢は顧客との信頼関係を作ります。もし皆さんが顧客だとしたら、システムによって実現したいことをヒアリングして、「なるほど、○○さんは新しい顧客との出会いの場を持ちたい、商品を多くの人に知ってほしいとお思いなのですね。そして、売り上げを上げたい。そのためにWeb販売システムが欲しいと考えていらっしゃる」と、実現したい思いに共感してくれるエンジニアと一緒に仕事をしたいと思うでしょう。
「○○さんにシステム開発をお願いして本当によかった」と顧客に言われる一助になれば幸いです。
竹内義晴
特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分がつらかった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場がつくれるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。ITmedia オルタナティブ・ブログの「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織づくりやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。
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