佐藤さん 松江市立中学校の授業でRubyやるようになったのも大きいですね。福田さんが風穴を開けたっていうか。
羽角 え、福田さんが?
福田さん 風穴を開けたなんてカッコいいもんじゃないです。あるとき急に、市長が「市立中学校でRubyを教えます」って発表して、メディアにも「松江市が市立中学校でRubyプログラミング授業を開始へ」なんて出ちゃいまして(笑)。
困ってしまって、ネットワーク応用通信研究所の高尾宏治さんや本多展幸さんに「力を貸してください」とお願いして巻き込んだ。そうしたら、彼らの教育に対するモチベーションがすごく高い。安易な方法で楽しようとしてたら、楽したくない人たちのボタンを押しちゃって(笑)。今ではNPOの「Rubyプログラミング少年団」ができて、小学生向けの取り組みにまで広がってます。
杉原さん 何に1番苦労しました?
福田さん 先生たちに「私は先生たちの仕事を増やす敵じゃないですよ! 一緒にできることを考えながらやりましょう!」と説明するのに苦労しました。平成28年度から市内の全中学校で実施できるようになったのは、後任が粘り強く先生たちとコミュニケーションを取り続けたおかげです。
佐藤さん 新しいことを始めようとすると最初は警戒されますよね。杉原さんと福田さんは新しいことにチャレンジして形にできるのがすごい。
福田さん 最近やっと、プロジェクトの方向性に確信を持てるようになってきました。活動を続けてきたことで私たち公務員の役割も増えてきたので、Rubyを軸に、新規事業の支援をしたり、企業誘致を担当したり、U&Iターンを支援したり、と部署が変わってもIT業界に関わり続けられるようになってきました。
杉原さん 公務員のプレーヤーが増えてきたね。
福田さん そう。新しいプレーヤーにノウハウを引き継いでプロジェクトを多様化させることができるようになってきました。
羽角 UターンとIターンは同一の文脈で語られがちですけど、実は全く異なるものではないでしょうか。
杉原さん そうですね。Iターンには大きく2つのパターンがあります。1つ目は所属している企業が島根にブランチオフィスを出して本社から異動してくるパターン。今のところ島根ではこれが多い。もう1つは、島根に縁はないけれど島根やRubyを意識していた人たちが単身で乗り込んでくるパターン。
佐藤さん モンスター・ラボの御供(みとも)さんのパターンですね。まつもとゆきひろさんのツイートを見て、東京で開催したU&Iターン転職イベントに参加して、本当にIターンしてくれた。
福田さん 当時、私と杉原さんは、専任のコーディネーターが個別に話を聞いて、転職候補の企業をレコメンドしたり、企業や居住環境の視察に島根へ行くための旅費を半額サポートしたり、といったITエンジニア向けマッチングサポートを東京事務所で担当していました。御供さんは、どうしてモンスター・ラボにIターン転職を決めたんですか?
羽角 そのイベントで、ぼくが彼と面談したんです。自分で言うのも何だけれど、「ハスミが仕事できそうだったのと、その後Skypeで面接した島根開発拠点代表の山口が優しくていい人だったから決めた」って言ってました(笑)。
杉原さん Iターンを決めるには「キーマン」が必要なんだね。
羽角 Uターンはどうですか?
福田さん Uターンの人たちは、何というか「重たい」ことが多いんです。故郷に帰るとなると本当に骨を埋める決断になるから、なかなか決まらない人が多い。考え過ぎてしまって、何社就職先を紹介しても決まらない人もいます。
佐藤さん Iターンの方がそういう意味では「軽やか」ですね。必ずしも終の棲家ではないから。
福田さん 全員がそういうわけではないけれど、Uターンはシリアスな決断が多いから、ワクワク感が少ないみたい。エンジニアって本当は、場所に縛られない働き方ができるもっと軽やかな仕事なので「何かもったいない」と思います。
杉原さん UターンとIターンでは、決断するときの優先順位が違うよね。羽角さんたちIターンは、「やりたいこと」「住みたい環境」が先にある。
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