今回は競技を盛り上げるために「繁盛レベル」と「ミッション」、それに「ガチャガチャ」という3つの仕掛けを用意しました。いずれもうまく活用することでポイントを稼ぐことが可能になり、一発逆転や後続チームを引き離すチャンスとして使えます。
これまでのHardeningでも使われてきた指標である「繁盛レベル」は、各ショップに対してクローラーが巡回する速度です。店舗がどれだけ「繁盛」しているものかを示すもので、この数字が大きくなるにつれて多数のお客様が訪問=クローラーが巡回し、多くの売り上げが見込めます。
繁盛レベルは、他のチームのショップが稼働しているかどうかによって変動します。全チームのショップが稼働している場合は「繁盛レベル1」が設定されています。複数チームのショップが停止すると「繁盛レベル2」となり、停止したショップのお客さんが流れてくるという設定で、他のチームに巡回するクローラーの数が多くなります。多くのショップが停止すると「繁盛レベル5」となり、残ったショップにアクセスが殺到します。
ただしHardening Projectでは、他のチームに攻撃することはルール的にもシステム的にも禁止されているため、他のチームのショップを意図的に攻撃して停止させることはできません。自組織のショップの稼働率を高めることが、結果的に多くのビジネスチャンスを呼び込むことになるのです。
「ミッション」は参加者に課せられた特別な課題です。これらの課題をクリアすると「広告宣伝効果」ということで、クローラーが一定回数多く巡回します。難しいミッションをクリアしたチームは、一気に売上を伸ばすチャンスを得ることができます。これらのミッションを実行するかしないかは参加チームの作戦次第です。ミッションに脇目も振らず黙々と提供環境のHardeningをやるチーム、担当者を決めてミッションをこなすチームと、さまざまでした。
最後に「勝負は時の運」を体現するために「ガチャガチャ」を用意しました。100個セットで用意されたガチャガチャには「次の攻撃のヒントがもらえる」「えらい先生に応援してもらえる」「マーケットプレイスの割引券」などが含まれており、参加者の運が試される内容となっています。ガチャガチャの第一号となった参加者は岡田社長との握手券をゲットし、幸運のパワーを分け与えられていました。このパワーのおかげでこちらのチームは前半絶好調だったようです。
実は今回用意したショッピングカートシステムは、通常のクローリングをぎりぎり処理することができるように絶妙にチューニングされたものが参加者に提供されています。一定時間クローリングが続くと徐々にシステムの負荷が上がり、最終的にはロードアベレージが100を越え、システムにアクセスできなくなります。また、繁盛レベルが上がると、標準のシステム構成では過負荷で止まってしまうような構成となっています。
参加者は「Hardening 10 MarketPlace」で勝利するために、チューニングに関して言えば、他チームより優位に立つために以下の二つの戦術をとることになります。
どちらの戦術もクローラーが多数巡回することになり、ショップの負荷との戦いは避けられません。競技の前半では、せっかくミッションをクリアして売り上げを稼ぐチャンスだったのにも関わらず、ショップが過負荷で停止しており、機会損失をしていたチームがいくつかありました。
過負荷によるショップの停止を防ぐために、参加者は以下のようなアプローチを採用していました。
後半になるとパフォーマンスチューニングを実施しているチームとそうでないチームの稼働率に明らかに差が出るようになり、結果的に売り上げにも大きな影響が出ていました。
……と、ここまでご紹介したところでずいぶん紙幅を費やしてしまいました。後編では、各チームとkuromame6の攻防の裏側と、Softening Dayの模様をお伝えします。どうぞ引き続きお楽しみに。
▼ 川口 洋(かわぐち ひろし)
チーフエバンジェリスト
CISSP
ラック入社後、IDSやファイアウォールなどの運用・管理業務を経て、セキュリティアナリストとして、JSOC監視サービスに従事し、日々セキュリティインシデントに対応。チーフエバンジェリストとして、セキュリティオペレーションに関する研究、ITインフラのリスクに関する情報提供、啓発活動を行っている。Black Hat Japan、PacSec、Internet Week、情報セキュリティEXPO、サイバーテロ対策協議会などで講演し、安全なITネットワークの実現を目指して日夜奮闘中。
2010年〜2011年、セキュリティ&プログラミングキャンプの講師として未来ある若者の指導に当たる。2012年、最高の「守る」技術を持つトップエンジニアを発掘・顕彰する技術競技会「Hardening」のスタッフとしても参加し、ITシステム運用にかかわる全ての人の能力向上のための活動も行っている。
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