今回のタイトルを見て、“Windowsなんだから「タスクトレイ」があるに決まってるでしょ”と思ったあなた。あなたが「タスクトレイ」と信じているWindowsのその場所は、正しくは「タスクトレイ」とは呼びません。これは、古くから知られているWindows用語の誤用です。
Windowsに詳しい人であれば、「タスクトレイ(Task Tray)」という用語が間違っていることはご存じでしょう。間違っているとはいえ、「タスクトレイ」と言われれば、多くの人が“タスクバー上の右側のアイコンや時計が表示されている領域”と理解するはずです(画面1)。
タスクバー上のこの領域は、「通知領域(Notification Area)」と呼ぶのが正解です。しかしながら、意味が通じないわけでもないので、「タスクトレイ」は間違いだと強く訂正する人はいないでしょう。
「通知領域」に表示されるWindowsやアプリケーションのアイコンは「通知アイコン(Notification Icons)」や「通知領域アイコン(Notification Area Icons)」と呼びます。このうち、Windowsが提供する「時計」「音量」ネットワーク」「電源」「アクションセンター」などのアイコンは、「システムアイコン(System Icons)」と呼びます。
タスクバーの右側の領域が「通知領域」と呼ばれるようになったのは、Windows XPからです(画面2)。それ以前のWindows 95〜Windows Millennium Edition、Windows NT 4.0〜Windows 2000まで、タスクバー上のこの領域は「ステータス領域(Status Area)」という名称でした。
この領域を制御している実行ファイルは「Systray.exe」であり、タスクバー上でこの領域は“くぼんだトレイ状”に表示されるため、「システムトレイ(System Tray)」と呼ばれることの方が多かったかもしれません(画面3)。また、この領域に表示されるアイコンは「トレイアイコン(Tray Icons)」とも呼ばれました。
Windowsのユーザーインタフェース(UI)では、一貫して「通知領域」という用語が使用されています。マイクロソフトや他社のアプリケーションの中には、「システムトレイに格納する」や「システムトレイにアイコンを表示する」といった表現が使われることはあります。
マイクロソフトのオンラインドキュメントでは、過去に「タスクトレイ」と表現されたことはありました。例えば、次の2つのドキュメントは現在でも参照できます。
なぜ「タスクトレイ」という間違った用語が広まってしまったのでしょうか。筆者の説(想像)は、“「タスクバーのシステムトレイ」「タスクバーのトレイアイコン」「タスクバートレイ(Taskbar Tray)」が短くなって「タスクトレイ」になった”です。
実は先日、偶然にもWindows 10 Pro/Enterpriseの中に「タスクトレイ」という表現を発見してしまいまいた。その場所は、「ローカルコンピューターポリシー(Gpedit.msc)」の「コンピューターの構成¥管理用テンプレート¥Windows コンポーネント¥Endpoint Protection¥スキャン¥スキャンの一時停止をユーザーに許可する」ポリシーの説明です(画面4)。
Windows 8/8.1の場合にも、同じポリシー設定が「コンピューターの構成¥管理用テンプレート¥Windows コンポーネント¥Windows Defender¥スキャン¥スキャンの一時停止をユーザーに許可する」にあります。
「Windows Defender」は、Windows 8以降に標準搭載されるようになったマルウェア対策機能であり、そのテクノロジーはマイクロソフトの企業向けセキュリティ製品である「Forefront Endpoint Protection」(現在の製品名はSystem Center Endpoint Protection)から継承されました。
「スキャンの一時停止をユーザーに許可する」ポリシーはもともと、Forefront Endpoint Protectionの管理用テンプレート(FEP.admx)に含まれていたものです。そして、Forefront Endpoint Protectionの管理用テンプレートに含まれていた「タスクトレイアイコン」という間違った表現が、そのままWindows 8以降に入り込んでしまったというわけです。
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