インフラ構築、運用を自動化したいというニーズは、仮想化技術やクラウドの普及によってさらに加速している。むしろ「クラウドの普及によってサーバーの数は爆発的に増加しており、人の手でやるのはもう限界だ」(菅原氏)という方が正確だろう。
こうした状況においてPuppetは、誰にでもできる退屈な「仕事」からエンジニアを解放し、より付加価値の高い仕事に専念できるようにするツールという位置付けになる。ナイジャル氏自身、「かつてグーグルで勤務していたときから、Puppetで多くの『作業』をやってもらっていた。その分を他のさまざまなエンジニアリングに活用できた」と言う。
「一度マニフェストでワークロードやアプリケーションを定義すれば、あとはそれを適用するだけ。クラウドに展開することも、逆にクラウドからオンプレミスに展開することもでき、あらゆる場所で動かすことができる。真の意味での『Software Defined Infrastructure』を実現できるといっていいだろう」(ナイジャル氏)
菅原氏は、Puppetによる自動化でエンジニアの負担を減らし、効率向上をもたらすだけではなく、「品質を上げる効果ももたらす」と付け加えた。「人的作業は、どうしてもヒューマンエラーが避けられない。自動化することで、品質向上に貢献できるはず」(菅原氏)
Puppetの適用領域はさまざまだ。最近のトレンドで言うと、OpenStackやHadoopクラスターの構築に活用している企業があるという。「特にHadoopの場合は非常に多数のノードを構築しなくてはならないので、そもそも『手動ではやっていられない』。日本でもそうしたケースが増えている」と菅原氏は述べる。
今のところ、サーバーの構築自動化に力点が置かれているPuppetだが、今後は「ネットワークベンダーとの協業にフォーカスしていく。パートナーであり出資者でもあるシスコシステムズをはじめ、ジュニパーネットワークスやF5ネットワークス、ファーウェイなどと協力し、ネットワーク設定の自動化に取り組んでいく。現にファーウェイのスイッチには、設定用にPuppet Enterpriseがバンドルされている」(ナイジャル氏)。同様に、ストレージ構成の自動化にも取り組んでいく考えも示した。
一方日本では、Puppetユーザ会の活動を通じて、エンタープライズ版のユーザーを増やしたいと考えているという。Linuxの世界におけるレッドハットのアプローチと同じように、パートナーであるネットワールドや日本サード・パーティの協力も得ながら裾野を広げていく計画だ。
ただ、その根底には、オープンソースコミュニティで培われたオープンな「共有」の文化がある。「公開し、吸収することが生き延びる最善の方法。悪いアイデアは淘汰され、いいものは生き残るだろう」とナイジャル氏。菅原氏も「ノウハウや知識の交換を通してみんなで成長していければ」と述べている。
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